ナタリー PowerPush - 安田奈央
伝えたいのに伝えられない思いを歌にして
喜怒哀楽の「怒」と「哀」が多く出たアルバム
──安田さんは本当の自分をさらけ出したり、何か素直な思いを伝えるのは得意ではないんですね。
そうですね。人って何か失敗をすると痛くてつらくて、どんどん臆病になっていくと思うんです。でも逃げてたらずっとごまかし続けなきゃいけない。そういう悲しみや苦しみと向き合えない性格でしたね。
──その反動で……、というわけではないかもしれませんが、安田さんの歌には「何かを伝えたい」という気持ちを強く感じるんです。
そうですね。確かにそういう思いは強いです。私は昔から自分が言えない感情を伝えてくれてる曲に何度も助けられてきたから、誰かを直接幸せにできるかはわからないですけど、聴いてくれた人の心の傷とかに私の歌がそっと触れられれば、とは思いますね。
──かつての安田さんがそうして救われてきたように?
はい。そこはやっぱり理想とするところですよね。そのためには、自分の中にある喜怒哀楽の「怒」と「哀」の部分と向き合わなければならないと思っていて。
──ということは「kotoba」というアルバムは「怒」と「哀」の部分が多いということ?
はい。もちろんアルバム全てがそういうわけではないんですけど。でも、私は哀しみに打ちひしがれたいわけじゃなくて、自分の「怒」と「哀」に向き合うことで前へ進みたいと思っているんです。哀しみがある分、喜びがあるし、1人でつらかった分、友達の大切さにも気付けた。そういう意味ではどの歌にも光と影は入っていると思います。
悩みながらも、常により良いものを目指したい
──デビュー以降、「伝える」ということへの意識は変わってきましたか?
言葉は気持ちを届けるものだと思っているので、「その気持ちを伝えるにはどの言葉がぴったりくるんだろう?」っていうことをすごく考えるようになりました。言葉にできない感情もあるんですけど、それも届けられるようになりたいなと思っています。
──「Re:Start」からは安田さんの未来への強い意志を感じましたよ。
この曲は完成したときから絶対アルバムの最後にしようと思ってて。「1stアルバムで、もうリスタートかよ」って思われるかもしれないですけど(笑)、私は常にそういう気持ちで人生を生きてて、正直どのライブでもどの曲作りでも満足したことは一度もないんです。もちろん妥協しているわけじゃないですけど、音楽に正解はないから、逆に答えが出ちゃったら終わりだと思うので。
──じゃあ、安田さんが目指しているのは、どのようなアーティスト像ですか?
この前「モモ」(ミヒャエル・エンデ著「モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語」)という児童文学を読んで「自分はモモになりたいんだ!」って思ったんです。
──具体的に教えていただけますか?
ですよね(笑)。モモって女の子は時間やお金にとらわれている人間に、大切なものを気付かせてあげる存在なんです。私自身もずっといろんな思い込みの中で生きてきた人間だったからこそ、そういうギュウギュウに箱に詰められた価値観や感情のフタを歌で開けてあげられる存在になりたいなって。
──ああ、なるほど。
その本を読んだときに「これだ!」って思ったんです。自分はこういうアーティストを目指しているのかなって。
- 1stアルバム「kotoba」 / 2013年1月30日発売 / NAYUTAWAVE RECORDS
- 初回限定盤 [CD+DVD] / UPCH-29128 / 3890円
- 通常盤 [CD] / UPCH-20306 / 3059円
CD収録曲
- こたえ
- 雨フル ~悲しみはきっといつの日か~
- カワラナイ想い with KG
- Jungle Rumble Trouble
- Burning Woman
- 情熱
- voice in the dark
- 真夜中のひだまり
- Free Like A Bird
- You & I
- Sence of justice
- つぼみ
- Re:Start
初回限定盤DVD収録内容
- こたえ
- 雨フル ~悲しみはきっといつの日か~
- 真夜中のひだまり
- カワラナイ想い with KG
- つぼみ
安田奈央(やすたなお)
1988年6月20日、石川県生まれの女性シンガー。2010年に北海道から沖縄まで日本全国から応募があったオーディション「GIRLS AWARD DAM☆ともオーディション」で1位を獲得する。2011年7月にシングル「つぼみ」でメジャーデビュー。8月には、KGとデュエットした「君じゃなきゃduet with 安田奈央」に参加し、大きな話題となる。その後「真夜中のひだまり」「雨フル ~悲しみはきっといつの日か~」「こたえ」というシングルをリリースし、2013年1月30日に待望の1stフルアルバム「kotoba」を発表する。