ナタリー PowerPush - 吉田山田
セルフタイトル作に込めた“わがままさ”と“シンプルさ”
昨年12月に発売され、NHK「みんなのうた」でもオンエアされている「日々」が引き続き大きな話題を呼んでいる吉田山田。デビュー5年目にして大ブレイクの兆しが訪れている最中、それをさらに加速するべくリリースされるのがセルフタイトルを掲げた3枚目のアルバム「吉田山田」だ。
これまでは2人共同で曲作りをしていた彼らだが、本作ではそれぞれが単独で作詞作曲を手がけた楽曲が数多く収録されている。そんな新たな制作スタイルへのトライは、果たしてアルバムにどんな影響を及ぼしたのか? 笑いの絶えない楽しいインタビューを通して、その疑問を紐解いていきたい。
取材・文 / もりひでゆき インタビュー撮影 / 佐藤類
吉田山田を知らなかった人が純粋に「日々」に反応
──昨年12月にリリースされた「日々」が大きな反響を呼んでいますが、そのあたりご自身たちはどのように感じていますか?
吉田結威(G, Vo) ほんとにありがたいですよね。僕らはデビューした当初からライブを数多くやっているので、僕らの音楽に対してのリスナーの方の反応は今までも身近に感じることはできていたと思うんです。例えば、会場で涙を流してくれているお客様がいたりとか、はじめましての人が僕らの歌でふと立ち止まってくれたりとか。ただ、今回の反応っていうのは、僕らの手の届かないところまでにもしっかり広がっているんだなっていうことを感じさせてくれるもので。
──Twitterでも「日々」の話題がかなり拡散されていますよね。
吉田 そうですね。Twitterを見ていると、吉田山田という存在を知らなかった方々が純粋に「日々」という曲に反応してくださっていたりもして。音楽の力は本当にすごいんだなっていうことを改めて感じました。
山田義孝(Vo) 毎日Twitterやお手紙を読ませていただいては幸せな気分に浸らせてもらってますね(笑)。ただ、「日々」に反応していただいた方々が、このあとに控えているツアーへ来てくださるかどうか、アルバムを聴いてくださるかどうかっていう部分では、アーティストとしての真価が問われるとこだなとは思っていて。なので、ただ喜んでいるだけではなく、“背筋ピーン!”って感じです。
「シーンに響くキャッチーさ」をあえて意識しなかった
──3rdアルバム「吉田山田」は、注目度が高まっている状況の中でリリースされる作品としては最高の仕上がりだと思いました。セルフタイトルにも納得というか。
吉田 ありがとうございます。僕らもすごくいいものができたなとは思っていますね。ただ、アルバムができあがった今思うのは、すごくわがままな作品になったような気もしていて。そこにちょっと不安があったりもするんですよね。
──“わがまま”というと?
吉田 今回の曲たちは、“今の音楽シーンはこういう曲を求めてるだろう”とか“お客さんはこういう曲を聴きたいんじゃないか”とか、そういうことをまったく考えないで作ったものばかりなんです。自分たちの心を裸にして、それをそのままの形で音楽として表現できないかっていうのが1つのテーマだったので。結果的にはすごく鮮明に、リアルに心を切り取れた曲たちが生まれたけど、それがどう世の中に受け止められるかっていうのが今の段階ではまだちょっとわからないというか。
──これまではシーンに求められる曲作りを意識していたんですか?
