Yap!!!|目指すはオルタナシーンの起爆剤、無邪気さが取り柄の“新人バンド”

石毛輝(lovefilm、the telephones)の新バンド・Yap!!!が1stミニアルバム「I Wanna Be Your Hero」をリリースした。

石毛の新たなソロプロジェクトとして始動したあと、汐碇真也(B)と柿内宏介(Dr)を迎えて結成されたYap!!!。彼らの1stミニアルバムは、バンドとして音楽を鳴らせる喜びをダンスロックで表現したみずみずしい1枚となった。Yap!!!の結成秘話やこれから目指すところなどについて、3人に徹底的に話を聞いた。

取材・文 / 清本千尋 撮影 / 草場雄介

「これ、バンドのほうがいいんじゃない?」

──活動休止中のthe telephones、現行バンドのlovefilmがある中、なぜ石毛さんは新しいバンドを始めたんですか?

石毛輝(Vo, G, Syn, Programming) 去年lovefilmとして1年活動してみて、そんなにライブをいっぱいやるタイプのバンドじゃないなって気付いたんです。この活動ペースならもう1つバンドをやれるなと思ったし、俺はライブをするのが大好きだからフットワーク軽く動けるプロジェクトが欲しかったんですよね。“Ishige Akira”というソロ名義でも楽曲をリリースしてきたんですけど、今のモードでやりたいのはこれじゃなかったので、違う名前を付けたソロプロジェクトを始めようと思いました。UK.PROJECTの社長daimasの55歳の誕生日を祝うイベントが1月にあって、それにソロ名義で出ることが決まってすぐに曲を作り始めました。そこで「I Wanna Be Your Hero」に入っている曲も何曲かやったんです。そのあと札幌でやる「Getting Better」にDJでオファーをもらったんですけど、DJじゃなくてライブをやらせてもらって、そこでも新曲をたくさん披露して。

──当時は1人でステージに立っていたんですか?

Yap!!!

石毛 ステージにPCを持ち込んでシーケンスを流しながら、ギターや鍵盤を弾いて歌いました。元Galileo Galileiの尾崎(雄貴)くんが札幌のイベントを観に来て「いいじゃないですか!」って言ってくれて、「これはやれそうだな」って思いました。そこから新曲をどんどん作ってdaimasに聴いてもらったら「これ、バンドのほうがいいんじゃない?」って言われて、「なるほど、その発想はなかったな」と。今の自分はIshige Akira名義でやっていたアンビエントな音楽じゃなくて、ロックに寄りすぎていないダンスミュージックをやりたかった。クラブでもライブできるような、the telephonesとは違うダンスミュージック。それを突き詰めながら曲作りをしていったらどんどん強いビートを取り入れるようになって、「これは生ドラムのほうがいいな」と思ってドラマーを探し始めました。

ひさしぶりにダイヤの原石を見つけた気分に

──どういった形で柿内さんと出会ったんですか?

石毛 lovefilmでCzecho No Republicの企画に出たときに、Yogee New Wavesも出ていて。そのときたまたまカッキーがサポートでドラムを叩いていたんですよ。そのプレイがめちゃくちゃよかったんですよね。後日カッキーに連絡をしてバンドに誘いました。それが3月くらいだったかな。

──柿内さんはthe telephonesの存在はもちろん知っていたと思いますが、すごく聴いていたというわけでは……?

柿内宏介(Dr) ないですね。むしろ大学で苦手なやつがテレフォンズ好きで、そいつがみんなでワイワイ盛り上がっているのを見て「俺はたぶん好きじゃないだろうな」と思ってました。

石毛 ははは(笑)。正直でよろしい。なんか明るい奴が聴く音楽ってイメージだったのかな?

柿内 そうですね(笑)。そんな感じでずっと聴いてなかったんですけど「SONIC MANIA」でたまたま観たらめっちゃカッコよくて。そんなテレフォンズをやっていた石毛さんから誘ってもらえてうれしかったですね。

石毛 今カッキーはYap!!!以外バンドをやっていなくて、そこも誘った理由の1つでした。俺がほかにもバンドをやっているっていうこともあって、ほかのメンバーがバンドを掛け持ちしてるとフットワーク軽くは動けないと思うので。

──石毛さんは具体的に柿内さんのどういうところに魅力を感じて声をかけたんですか?

石毛 Yogeeで叩くカッキーを観たときにボーカルを生かせるドラマーだなと思ったんですよ。たくさんのミュージシャンを間近で見てきているので、よっぽどのことがないとあまりそういうことは思わないんですけど、カッキーのプレイを見たとき、ひさしぶりにダイヤの原石を見つけた気分になりました。なんかカッコよかったんですよ。超うまいっていうわけじゃないんですけど、絵になるドラマーで。話してみたらどこか抜けてて、そこもいいなと思いました(笑)。

もう一度オーディエンスを熱狂させたかった

──まだYap!!!と名乗ってはいないものの、4月22日に東京・下北沢CLUB Queで石毛さんはバンド編成をお披露目しました。あのライブを観に行きましたが、ベーシストは汐碇さんではなかったですよね?

