ヤングスキニー「BOY & GIRLS」発売記念|1年半で起きた10大“事件”に迫る

ヤングスキニーのニューアルバム「BOY & GIRLS」がリリースされた。

「BOY & GIRLS」は、2023年3月発表の「歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた」から約1年半ぶりとなるオリジナルアルバム。「死ぬまでに俺がやりたいこと」「プレイボーイシンドローム」「不純愛ラブストーリー」といったパンキッシュな曲もあれば、「雪月花」「さよなら、初恋」というバラードもあり、ヤングスキニーの豊かな音楽性が感じられる1枚となっている。

ヤングスキニーはこの1年半をどう過ごしていたのか? 彼らの身に起きた10大“事件”をヒアリングし、自由に語り合ってもらった。事件①~⑥ではヤンスキ全員が共通でピックアップした出来事を、⑦以降では各メンバーが選んだ最も記憶に残っているものを取り上げる。

取材・文 / 小松香里撮影 / YURIE PEPE

【事件①】「ヤンスキ春の野音祭り」の忘れられない出来事

──ヤングスキニーは5月に東京・日比谷野音と大阪・大阪城音楽堂でワンマンを行いました。「BOY & GIRLS」の初回限定盤AとVICTOR ONLINE STORE限定盤Aに付属するDVDには、東京公演のライブ映像が収録されます。

かやゆー(G, Vo) 代々木公園野外ステージでフリーライブをやったことはありましたけど、野外といえば夕方から夜にかけて暗くなっていく時間にライブできるのが1つの魅力だと思っていて。ただ、代々木でのフリーライブは昼間だったんですよね。野音のワンマンではその時間帯が味わえて、代々木のときとは全然違う景色が広がっていてよかったですね。

ゴンザレス(G) 貴重な経験になりましたし、夕方の野外だと時間の経過をより実感できるライブになるのかっていうことが明確になって、いろいろと勉強になりましたね。

しおん(Dr) 僕はMy Hair is Badの野音のライブDVDをよく観ていたので、同じステージに立ててうれしかったです。コロナ禍の制限がなくなってからは初めての座席指定のワンマンライブで、お客さんがもみくちゃになるようなライブができないので、ちゃんと曲を聴かせたり、じっくり楽しんでもらう方法がちょっと見えてきたライブだったと思います。その経験を10月から始まる初のホールツアー(「“老いてもヤングスキニーツアーvol.5”サブタイトルもう思い付きま編」)で生かしたいですね。

りょうと(B) 徐々に暗くなっていく時間帯に似合う曲をうまく表現できたライブだったと思います。以前、野音でやったVaundyとフォーリミ(04 Limited Sazabys)のツーマンを観に行ったんですが(参照:Vaundy×04 Limited Sazabys、両者初の日比谷野音で伝説作り上げた秋雨の一夜)、雨が降っていて、照明演出も相まって雰囲気がすごくよかった記憶がありますね。

かやゆー(G, Vo)

かやゆー(G, Vo)

りょうと(B)

りょうと(B)

──「ヤンスキ春の野音祭り」の本編でもアンコールでも「BOY & GIRLS」の収録曲「不純愛ラブストーリー」を披露していましたよね。

しおん 激しく暴れたいマインドが強い時期だったので、アンコールでもやったんだと思います。かやゆーくんが曲名をコールしたらもう始まっちゃうんで。

かやゆー 「盛り上がりが足りないな」と思ったらタイトルをコールしてすぐ曲を演奏すると、自分たちの中でストッパーが外れる感覚があるんです。そういうノリでアンコールでも「不純愛ラブストーリー」をやりました。

──ニューアルバム「BOY & GIRLS」からも激しく暴れたいモードをかなり感じましたが、野音はアルバム制作中の時期だったんですか?

しおん そうですね。あの時期はそういうマインドが強かったですね。

【事件②】海を見ながらライブ、推しの楽屋に接近──フェスの思い出

ゴンザレス 「SWEET LOVE SHOWER」は大雨で地面がぐしゃぐしゃの状態だったんですけど、そんな状況でも来てくれたお客さんには音楽愛とヤンスキ愛を感じましたね。SNSでは“田植えフェス”って書かれてましたけど、あれはあれで楽しかったです。

しおん 春には地元の埼玉で開催されている「VIVA LA ROCK」でメインステージに立たせてもらいました。まだ自分たちのワンマンでアリーナは埋められないので、さいたまスーパーアリーナでライブができて貴重な体験でしたね。普段はステージであまり緊張しなくなってきたんですが、やっぱりアリーナだと「うわ、デカい!」と思って落ち着かなかった。今でも鮮明にステージからの景色を覚えてます。

