音楽ナタリー PowerPush - 安田レイ
“Wish”から“Will”、過去から未来 変化を刻む“初めて”のアルバム
2013年7月、それまでの元気ロケッツのボーカリスト“Lumi”の仮面を脱ぎ捨て、ソロデビューを果たした安田レイ。以来彼女はこの1年2カ月のうちに4枚のシングルを発表し、また「a-nation island」のような音楽フェスはもちろん「東京ガールズコレクション」などのイベントにも積極的に出演。さまざまなシチュエーションでその歌声を響かせてきた。
そんな安田がソロとしては初のアルバム「Will」をリリース。ナタリーではこれを記念して5度目となる彼女のインタビューを実施した。
テレビアニメのテーマソング、CMソングとしてすでにおなじみのシングル曲はもちろん、Matt Cabとの共演作や元気ロケッツ「Heavenly Star」のセルフカバーなど、自ら「新しいチャレンジ」と呼ぶタイプの楽曲も披露する意欲作はいかにして誕生したのか。彼女の言葉に耳を傾けてみてほしい。
取材・文 / 成松哲 撮影 / 塚原孝顕
「安田レイ」として歌う責任感
──今回のアルバム「Will」は安田レイ名義としては初のフルアルバムになるわけですけど、安田さんはこれまでに元気ロケッツとしてアルバムを3枚リリースしていますよね。
でも元気ロケッツは私1人だけが歌うんじゃなくて、いろんな女性の声と私の声をミックスして曲を作るスタイルだったので。「ソロアルバムはまったく違うものだな」って思ってます。今回は「安田レイ」としてアルバムをリリースするんだから、曲を通して100%自分のことだけを表現できるし、逆にそうしなきゃいけない。アルバムを作るのにたくさんの方々が関わってはいるんだけど、曲の中から聞こえてくるのは私の声だけなので、ちゃんと安田レイらしい表現をしなきゃいけない。そういう責任感みたいなものはありました。
──すみません。のっけから話が脇道にそれちゃうんですけど、安田さん、まだ21歳ですよね。なんでそんなにちゃんとしてるんですか?
ウソーっ! 全然ちゃんとしてないですよ(笑)。
──いや、21歳の自分を振り返るに、何事においても責任感なんて皆無だった気がするんですよ。もし自分名義のアルバムを出せるってなったら何も考えずに「イエーイ!」ってハシャいだろうなって思いますし。
あはははは(笑)。私自身は全然ちゃんとしてると思ってないんですけど、それでもそう感じていただけるなら、小学校6年生のときにオーディションを受けて、中学校1年生のときから元気ロケッツのメンバーとして本格的に音楽活動をスタートしてるからかも。現場に自分と歳の近い子はほとんどいない。いつも周りにはたくさんの大人の方々がいるっていう環境で育ってきてるから、少しは落ち着いた感じでいられるのかもしれないですね。
「Wish」を「Will」に変えていきたい
──「Will」って、その「安田レイとして歌う責任」を果たしたアルバムになりましたよね。聴いていてソロボーカリストとしてのキャリアをきちんと集大成している印象を受けました。
あっ、うれしい! ありがとうございます(笑)。
──ただ面白いのが“集大成する”アルバムのタイトルが「Will」=「~だろう」「~するつもりだ」。“未来”を語る言葉なんですよね。いい意味で矛盾が起きている。
アルバムのタイトルは今の安田レイのことをひと言で表現できるフレーズがいいなって思っていたので。そういうことを考えていたときに浮かんできたのが「Will」。おっしゃる通り、未来への意志とか決意を表す強い言葉だったんです。デビューしてから今までの私には「Wish」、「叶うといいな」っていうことがたくさんあったんですけど、このアルバムをきっかけに「Wish」を「Will」に変化させたくて。「叶うといいな」じゃなくて「叶えるつもり」「叶えるんだ」っていう強い気持ちになれたらいいな、安田レイとしてまた新たなスタートを切りたいな、と思ってこのタイトルにしました。
──やっぱりちゃんとしてますよね(笑)。その「願ってるだけじゃダメだ」「ちゃんと自分の手で叶えるんだ」って決意をするようになったきっかけって?
「いつから」とか「この日から」っていう感じじゃなくて、自然な流れの中でそう思うようになった感じですね。安田レイとしてデビューして1年ちょっとなんですけど、それこそ自分の名前でCDをリリースすることもそうですし、ライブをすることもそうなんですけど、いろんな「叶うといいな」が叶ってきていて。でもそれって周りの方々や私の曲を聴いてくれる皆さんのおかげであって、私は「Wish」していただけだなっていう気持ちがずっとあったんです。そういう気持ちを抱えていたら、いつからか「じゃあ『叶うといいな』を叶えるためには何をすればいいんだろう?」って現実的に考えるようになっていたって感じなんです。
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- ニューアルバム「Will」2014年10月8日発売 / SME Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3600円 / SECL-1597~8
- 通常盤 [CD] 3100円 / SECL-1599
CD収録曲
- in the room
- Best of my Love
- Brand New Day
- Inside Out
- パスコード4854
- どうして...
- One More Time feat. Matt Cab
- Regret
- Mirror
- Let It Snow
- I&U
- フォゲミナ
- Delight
- Heavenly Star
初回限定盤DVD収録内容
- Best of my Love(music video)
- Let It Snow(music video)
- Brand New Day(music video)
- パスコード4854(music video)
- Mirror(music video)
- Will ジャケット撮影メイキング
- Will レコーディング映像
安田レイ(ヤスダレイ)
1993年4月15日、アメリカ・ノースカロライナ州で生まれる。3歳で日本へ移住し10歳の頃に母親が聴いていた宇多田ヒカルの楽曲に衝撃を受けてシンガーを志す。モデル活動を始めたことがきっかけとなり、13歳のときに元気ロケッツのオーディションに合格。架空の女性「Lumi」のモデルとなりボーカリストとしてもプロジェクトに参加する。2013年7月に「Best of my Love」でメジャーデビューを果たし、12月には配信限定の「Let It Snow」を発売。2014年2月に「Brand New Day」をリリースし、同年6月にはテレビアニメ「金田一少年の事件簿R」のエンディングテーマ「パスコード4854」を発表。そして同年10月、個人名義としては初めてのアルバム「Will」をリリースした。