山田 わりとしてきましたね。僕、CMソングがすごく好きなんですよ。“♪ポリンキー、ポリンキー”みたいな、たった15秒しか流れないけど耳に残ってみんなが口ずさんでしまうところがすごく魅力的だなって思っていて。ほかにも、売れている曲をたくさん聴かせてもらったりもしているので、シーンに響くキャッチーさとか、そういう部分は自然と意識していたんだろうなって。それを今回はあえて意識しないことにしたんですよね。
単独での楽曲制作のきっかけは「周囲の人の興味」
──でも今回のアルバムを聴かせていただくと、吉田山田ならではのポピュラリティが全編にしっかり満ちている印象は強く受けました。もちろんこれまで以上にお2人の深い感情を描いた曲が多いとは思うけど、どっぷりディープでダークな内容にはなっていないじゃないですか。そこにあるメロディ、言葉、歌の強さは確実にシーンに刺さるものだろうなって。
吉田 今、それを言われてすごくうれしい気持ちです(笑)。ちょっと安心できました。
山田 お互いいろいろ曲を作っていく中では、どうしようもなく絶望的なものが出てくる瞬間はあるんですよ。でも吉田山田としてはそれを発信したいとは思わないというか。自分たちが発信するメッセージじゃないなって。そういうジャッジを自然としてるところがあるのかもしれないですね。だからこそ暗い内容にはなりえないというか。
──うん、それが大きな持ち味だと思います。今回は楽曲の制作スタイルに大きな変化が訪れてもいますよね。これまではほぼすべての曲が“吉田山田”名義での作詞作曲でしたけど、今回はそれぞれが単独で作った曲がメインになっていて。
山田 きっかけは周囲の人の興味です(笑)。2年くらい前にワンマンライブでソロコーナーをやったんですよ。それぞれがカバー曲をやったりっていう。そのときに「それぞれで作詞作曲をやってみたらどんなものが生まれるのか聴いてみたいよね」っておっしゃってくれる方がすごく多かったんです。で、じゃあやってみようっていうことになって、それぞれ作家さんにサポートしてもらいながら曲作りをするようになったんですよね。
──実際、そういう制作スタイルをとってみて感じることって何かありました?
吉田 僕らって、見た目から何から全然違う2人なので、今まではその2人の個性が混ざり合うことで生まれる妙な感じとか、キレイな感じとかが強さだなと思ってたんです。でも、1人で制作をしてみることで、自分の色をより色濃く出してみる面白さみたいなものはすごく感じたんですよね。しかも最終的には絶対2人で歌うことになるので、そこで新たな化学変化も生まれるし。
収録曲
- ORION
- カシスオレンジ
- 泣いて泣いて
- フリージア
- ルーとナンシー
- メリーゴーランド
- ごめん、やっぱ好きなんだ。
- 日々
- 僕らのためのストーリー
- 魔法のような
- 航海
収録曲
- 日々
- イッパツ
- 日々(instrumental)
- イッパツ(instrumental)
吉田山田 TOUR 2014
- 2014年1月25日(土)
新潟県 CLUB RIVERST - 2014年2月1日(土)
北海道 cube garden - 2014年2月11日(火・祝)
大阪府 なんばHatch - 2014年2月15日(土)
愛知県 Zepp Nagoya - 2014年2月16日(日)
福岡県 DRUM LOGOS - 2014年3月8日(土)
東京都 Zepp Tokyo
吉田山田(よしだやまだ)
吉田結威(G, Vo)と山田義孝(Vo)からなる男性2人組ユニット。高校時代に出会った2人が紆余曲折を経て、2003年頃から2人で音楽活動をスタート。地道なライブ活動を経て、2009年10月にシングル「ガムシャランナー」でメジャーデビューを果たす。2011年7月に発売されたシングル「約束のマーチ」は愛知冠婚葬祭互助会「愛昇殿」のCMソングに採用され、大きな話題を集めた。2013年には「大阪マラソン2013」で初のフルマラソンに挑戦。2人そろって5時間を切るタイムで完走した。さらにNHK「みんなのうた」2013年12月・2014年1月オンエア楽曲の「日々」を同年12月に発売し、各方面から大反響を呼んだ。2014年1月、待望の3rdアルバム「吉田山田」をリリース。本作を引っさげ、Zepp Tokyo公演を含む過去最大規模の全国ツアーも1月25日からスタートする。