りょうと 「MONSTER baSH」も今年は去年より1つ大きいステージに出演できて、去年よりたくさん人が来てくれてうれしかったですね。

かやゆー 「NUMBER SHOT」で海を見ながらライブをできたのは、なかなかない経験だったと思います。

しおん あと、「RUSH BALL」は2022年に僕たちが初めて出演したフェスで思い入れがあるんですが、天候の都合で昨年、今年と2年連続中止になって出られなかったんですよね。しかも今年はメインステージだったのに。

かやゆー 去年はトリで、僕たち野外フェスで夜の出番は初めてだったのに中止になり、今年も中止になり……あのフェス、ケータリングの肉がうまいんだよな。

しおん ケータリング大事だよね。

──「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」は、かやゆーさんの大好きなFRUITS ZIPPERと同じ出演日でしたね。

かやゆー そうですね。ファンじゃなかったらFRUITS ZIPPERの楽屋の前を普通に通ると思うんですが、ファンなので「出演アーティストの特権を濫用して近付いてるって思われたら怖いな」と心配になって、楽屋から目を逸らして通りました。

ゴンザレス ファンの鑑すぎるでしょ(笑)。

──SNSやライブのMCでファンだと公言しているので、ご本人たちにもおそらく届いていますよね。

かやゆー だから本人たちもたぶん俺のことが好きだと思うんですが、向こうも向こうで恥ずかしくてこっちに来ないのかなと思います。

ゴンザレス そんなことははない(笑)。

しおん 幸せな脳内だな(笑)。

【事件③】りょうとくん、ベーシストなの?と思った事件

かやゆー アルバムの制作中に「りょうとくん、ベーシストなの?と思った事件」がありましたね。ベースだけレコーディング時間が長すぎたんですよ。5時間かかった曲があって。

りょうと ゴンちゃん(ゴンザレス)作曲の「ハナイチモンメ」がボカロ調の曲でめちゃくちゃ苦戦しました。

かやゆー 「苦戦しました」って言われると「5時間かけて乗り切ったんだな」と思うかもしれないけど、最終的に乗り切れずに切り貼りしてほぼ打ち込みで完成させたんです。

りょうと いいテイクを切り貼りして。

ゴンザレス テイクじゃなくて「いい1音を切り貼り」と言ったほうが正しい(笑)。

かやゆー しかもりょうとくんは「終電があるから」と言って早く帰るんですけど、こっちが早く帰りたかったですよ(笑)。「ハナイチモンメ」はすでにライブでやっていて、お客さんからしたら今ライブで聴いてるベースの音が正解じゃないですか。でも、2番のサビ前のベースソロ的なところは俺からしたら、「もうサビ歌って大丈夫?」と思うくらい不安定で。アルバムが発売されたらよほどカッコいいライブアレンジにしないかぎり、音源通りに弾いたほうがいいと思うので、りょうとくんにそれができるか不安です。

りょうと 仕上げていきたいと思います!

──(笑)。アルバムはパンキッシュな曲が特に印象的で、皆さんのエネルギーが一層爆発していると感じました。

しおん ライブ映えする楽曲がたくさんありますよね。でもバラードもあったりして、ヤングスキニーらしいアルバムができたんじゃないかなと思います。

ゴンザレス ライブがより楽しめるようなパンクな曲が増えていったり、対バン相手からインスピレーションをもらったりする中でできていったアルバムですね。

しおん(Dr)

しおん(Dr)

ゴンザレス(G)

ゴンザレス(G)

かやゆー 意図はしてなかったですが、今作もバラエティ豊かなアルバムになったと思います。曲それぞれの面白さがあって、自分でも最初から最後まで飽きないなって。

──「禁断症状(Album ver.)」は気持ちのままに好き放題やるというヤングスキニーの信念が凝縮されてるような曲だと思いましたが、最初から好きにやってるという感覚なのか、徐々に好きにやれるようになったのか、どうなんでしょう?

かやゆー どんどん好きにやれているような気がします。曲を作れば作るほど、自分の中で「こういうふうにやってもいいんだ」とわかってきているから「禁断症状」みたいな曲ができるんだと思います。

──どれだけ好きにやっても、お客さんがついて来てくれる自信はあったりするんですか?

かやゆー もちろん離れる人もいれば、「それでもいい」という人もいるし、新しく聴いてくれる人もいる。だからやっぱり好きにやればいいのかなと思いますね。

──一方「誰かを救ってやる暇などないけど」という曲もありますが、音楽に救いを求める人は多いけれど、それを自分たちには求めないでほしいという気持ちから、そういうことを歌うのでしょうか?

かやゆー そうですね。前から他人のことを考えるのが好きじゃないですし、僕の中ではバンドマンってよく「誰かを救いたい」とか「明日からがんばってほしい」と言ってるイメージがあって。僕は純粋にそうは思えないから、カッコつけてまでそういうことを言いたくはない。自分の思っていることは全部歌にしてしまっていいと思っているので、そんな曲を書きました。それでも聴いてくれる人がいるのはラッキーだなと思います。