音楽ナタリー PowerPush - 吉田凜音
西寺郷太のアイドル論
職業作曲家としての色の強さ
──例えば自分が歌わないからこそできる新たな表現みたいなものもありますか?
それはすごくあると思います。もし自分が歌を歌えなくても俺はミュージシャンになってたと思うし、もしかしたらそっちのほうが成功してたかもしれない。
──職業作家としてですね。
人に曲を書くっていうのはすごく満たされる行為だし、特にパフォーマーとしての能力が長けてる人に書くのは、自分が歌うのとは全然違う楽しさがあるんです。ただ俺は作詞家としてはともかく、職業作曲家としては色が強すぎるところがあって。俺の曲を歌い切れない人が多いんですよ。
──それは難易度が高いということ?
単純に自分がいいなって思う曲を作ろうとすると、たまたま自分が低音から高音まで出るし細かいリズムも大丈夫だから、自然とそうなっちゃうんですよね。別に自分がすごくうまいとは思わないんだけど、真剣な歌もコミカルなラップもできる。その基準にあわせて作るから、ほかの人には歌いにくいだろうと思うんです。
──NONA REEVESの曲を聴いていると確かにそんな気がします。
あと、例えば俺の曲は相当転調が多いんだけど、歌う人の声域を超えたメロディを作っちゃったときに、その人が歌えるオクターブの中に収めるために、突然変異的な転調をしてるだけで、最初から転調しようと思って作ってるわけじゃないんですよ。例えばNegiccoの「ときめきのヘッドライナー」(2013年11月リリース)とかも、最初は普通の曲として作ってたのを、ギュッと抑えるために転調させてて。
──そうだったんですね。
まあ、それが結果的に不思議な魅力になってたりするっていうのはあるんですけど。でも凜音ちゃんの場合は、まあまったくないとは言わないけど、そういう配慮をほとんど必要としない。だから作曲家としては、かなり自由にやれる相手ですよね。
──郷太さんのオリジナルのメロディをそのまま味わえる?
うん、例えばノーナがあんまり好きじゃない人とか、俺が歌ってるよりも女の子が歌ってるほうが好きだっていう人はたくさんいると思うから。凜音ちゃんの歌でそういう人にも届くだろうなという気はしてますね。
運とメンタリティ
──ここで改めて、郷太さんから見た凜音さんの魅力について教えてください。
これはちょっとアイドル論みたいになるけど俺、アイドルって運のいい人じゃないとダメだと思うんですよ。
──というと?
引きが強いっていうか、普通の人にない渦みたいなものを持ってるのがアイドルだと思うの。だってすごくかわいい子っていうのは1学年に1人くらいはいるわけで。それが全員アイドルになるかっていうとそうじゃない。でも凜音ちゃんはこの歳でレコード会社が付き、大人が動いて、米原康正さんが写真撮って、俺が作曲してる。そうやって多くの人を惹き付けて物事を動かすことができるっていうのはやっぱり運だと思うんですよ。
──才能ではなくて?
もちろんかわいいルックスで生まれてきて、歌のポテンシャルも持っていて、っていう部分はあるんだけど、彼女が2000年に出てきたら今みたいな状況にはなってないかもしれない。今が2015年だってことも含めて、彼女が持ってる1つの運だし、俺はそこに惹かれてベットしてるんだと思います。
──ルックスのよさや歌のうまさだけではないんですね。
あと彼女自身のメンタリティも好きですよ。「私はうまくいかないんで」っていう人じゃなく、「いや、うまくいくでしょ、私だから」って当然のように言える。それって俺はすごくいいことだと思ってて。例えばサッカーでいう本田圭佑とか中田英寿とか、ああいう人が日本代表とかに入ってきたとき、先輩はきっとムカついたと思うんですよ。
──そうかもしれません(笑)。
「なんだこいつ」「どれだけ王様なんだよ(笑)」って。でもそういう人が結果出しちゃったりする。このアイドル業界の中で、彼女はそういう存在になるんじゃないかなって思ってるんです。
──現時点でもかなりの大物感は感じますね。
逆に言うとビッグマウスで終わらないように、ちゃんとやらなきゃならないんですけどね。
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- 吉田凜音 2ndシングル「忘れないPlace / テンセイリンネ~GONG!GONG!GONG!~」2015年2月25日発売 / ビクターエンタテインメント
- 初回限定記憶盤 [CD] 1200円 / VICL-37024
- 初回限定転生盤 [CD] 1200円 / VICL-37025
- 通常盤 [CD] 1000円 / VICL-37023
初回限定記憶盤収録曲
- 忘れないPlace
- テンセイリンネ~GONG!GONG!GONG!~
- フェイバリットランド
- 忘れないPlace(Instrumental)
- テンセイリンネ~GONG!GONG!GONG!~(Instrumental)
- フェイバリットランド(Instrumental)
初回限定転生盤収録曲
- 忘れないPlace
- テンセイリンネ~GONG!GONG!GONG!~
- ふぁんたすきー
- 忘れないPlace(Instrumental)
- テンセイリンネ~GONG!GONG!GONG!~(Instrumental)
- ふぁんたすきー(Instrumental)
通常盤収録曲
- 忘れないPlace
- テンセイリンネ~GONG!GONG!GONG!~
- 忘れないPlace(Instrumental)
- テンセイリンネ~GONG!GONG!GONG!~(Instrumental)
吉田凜音(ヨシダリンネ)
北海道札幌市出身、14歳のソロアイドル。2013年から本格的なソロ活動をスタートし、数々のライブでその高い歌唱力を披露して話題を集める。2014年11月に西寺郷太プロデュースによる1stシングル「恋のサンクチュアリ!」でVERSIONMUSICよりメジャーデビュー。2015年2月には2ndシングル「忘れないPlace / テンセイリンネ~GONG!GONG!GONG!~」をリリースし、同年3月には1stフルアルバム「Fantaskie」を発表する。
西寺郷太(ニシデラゴウタ)
1973年東京生まれ。1996年からNONA REEVESのボーカリスト兼メインコンポーザーとして活躍するほか、他アーティストへの楽曲提供やプロデュースも行う。日本屈指のマイケル・ジャクソン研究家としても知られ、2009年に著書「新しい『マイケル・ジャクソン』の教科書」(新潮文庫)、2010年に「マイケル・ジャクソン」(講談社現代新書)を上梓。2014年3月にティト・ジャクソンが参加した初めてのソロアルバム「Temple St.」、同年6月にNONA REEVESのオリジナルアルバム「FOREVER FOREVER」をリリースした。近著にノンフィクション風音楽小説「噂のメロディ・メイカー」(扶桑社)がある。