石毛 あのときは別のベーシストに弾いてもらってました。彼と俺は共通の友達が多くてクラブで一緒にお酒も飲んでたし、カッキーの押しもあって一緒にやってみたんですよ。それはそれでよかったんですけど、俺のバンドに合うかどうかっていうと求めていたものとちょっと違ったので新しいベーシストを探すことに。4月にThe Stone Rosesの来日公演が武道館であったんですね。俺は行けなかったんですけど、真也くんが行ってるのをFacebookで見つけて。ローゼズ好きっていう時点でけっこう惹かれたんですけど、グルーヴィなダンスミュージックを生バンドでやりたいという思いがあったし、彼のキャリアを考えるとうまくこういうサウンドにハマりそうだなと思ったんです。そしてそのままFacebookでメッセージを送りました。

汐碇真也(B)

汐碇真也(B) 当時フリーでベーシストとしてやっていて、ちょうどまたバンドをやりたいと思っていたタイミングだったので、お話をもらってめちゃくちゃワクワクしました。楽しそうだなって。

石毛 真也くんに連絡して2日後くらいに3人でスタジオに入ったんです。そしたらすごくいい感じでとても驚きました。真也くんは曲を覚えるのも早いし、これは優秀だなと思って。しかも顔はイケメンだし。daimasにも「いいじゃん」って背中を押されて(笑)。それで本腰を入れてこの3人でやっていくことに決めました。

──決め手はdaimasさんのひと言?

石毛 んー、そうなのかもしれない。やはり信頼している人なので。daimasに「ミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)のチバ(ユウスケ)さんがROSSOとかいろいろやったうえでThe Birthdayとして今うまくやっているし、石毛もそういうタイプだと思う。ソロミュージシャンよりバンドのほうがうまくいくと思うよ」って言われたときに「へー、そうなんだ」って思ったんですよね。確かに俺は本格的な電子音楽家じゃないし、ライブハウス育ちだし、大好きなバンドシーンでもう1回何かできたらって思ってることに気付いて。the telephonesでがんばって盛り上げてきたダンスロックムーブメントとはまた違う新しいシーンを作りたかった。今の時代に合う音楽を作って、もう一度オーディエンスを熱狂させたかったんですよね。

──そうだったんですか。

石毛 はい。the telephonesは同期モノを使わず人力で鳴らすダンスロックをやろうと決めていたから、ライブではCDの音源を再現できなかったんですよね。曲を作る人間としてはちょっとそこに対して物足りない部分もあって。これはノブ(岡本伸明 / Key)の悪口じゃないんだけど、ファンのみんなが知っている通り彼はいわゆるキーボーディストじゃないから難しいフレーズは弾けないの(笑)。それはノブらしくて本当にとても美しかったんだけど、難しいことを要求できないから、そういうサウンドは再現できなくて。それで、「ああいう音楽をもっと極めていったらどうなんだろう」って単純に興味があったんです。同期モノも使えるYap!!!であれば、そういう制約が外れて自由に音楽が作れると思ったんですよ。

──そう言えば今回はノブさんは一緒じゃないんですね。

石毛 ノブをこのバンドに連れてくるかはすごく悩みました。俺とノブには、ザ・クロマニヨンズのヒロトとマーシー、At The Drive Inの オマー(・ロドリゲス・ロペス)、 セドリック(・ビックスラー・ザヴァラ)みたいな関係に近いところがあるかなと思っていたから。でも今回はノブ本人とも話して、一緒にやらないことにしたんです。

Yap!!!「I Wanna Be Your Hero」
2017年10月25日発売 / Romantic 1984 / UK.PROJECT inc.
Yap!!!「I Wanna Be Your Hero」

[CD]
1944円 / R1984-002

Amazon.co.jp

収録曲
  1. Dancing in Midnight
  2. Too Young for Love
  3. If I'm a Hero
  4. Street
  5. Before You Leave
  6. Kick the Door

ライブ情報

Yap!!!「!!! We Dance, We Rock !!!」
  • 2017年11月4日(土)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL
    出演者Yap!!! / ART-SCHOOL
  • 2017年11月14日(火)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
    出演者Yap!!! / フレンズ
  • 2017年11月28日(火)東京都 新代田FEVER
    出演者Yap!!! / avengers in sci-fi
Yap!!!(ヤップ)
Yap!!!
the telephonesやlovefilmのメンバーとして知られる石毛輝が2017年に始動させた新プロジェクト。初期のライブは石毛が機材を駆使し、1人でステージに立っていたが、同年8月に汐碇真也(B)と柿内宏介(Dr)をサポートメンバーに迎え3人編成のバンドとして始動した。バンド結成を発表すると同時に配信シングル「Dancing in Midnight / Street」を、新たに立ち上げた自主レーベルRomantic 1984よりリリース。10月に同レーベルより1stミニアルバム「I Wanna Be Your Hero」を発表し、11月から対バンツアー「!!! We Dance, We Rock !!!」を行う。