ナインティナインがMCを務めるフジテレビ系の番組「週刊ナイナイミュージック」。“架空の音楽雑誌”をコンセプトとして掲げるこの番組では、岡村隆史が記者、矢部浩之が編集長を務める「週刊ナイナイミュージック」編集部から最新のエンタテインメント情報を発信している。そんな岡村記者と矢部編集長は今回、YOASOBIのZeppツアー「YOASOBI ZEPP TOUR 2024 "POP OUT"」の東京・Zepp Haneda(TOKYO)公演に潜入。初めて生で観たというYOASOBIのライブで2人は何を感じたのか? このページでは、サザンオールスターズ「茅ヶ崎ライブ」の特集(参照:サザンオールスターズ×「週刊ナイナイミュージック」特集)に続き、2人のレポートを掲載する。
なお本日放送のフジテレビ系「週刊ナイナイミュージック 拡大号」では、「YOASOBI ZEPP TOUR 2024 "POP OUT"」への潜入取材の模様をオンエア。TVerおよびFODで見逃し配信も行われるので、そちらと合わせて楽しんでほしい。
取材・文 / 岡村隆史(ナインティナイン)、矢部浩之(ナインティナイン)ヘッダ写真提供 / フジテレビ
フジテレビ系「週刊ナイナイミュージック」
毎週水曜日23:00~23:40
コンセプトは“架空の音楽雑誌”。岡村隆史が記者、矢部浩之が編集長を務める「週刊ナイナイミュージック」編集部では、最新の音楽情報やアーティスト情報だけでなく、さまざまなエンタテインメントをめぐるトレンドや、知られざる音楽業界のウラ側密着などを発信。まるで1冊の音楽雑誌を読んでいるかのような多彩な切り口で情報を届ける。
Zepp Haneda(TOKYO)公演レポート
岡村隆史(週刊ナイナイミュージック記者)
ナイナイ歌謡祭(「ナインティナインのオールナイトニッポン歌謡祭」)を3年やって演出アイデアも頭打ちになってきており、YOASOBIのライブを観て盗めるものはすべて盗んでやろう!という意気込みでZepp Hanedaに乗り込んだ。昨年のナイナイ歌謡祭で歌わせてもらった「アイドル」は、めちゃくちゃ練習したけれど「ラップ部分のリズムだけは合っているが歌は……」と言われてしまい、素人が歌いこなすことは絶対無理だと実感したばかりだ。本家は生でどんなパフォーマンスをするのだろうか?
冒頭いきなり「セブンティーン」でikuraさんがお立ち台のようなものに乗って2階席と同じ目線の高さまで上がってくる。やはりライブハウスはスタンディング1階席の熱気がすごくて、2階席にいた僕は「いいな~、うらやましいな~」という気持ちだったので、この演出は「2階席のみんなも置いてけぼりじゃないよ、一緒に楽しもうね!」とikuraさんに言われた気がしてテンションがブチ上がった。
「Biri-Biri」から「ツバメ」までの5曲で披露された、アジア初の試みだという3Dメガネの演出はまるでゲームの世界に自分が飛び込んだようだった。巨大なドラゴンが目の前に飛び出してきたときはあまりの迫力でのけぞってしまったし、鳥が優雅に羽ばたいたときには捕まえられないとわかっていても、つい手を伸ばしてしまった。こういった最先端テクノロジーを駆使した演出というのは、アーティスト自身や楽曲に世界観がないとハマらないものだと思う。YOASOBIはYOASOBI自身が持つファンタジー感や“小説を音楽にしている”というフィクション感が、この3D演出にマッチしていた。
「アドベンチャー」では一転してアナログ的なバルーンの演出があった。お客さんが一致団結してバルーンをパスし、少しでも長くラリーを続けようと協力する。開演直後はライブハウスでいい歳したおっさんがはしゃぐのはちょっと恥ずかしいと思っていたけれど、この頃には「僕のところにもバルーン来ないかな」「ライブは楽しんだもん勝ちなんだ!」なんてことを考えていた。
全編通して次々と工夫が凝らされた演出があり目が離せなかったのだが、そんな中でも決して音楽が脇役にならないのがYOASOBIのすごいところだと思う。常に音楽が主役。「本家は生でどんなパフォーマンスをするんだろう?」なんて思っていたのが恥ずかしいくらいに、あの難曲「アイドル」さえも、ikuraさんはサラリと歌いこなしてしまう。YOASOBIはどんなに売れて大きくなっても根っこはライブバンドなんだ、ということが歌や演奏を生で聴くとより強く感じられた。
ナイナイ歌謡祭へのたくさんの刺激とアイデアをもらい、「この3Dメガネ貸してくれないかな~」と思っていたら帰り際に回収されてしまい研究ができず残念です。でも僕が歌う「POISON」には3D演出はハマらないので、いつか演出に負けない歌が歌えるようになったら取り入れたいと思う。
矢部浩之(週刊ナイナイミュージック編集長)
