ナタリー PowerPush - 吉田山田

セルフタイトル作に込めた“わがままさ”と“シンプルさ”

素直に表現をしたら、自然とシンプルになった

──今回、単独での曲作りを経験したことで、今後また“吉田山田”名義で制作する際に何か大きな影響を及ぼしそうな気もしますよね。

吉田結威(G, Vo)

吉田 ああ、それは感じますね。僕は単純に作業がスピーディになるんじゃないかなって思ってるんですよ。それぞれの個性をより研ぎ澄ませたことで、相手の投げてほしいボールのタイプが今まで以上にわかるようになってきたから。

山田 2人で一緒に曲を作るときは2人が納得するまで絶対先に進まないようにしてるんですけど、そこでの折り合いというか、思いが通じ合う時間はきっと短くなるでしょうね。

吉田 うん。「日々」は“吉田山田”名義で作った曲なんですけど、そこではもうその片鱗が見えていましたし。

──ああ、それは素晴らしいことですね。

吉田 うん。この先もすごく楽しみになってくるというか。

──あとサウンド的に言うと、アレンジがすごくシンプルになっている曲が多いなっていう印象もあったんです。「日々」や「ルーとナンシー」、あと吉田さんが作った感動のバラード「泣いて泣いて」とか。

山田 そういう部分でも今回のアルバムは自分の心の形により近いものになったなって思うんです。素直に表現をしたら、自然とシンプルになったっていう。

──曲が求めているものに自然と導かれた感じなんでしょうね。

吉田 意識してはいなかったけど、それが今の吉田山田のサウンド的なテーマにもなっていたんだと思います。すごく壮大な音で表現できるものは間違いなくあるし、僕はそれもすごく好きなんですけど、今回はそういう方向ではなく、基本は削いでいく作業でしたね。一応いろんな音を入れて試してはみたけど、結局「やっぱいらないよね」っていうことがすごく多かったから。

山田 「泣いて泣いて」はすごくいいですよね。間違いなくこれ聴いたら泣くなって思いましたね。

──5年というキャリアや年齢的なものが影響しているのか、すごく大人っぽい雰囲気がサウンドに表れているのもすごくよかったんですよね。地に足がついている感じがすごくしました。

吉田 去年、晴れて2人とも30歳になったんで、なんかもう気負いがなくなった部分はありますね。若く見られたいっていう気持ちもなくなりましたし。僕らは、今の自分たちのリアルをシンプルに伝えていくべきミュージシャンなんだなって気付けたのは、ほんとにキャリアと年齢を重ねてきたからこそだと思います。

あいまいな境目で生きていることこそが美しい

──アルバムのリードトラックになっている、山田さんが手がけた「カシスオレンジ」もサウンドはすごく大人っぽいですよね。歌詞は現実とファンタジーを行き来している、山田さんらしい内容ですが。

山田 よくいろんな人から「ファンタジーな人ですね」って言われることは多いけど、僕の中では全部が事実だったりするんですよ。だって現実とファンタジーの境目ってすごくあいまいだと思うし、朝と夜の境目もあいまい。言ってしまえば生物学上は別のものとされている男女の境目もあいまいのような気がするんですよね。で、そのあいまいな境目で生きていることこそが美しいと思うから、こういう曲ができました。

──面白い感性ですよねえ。ちなみに山田さんは最近お酒が飲めるようになったそうで。だからタイトルにもお酒の名前が出てきた感じですか?

山田義孝(Vo)

山田 あ、「カシスオレンジ」は、昼と夜の境目であるマジックアワーの空の色がカシスオレンジっぽいなって思ったからなんですけどね。でも、新宿のゴールデン街とか二丁目とかで1日に5軒くらいハシゴして飲んでいると、面白い人たちばっかりに出会うんで、すごく刺激は受けてると思います。

吉田 今までの山田は悲しいことがあったりするとけっこうふさぎこむタイプだったんですけど、お酒を飲むようになってからは外に出て冒険するようになったんですよね。そこはすごくポジティブでいいことだなって。それは作品にもいい影響を及ぼしていると思うし。

山田 確かにそうですね。ゴールデン街とかには日本の雑味やエグ味が集まっている気がするんですけど、僕はそれがすごく美しいなって思うんです。だからそういう雑味、エグ味を曲としても美しく表現できたらいいなって今すごく思ってます。「カシスオレンジ」もそういう中でできた曲だったし。

──いろんな意味で今回のアルバムは吉田山田にとって大きなマイルストーンになりそうですね。

山田 うん。自分たちがいいと信じて作った作品がたくさんの人に広まってくれたらいいなって思いますね。僕には基本、怒りっていう感情がないんですけど……このアルバムがもし届かなかったら怒ると思います!(笑)

吉田 山田史上初めての怒りが。僕はこのアルバムが響かなかったら傷付くと思います! 「泣いて泣いて泣いて」みたいな(笑)。

──あははは。“泣いて”が1回増えると。ま、それだけの自信作ができたということですよね。

吉田 はい。アルバムのリリース前からツアーも始まるので、ぜひ遊びに来てほしいですね。歌をしっかり届けるのはもちろんですけど、ふざけたMCも満載だと思いますので(笑)。

ニューアルバム「吉田山田」 / 2014年1月29日発売 / 2625円 / ポニーキャニオン / PCCA-03967
ニューアルバム「吉田山田」
収録曲
  1. ORION
  2. カシスオレンジ
  3. 泣いて泣いて
  4. フリージア
  5. ルーとナンシー
  6. メリーゴーランド
  7. ごめん、やっぱ好きなんだ。
  8. 日々
  9. 僕らのためのストーリー
  10. 魔法のような
  11. 航海
吉田山田 TOUR 2014
  • 2014年1月25日(土)
    新潟県 CLUB RIVERST
  • 2014年2月1日(土)
    北海道 cube garden
  • 2014年2月11日(火・祝)
    大阪府 なんばHatch
  • 2014年2月15日(土)
    愛知県 Zepp Nagoya
  • 2014年2月16日(日)
    福岡県 DRUM LOGOS
  • 2014年3月8日(土)
    東京都 Zepp Tokyo
吉田山田(よしだやまだ)

吉田結威(G, Vo)と山田義孝(Vo)からなる男性2人組ユニット。高校時代に出会った2人が紆余曲折を経て、2003年頃から2人で音楽活動をスタート。地道なライブ活動を経て、2009年10月にシングル「ガムシャランナー」でメジャーデビューを果たす。2011年7月に発売されたシングル「約束のマーチ」は愛知冠婚葬祭互助会「愛昇殿」のCMソングに採用され、大きな話題を集めた。2013年には「大阪マラソン2013」で初のフルマラソンに挑戦。2人そろって5時間を切るタイムで完走した。さらにNHK「みんなのうた」2013年12月・2014年1月オンエア楽曲の「日々」を同年12月に発売し、各方面から大反響を呼んだ。2014年1月、待望の3rdアルバム「吉田山田」をリリース。本作を引っさげ、Zepp Tokyo公演を含む過去最大規模の全国ツアーも1月25日からスタートする。