ナタリー PowerPush - 米津玄師

自由を捨てて外の世界へ 覚悟と決意の「サンタマリア」

いろんな人がいなければ成立しないものを

──制作はどのように進めていったんですか?

最初に(メンバーに)デモを渡して、2回くらいリハーサルに入って言葉でも肉体でも意思疎通を図って。そこで着地どころを見つけて本レコーディングっていう流れでした。デモを渡したときに僕からは特に何も言わずに「自由にやってください」ってお願いしたんですけど、結果できたものを見返してみれば、デモとアレンジはほとんど変わってないですね。

──そうなんですか。自分が考えつかないようなアイデアに驚きたかったという気持ちはなかったですか?

いや、まあ……おそらくその驚きを、僕が拒絶した形になるんでしょうね。自然とそういう形になったので。

──やっぱりそこはまだ譲れないところなんですね。

それは少なからずありますね。譲れない。でも、デモとほとんど同じになったとはいえ、どうしても他人の意志が入ってきた作品になっているので、そこに違和感みたいなものはありますね。それは、僕の至らない点でもあると思うのですが、それを世の中に出したときに、どういう反応が返ってくるのかっていう実験的な意味合いはあります。

──米津さんとしては、今後作る楽曲はすべてバンドで録りたいという気持ちなんですか?

うーん、全部かどうかはまだわからないです。そもそもまたバンドに戻るかっていうことも、今の段階では自分でもよくわかってなくて。できあがる曲がバンド形式の曲と限ったわけではないじゃないですか。もしかしたらエレポップだったりするかもしれないですし。でも少なくとも自分ひとりで完結するものではなくて、いろんな人がいなければ成立しないものを作ろうとは思っていますね。

生半可な気持ちでライブするわけにはいかない

──これからますますライブを待ち望む声が増えると思いますが、いまだにやらないのはどうしてなのでしょうか?

やっぱりさっきも話したように、自分の肉体性がまだ至らないからっていうことですね。音楽、精神ばっかりがどんどんどんどん大きくなっていっちゃって、それに足腰が付いていかないままここまで来てしまったっていう実感があって。これは僕自身の考え方の問題で、たぶん傍から見れば「何をそんなことで」って思うようなことなんでしょうけど、自分の中でライブをやるのはものすごくハードルの高いことで。生半可な気持ちでやるわけにはいかないなと思っています。

──その覚悟を固めるのはなかなか難しそうですね。

それは自分の心境の変化を座して待つしかないんじゃないかなあと。まあ座して待つって言っても、いろんな試行錯誤は凝らしますけれども。結局最後は時間の経過でしかないんだろうなあと思います。

──自分の気持ちがどう変化するかは自分でもわからないということですね。

わかんないです。でも楽しみですね、自分の心境の変化が。

1stシングル「サンタマリア」 / 2013年5月29日発売 / ユニバーサルシグマ
初回限定盤
初回限定盤 [CD+DVD] / 1680円 / UMCK-9622
通常盤 [CD] / 1260円 / UMCK-5435
CD収録曲
  1. サンタマリア
  2. 百鬼夜行
  3. 笛吹けども踊らず

(※通常盤は弾き語りライブストリーミングが聴けるシリアルナンバー入り)

初回限定盤DVD収録内容
  • 「サンタマリア」Music Video
  • 「サンタマリア」めくる絵本Music Video
米津玄師(よねづけんし)

男性シンガーソングライター。2009年より「ハチ」という名義でニコニコ動画にボーカロイド楽曲の投稿をスタートし、代表曲「マトリョシカ」の再生回数は600万回を、「結ンデ開イテ羅刹ト骸」の再生回数は300万回を超える人気楽曲となる。2012年5月に本名の米津玄師として初のアルバム「diorama」を発表。全楽曲の作詞、作曲、編曲、ミックスを1人で手がけているほか、アルバムジャケットのイラストやビデオクリップも自身の手によるもの。マルチな才能を有するクリエイターとして注目を集めている。2013年5月29日、シングル「サンタマリア」でユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。