「お前、自分のために歌えよ」

──吉田さんの変化と山田さんの変化、その2つが合わさって吉田山田というユニットはどう変わりましたか？

僕の感覚では1つの意志になりつつあるって感じです。吉田と山田、それぞれの意思を尊重してたのが今までの僕らだったんですけど、お互いの個性を生かしつつ、1つになって一緒の目標に向かってるのが今の僕らです。

──2人が向かう目標とはなんですか？

僕らはデビューから8年が経ったところで、最近すごく10周年を意識してるんです。何事も10年続くってすごいことなんですけど、ただ10周年を迎えるだけじゃなくて、いい状態で10周年を迎えたい。去年の年末、ちょっと2人きりで顔を突き合わせてご飯を食べる機会を作れて。そのときに溜まってた僕の不安をぶわーって全部吐き出して、今後のこととかをけっこう深く話し合った。そのときに、10周年に向けて吉田山田を盛り上げていきたいって思いは、当たり前だけどよっちゃんも同じだったんですよね。だから2人で共通の目標を立てられたことで、僕らはより1つになった感じがします。

──今作「変身」には山田さんが作曲した楽曲が多いですよね。自身の作曲や作詞はこれまでと変わりましたか？

僕自身、ちょっと曲作りに関して変化した部分があって。以前だったら歌詞を書くとき、伝わりやすい言葉を選んでいたんですけど、今回のアルバムでは僕の今の気持ちに一番近い言葉をそのまま使うように意識しています。前にイベントで遠藤賢司さんとご一緒したときに、僕に向かって遠藤さんが急に「お前、自分のために歌えよ」って言ったんですよ。当時はその言葉の意味がわからなくてずっと引っかかっていたんですけど、今ではその言葉の意味がよくわかるんです。活動の規模が大きくなって関わる人が増えたし、応援してくれる人も増えた。みんなに向けた曲を書きたいけど、僕はまず自分自身が納得できて、自分自身を歌わなければならないんだって思うようになりました。それこそ「しっこ」は、僕が小学校の6年生のときまでおねしょをしていた話をそのまま曲にしたものですし、「化粧」とか「宝物」もうまく取り繕ってない曲が多くなりました。でも僕とよっちゃんが「この曲いいな」って思ったものをピックアップしたら、こういうアルバムになりました。

なんとなくいい曲はもう作りたくない

──ライブではすでに「変身」の楽曲は披露されていますが、お客さんの反応はいかがですか？

「しっこ」って曲を僕はすごく素敵でカッコいい曲だって思っていたんですけど、ツアーの最初のライブで披露したら笑いが起こっちゃったんですよね。ちょうどMCで即興ソングを披露したあとの流れだったのでふざけてると思われちゃって。それで1回演奏を止めて「これ、冗談じゃないからね。アルバムに入る1曲だから！」って説明したらみんなにビックリされちゃった。

──山田さんはお客さんの反応をどう受け止めましたか？

予想外の反応でした。まあ確かに「夢の中でおしっこしちゃったよ」って歌い出しはちょっと変かもしれないんですけど、歌として聴いたらカッコいいと思うんですよ。ちょっとインパクトが強すぎたのかなって。でもお客さんのこういう反応が見れたことは僕にとってよかったことでした。「普通はこういう反応をするんだ」って、やってみないとわからなかったから。

──先ほど話していた、自分のために歌うことを実践した結果なわけですよね。

そうなんです。頭の中に浮かんで「これいいな」って思ったものは、テーマがおしっこだろうがなんだろうが、とりあえず形にしようと思ってるんです。中途半端にいい、なんとなくいい曲はもう作りたくない。自分が「いいな」って思った曲だけを作っているようにしてるんですけど、実はそこに自分が追い付けないこともあって……。

──それはどういうことですか？

アルバムに入ってる「YES!!! -Album ver.-」は僕が書いた曲なんですけど、早口が苦手だから全然うまく歌えないんです（笑）。ライブで完璧に歌えたほうが珍しいくらい。

──でもすでに「YES!!!」はライブで毎回披露される曲になってますよね。

そうなんです。ああ、うまく歌えない！と思いながら毎回やってます（笑）。この曲を作って、自分が歌えるかどうかは関係なく「いい曲だ」っと思ったものを形にしていきたいんだってことに気付きました。もちろん、自分が歌えるのが一番いいんですけど。それとアルバムに入ってる「化粧」って曲は3、4回転調してて、曲作りを手伝ってくれてる方に「山田さん、これすごい転調の仕方をしてるけどこれでいいんですか？」って言われたんです。僕としては自然な形で転調してるつもりだったんですけど、スタッフさんにも「音楽理論としてはちょっとハマらない」って言われてしまって。ただそのとき、よっちゃんが「山田にとってこの形が自然なら、これで出すべきじゃないか」って言ってくれたんですよ。よっちゃんはギタリストでもあるから、無理があることもわかっていながら、僕のメロディを尊重してくれた。それがすごくうれしかったですね。

──ただライブで披露するのは難しそうですね。

そうなんです。この転調の仕方ってギターでは無理らしくて。だからまだライブでやってないんですけど、バンドのときはなんとかうまくやってもらおうかなと思っています。

いつもありがとう

──10周年に向けて“変身”をして、その先にあるビジョン、理想とする姿はありますか？

あります。あるんですけど、あえて言わないでおこうかなって思ってるんです。だから内緒です。

──わかりました。最後に吉田さんにひと言かけるなら、なんて声をかけますか？

正直相方には負担をかけてしまっているなって思うんです。僕ってちょっとコミュニケーションが下手なところがあって、僕の言いたいことをよっちゃんに代弁してもらうと言うか、僕がしゃべったあとによっちゃんが“翻訳”して伝えてくれる、みたいなことが多くて。で、僕は察しが悪いところもあるので、相手の方が何を言ってたのか、何が言いたかったのかをよっちゃんに教えてもらう、ってこともあるし。よっちゃんを通じてコミュニケーションを取ってる部分があるんです。だから「いつもありがとう、ごめんね」って伝えたいですね。