吉田山田|初のアニメタイアップで見えてきた10周年の先

山田義孝(Vo)

生み出す曲と作る曲

──前作「欲望」(2018年10月発売のアルバム)のインタビューの際に、山田さんは歌詞に書かれている言葉について「吉田山田にとって嘘偽りない言葉になっているか」を大事にしていると話していました(参照:吉田山田「欲望」インタビュー)。吉田山田が自分たちの内面と向き合って曲作りをしている時期に、何かの作品に向けて曲を作るというところにギャップを感じることはなかったんでしょうか?

吉田 確かに「欲望」のときのモードとは違うんですけど、今回の「桜咲け」はすごく楽しみながら作れたんですよね。なぜかと言うと、僕は自分の中にシンガーソングライターとしての吉田結威と、作家としての吉田結威の両方が存在する感覚があるんです。シンガーソングライターとしては曲を生み出す感覚に近くて、作家としては曲を作る感覚に近い。ここ最近生み出す作業に集中していたから、ひさびさに作家として作る作業に触れられてすごく楽しかったんですよね。

──「生み出す」と「作る」という感覚の違い、山田さんにはありますか?

山田 僕は作るのがすごく苦手で、生み出すことしかできないタイプなんです。頭で考えて曲が作れるタイプじゃないんですよね。僕は自分自身の経験や思いを曲にして生み出すことしかできないから、いろんな場所に行ったり、いろんな人と会ったりして、経験値を積む必要があって。効率は悪いんですけど、1曲作るために自分自身でちゃんと心を動かして生み出すようにしています。

吉田 それが2人組の面白いところで、山田は作る作業がすごく苦手なんですけど、僕は作る作業を楽しいと思えるタイプなんですよね。正直に言えば、僕はよくも悪くも10年やってきて、小器用に体よく楽曲を作ることもできるんですよ。でもそこに甘んじていると僕らには15周年も20周年もない。ここ最近の2枚のアルバム「変身」「欲望」で生み出す作業に徹してきたからこそ、今回の作る作業にもちゃんと自分の意思や思いを込められた実感があって。「僕らが2枚のアルバムでやってきたことは間違いじゃなかったな」と思えたんです。

吉田山田
吉田結威(G, Vo)
吉田結威(G, Vo)

“相撲の曲”だから「押し出せ」

──シングルのカップリングにはCharisma.comによる「押し出せ」(2016年3月発売のアルバム「47【ヨンナナ】」の収録曲)のリミックス音源が収録されています。Charisma.comとの交流はどこで生まれたものですか?

吉田 Charisma.comさんは3年ぐらい前に僕らの冠番組「吉田山田のドレミファイル♪」のゲストに登場してくれて、そこから交流が生まれたんです。今はいつかちゃん1人だけど、当時は僕らと同じで2人組だったからわかり合えることがあって。一度ごはんを食べに行って“2人組あるある”で盛り上がりました(笑)。

山田 以前から「いつか一緒に仕事をしたい」と言ってたんだけど、なかなか機会がなかったんです。でも今回のシングルリリースが決まったとき、「表題曲が“相撲の曲”なんだから、カップリングには『押し出せ』を入れたいよね」という話になって。

吉田 いろんな案が出る中で、今までの吉田山田ではできなかったサウンドに仕上げてみたい気持ちが湧いてきて。ひさびさに連絡してお願いしてみたら、快諾してくれました。

山田 「押し出せ 押し出せ ネガティブ押し出せ」って、僕がデビュー当時から言い続けてきた合い言葉のようなものなんですけど、その言葉から曲が生まれて、その曲がさらに誰かの手に渡って新しい形になるのってすごく不思議な感覚なんですよね。たぶんこういう曲の変化って数年前じゃ形にならなかったと思うんです。今までもコラボの話はあったんですけど、僕らはずっと「まだ吉田山田は自分たちを固める時期だ」って言い続けてきて。今回のコラボに関しては自然とアイデアが湧いてきて、お互いに反対意見もなく、すごく自然に曲を任せられたんです。

吉田 いつかちゃんにはめちゃくちゃカッコよく仕上げてもらったんだけど、ライブではどうしようかな。

山田 完全にダンストラックだから、楽器で再現できる域を超えてるよね。

吉田 作っている最中は「ライブでどうしよう」なんて全然考えなかったんですよ(笑)。ライブのことまで考えたら、曲が縮こまっちゃうような気もして。だから現時点でこの曲をどうライブにつなげるかはノーアイデアなんですけど、いつかこれを流してみんなで踊ってみたいですね。