2012年5月16日に1stアルバム「diorama」でデビューした米津玄師。音楽ナタリーでは米津がデビュー10周年を迎えたことを記念して、その活動をまとめた10年分の年表とデビュー当時から彼にインタビューをしてきた音楽ライター・柴那典によるレビュー、本人に行ったミニインタビュー、そして米津をリスペクトするAyase(YOASOBI)、syudou、須田景凪、菅田将暉、Vaundyの選曲によるプレイリストからなる特集を企画した。変化を恐れず着実に歩みを進め、インターネット発アーティストの第一人者としてその地位を確立し、日本を代表するミュージシャンに成長した米津の10年を振り返る。
取材・文 / 柴那典年表作成・構成 / 清本千尋
-
ポスト
14672
4046 - シェア 225
- ブックマーク
2012
本名の米津玄師名義で初めてのアルバム「diorama」をリリース。全曲にわたり、作詞・作曲・アレンジ・演奏・ミックスを自身で手がけ、アートワークとMVもすべて1人で制作した。
2012年、米津玄師はすでにネットシーンにおいて確固たる支持を獲得していた。2009年に「ハチ」名義でニコニコ動画にボーカロイド楽曲の投稿をスタートし、「マトリョシカ」や「パンダヒーロー」「結ンデ開イテ羅刹ト骸」など多数のヒット曲を連発。シーンを代表するボーカロイドプロデューサーの1人となっていた。米津玄師名義での初のアルバム「diorama」は、そうした当時の人気ボーカロイド曲を一切収録せず、本名を名乗り、すべての曲を自ら歌う作品として完成させた1枚だ。作詞、作曲、編曲、ミックスだけでなくアートワークのイラストや動画制作も自ら手がけ、構想から完成までにかかった時間は約2年。その後のインタビューで自らの“故郷”と語ったボーカロイドシーンをあえて離れ、生身の自分をさらけ出すことで新たな境地に踏み出す挑戦から、米津のキャリアは始まった。
2013
1stシングル「サンタマリア」をUNIVERSAL SIGMAよりリリースすることを発表。
「サンタマリア」のMVを公開。本人が出演し、手描きの絵本も登場した。
「MAD HEAD LOVE」のMVを公開。
「ポッピンアパシー」のMVを公開。
2ndシングル「MAD HEAD LOVE / ポッピンアパシー」をリリース。同時にハチ名義で2010年に発表したアルバム「花束と水葬」「OFFICIAL ORANGE」の全国流通盤をリリースした。
ハチ名義による新曲「ドーナツホール」をYouTubeとニコニコ動画で発表。11月13日に配信リリース。
2013年、米津玄師はシングル「サンタマリア」でメジャーデビューする。それは、「箱庭」を意味するタイトルの「diorama」も含めてそれまでたった1人で制作活動を行ってきた米津にとって、他者と交わる開かれた場所で音楽を作っていくことへの決意表明でもあった。この曲を機に米津は、普遍的な美しさを持つポップソングを作り、それを聴き手に届けるという明確な意志を持つ。それは「表現への向き合い方が大きく変わった」と語る転機でもあった。「サンタマリア」からはバンド形式でのレコーディングにもトライし、シングル「MAD HEAD LOVE / ポッピンアパシー」の制作には、旧友でもあるギタリストの中島宏士のほか、ベーシストの須藤優とドラマーの堀正輝が参加。この3人は現在に至るまで長らくライブをともにするメンバーになる。
2014
2ndアルバム「YANKEE」のリリースと初ライブの開催を発表。
「リビングデッド・ユース」のMVを公開。
「アイネクライネ」が東京メトロのテレビCMソングに決定。
「アイネクライネ」のMVを公開。米津自身による手描きアニメーションも話題となった。
「WOODEN DOLL」のMVを公開。
2014年に発表された「アイネクライネ」は、蔦谷好位置が共同編曲者として参加。活動開始から一貫してセルフプロデュースを行ってきた米津玄師が初めて外部プロデューサーを招いて制作した1曲となった。東京メトロの広告キャンペーンに起用され、初のタイアップソングとなったこの曲への注目度もあり、「YANKEE」はオリコン週間アルバムランキングで2位を記録。アルバムがヒットしたことだけでなく、この年の6月に初のワンマンライブ、12月に初のツアーを開催したことも、キャリアにおける大きなターニングポイントとなった。当初はライブに対して積極的ではなかった米津だが、ステージで身体性をもってパフォーマンスし、オーディエンスに向き合った経験はその後の大きな糧になったはずだ。
2015
「Flowerwall」のMVを公開。
「Flowerwall」がニコンD5500「これがウチの一眼レフ」のCMソングに。
初めて夏フェスに出演。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2015 in EZO」「MONSTER baSH 2015」「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2015 -20th ANNIVERSARY-」に登場した。
「アンビリーバーズ」MVを公開。楽曲はMV公開前に夏フェスにて初披露された。
「フローライト」のMVを公開。
「アンビリーバーズ」がミズノ「WAVE ENIGMA 5」テレビCMソングに。
「メトロノーム」のMVを公開。「アイネクライネ」以来となる米津による手描きアニメーションのMVとなった。
RADWIMPSの対バンツアー「10th ANNIVERSARY LIVE TOUR RADWIMPSの胎盤」の初日公演に出演。
2015年は4月にツアー、8月に野外フェス初出演と精力的なライブ活動を続けた米津。夏フェスのステージでも披露していたのが9月にシングルとしてリリースされた「アンビリーバーズ」だ。ギターを使わず、高揚感あふれるエレクトロニックなサウンドに挑んだこの曲では「僕ら」という言葉を歌詞に用いており、米津が聴き手の思いを代弁し、人々を引っ張っていく役割を担おうという意志を明確に表した初めての楽曲にもなった。「アンビリーバーズ」も収録されたアルバム「Bremen」は、オリコン週間アルバムランキング、Billboard週間ランキングで1位を獲得。11月には敬愛するRADWIMPSからの誘いを受け、初の対バンライブへの出演も果たした。ライブとリリースを重ね充実した活動の中で着実に飛躍を果たした1年となった。
次のページ »
2016年~2019年
-
ポスト
14672
4046 - シェア 225
- ブックマーク