この日会場であるZepp Hanedaに向かう道中から僕の戦いは始まっていた。かなりご年配と思しきタクシーの運転手さんに「Zepp Hanedaまでお願いします」と住所を添えてお伝えし、しばらくは順調に走っていたのだが、途中からどうも運転手さんの様子がおかしい。頻繁にナビを触り、あたりをキョロキョロしている。「どうしましたか?」と声をかけると「Zepp Hanedaって海の中にあるんですか? 私のナビだと海に入っちゃうんですが……」とのこと。ナビ画面に目をやると、確かに今、このタクシーは海の中を走っている。あまりカリカリしてハンドル操作を誤られても困るので「さすがに海の中ではないと思うんですけどね~」「このへんは新しい埋立地なんですかね~?」などのんびり会話をしつつ、さりげなくルート誘導をして、入り時間ちょい遅れで無事Zepp Hanedaに到着。運転手さんと矢部、静かな戦いが終了。
しかしライブハウスというのは独特な雰囲気があって、場慣れしていない50代のおじさんは気後れしてしまう場所でもある。こんなおじさんが混ざっててもいいんでしょうか? 手を挙げたりジャンプするタイミングは? めちゃくちゃ楽しみなのに「ノリ方」がわからない……。YOASOBIって東京ドームでも埋められるアーティストなのに、なぜ今ライブハウスなんだろう……。それだけの魅力が、ライブハウスってものにあるのだろうか。開演までの時間はライブハウスで自分がどのように振る舞えばいいのか、悶々と考えながら過ごしていた。
開演。ステージ上のAyaseくんの支配力がすごい。Ayaseくんが作る無理難題に近い曲に、ikuraさんが立ち向かって戦っている!! YOASOBIとはAyase vs ikuraの超ハイレベルな音楽の戦いなんだ! とんでもない数の照明、アジア初だという3Dメガネの演出、ド派手な演出がこれでもか!と繰り出されてもikuraさんの声は負けていない。僕はただただ圧倒されるばかりで、もう「ノリ方がわからない」なんてことはどうでもよくなっていた。MCでikuraさんが手拍子の仕方を丁寧に教えてくれ「わからなくても大丈夫ですよ、周りの人を見ながら真似してくださいね~」と優しくフォローしてくれたりもして安心できた。おじさんにもやさしいYOASOBIだ。
この日演奏された17曲すべてに、目が離せない演出、そしてそれに負けない歌声と演奏があって、YOASOBIというチームは超人だなと思った。だからこそ、1回だけikuraさんが歌詞を間違えた瞬間がとてもチャーミングで、「あ、あの人も人間なんだ」とホッとした。ライブのすべてが完璧すぎたから。
プロフィール
ナインティナイン
岡村隆史と矢部浩之からなるお笑いコンビ。1990年NSC大阪校9期生で、1990年4月結成。1992年に「第13回ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞を受賞。以降数々の人気テレビ番組にレギュラー出演し、人気を博す。現在は日本テレビ「ぐるぐるナインティナイン」やニッポン放送「ナインティナインのオールナイトニッポン」に出演。2023年10月にフジテレビ系で新たな冠番組「週刊ナイナイミュージック」がスタートした。
YOASOBI(ヨアソビ)
コンポーザーのAyaseとボーカルのikuraからなる“小説を音楽にするユニット”。2019年11月に第1弾楽曲「夜に駆ける」を発表。国内の各種配信チャートでも1位を席巻、複数カ国のバイラルチャートにもランクインし、現在ストリーミング累計再生回数は史上初となる10億回を突破している。2020年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2021年1月に初のCD作品「THE BOOK」をリリースした。2月には初の配信ライブ「KEEP OUT THEATER」を、7月にはUTとのコラボライブ「SING YOUR WORLD」を開催。12月に2枚目のCD「THE BOOK 2」をリリースし、初の有観客ライブ「NICE TO MEET YOU」を東京・日本武道館にて2日間にわたって開催した。2023年4月にはテレビアニメ「【推しの子】」のオープニング主題歌「アイドル」をリリースし、米ビルボードのグローバルチャート「Global Excl. U.S.」、Apple Music「トップ100:グローバル」や「YouTube music charts TOP 100 songs Global」で首位を獲得。J-POP史上初の記録を次々に打ち立ている。2024年10月26日と27日に大阪・京セラドーム大阪、11月9日と10日に東京・東京ドームでワンマンライブ「YOASOBI DOME LIVE 2024」を開催する。