私の考えるアルバムの理想形
──ところで、やなぎさんのアルバムは自作曲、外部の作家さんからの提供楽曲、アニメのタイアップ曲が混在しているのに、パッケージとしての収まりがすごくいいですよね。「ナッテ」でもそれを強く感じたのですが、アルバム全体のデザインをどのように考えてらっしゃるんですか?
私の場合は、わりと早い段階からアルバムのことを考えていて。さっき言ったように、「ナッテ」のテーマも1年くらい前に決まってはいたので、それを前面に押し出してはいないものの、念頭には置きつつシングルの制作もしていたんですね。なので、あとから足りないピースを埋めると言うよりは、自然な流れで「曲が溜まったので、アルバムにします」っていう感じが強いです。言ってみればアルバムに入れるために曲を作るのではなく、曲が集まったから一旦出すっていうのが、私の考えるアルバムの理想形なので。
──曲順に関してはいかがですか? 2ndアルバム「ポリオミノ」のときは「シャッフル再生上等」みたいなお話をされていましたが(参照:やなぎなぎ「ポリオミノ」インタビュー)。
そうでしたね(笑)。今回の作品は、この順番で聴いていただくのがベストかなと思って組んではいて。ちょっと迷ったのは、DJみそしるとMCごはんさんと一緒に作った「relaxin'soup」をどこに置くか(笑)。
──なるほど(笑)。
迷った結果、箸休め的な位置に収まったんですけど、それ以外の曲の並びはすんなり決められました。コース料理みたいに前菜があって、サラダとかが続いて、4曲目の「here and there」あたりがメインディッシュで、小鉢とかを挟んで、文字通りスープがあって(笑)。12曲目の「夜明けの光をあつめながら」でシメのごはんものがくるみたいな、そんな気持ちで並べています。
「やなぎさんの気持ちをラップにします」
──曲の配置に悩まれたという10曲目「relaxin'soup feat. DJみそしるとMCごはん」ですが、このコラボはびっくりしました。
3年ぐらい前、スタジオから自宅まで車で送っていただいてるときに、私はすごい疲れてぐったりしてたんですけど、ラジオからDJみそしるとMCごはんさんのラップが流れてきて、ハッとしたんですよね。「なんだろうこれ?」ってなって、気持ちが持っていかれて、曲が終わる頃には癒されてて。すぐに調べて、「DJみそしるとMCごはん」っていうから2人組かと思ったら1人で(笑)。「面白い発想をする人だなあ。一緒に何か作れないかなあ」とこの3年間思い続けていたら、ようやく今回ご一緒できることになりまして。
──クレジットでは作詞とラップがお二人の共作になっています。その内容は、すごく雑に言えばグツグツ煮込んでいるラーメンのスープからひたすらアクを取り続けるというものですが、どのように作られたんですか?
最初にみそしるさんと「どういう料理を作りますか?」とか「どういう気持ちで料理をしますか?」っていう話をして、私が「休日に鶏ガラからスープのダシを取ってラーメンを作ります」と。
──やなぎさん、マジでラーメンのスープを自作するんですね。
マジなんです(笑)。で、「私がラーメンを作るのは、手の込んだ料理を1日かけて作ると、嫌なことを全部忘れちゃうから」とお伝えしたら、みそしるさんが「そのなぎさんの気持ちをラップにします」と、先にラップパートを作ってくださって。それに合わせて私がトラックをつけて「こういう感じでどうですか?」ってお戻ししたら、またみそしるさんが「この感じだったラップもこうします」と、けっこう細かく往復書簡みたいなやりとりを繰り返して作っていきましたね。
──楽しそうですね。
はい、楽しかったです。レコーディングも2人で交互にブースに入って、みそしるさんが先にラップを録って、そこに私が掛け合いとメロディを入れて、っていうのを繰り返して、それもすごく楽しくて。
──お二人の声が見事に調和して、いい雰囲気ですよね。歌詞にしても、スープから出るアクをネガティブな気持ちに例えていて。実際、料理って気分転換になりますからね。
ずっとお鍋から目を離さず、完全にアクを取り切るまですくうのをやめない。心も頭も空っぽにして。そうすると「なんか楽しいかも?」と思い始めたり「なんで悩んでたんだっけ?」みたいな気持ちになりますから。
──ちなみに、なぜ自分でラーメンを作ろうと思ったんですか?
なんででしょうね。ラーメンを食べるのは好きは好きなんですけど……なんか、お店でおいしいものを食べると、自分の家で再現してみたくなるんですよね。「この味、どうすれば出せるんだろう?」って。ラーメンは個人で作るのは限界があるとは思いつつも、一回、自分で究極のラーメンを作ってみたいなって。
──ははは(笑)。
「もしかしたらイケるんじゃないか」って思っちゃったんでしょうね(笑)。
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そこに存在するだけでも幸せ
- やなぎなぎ「ナッテ」
- 2018年1月17日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
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初回限定盤 [CD+Blu-ray]
4536円 / GNCA-1521 -
初回限定盤 [CD+DVD]
4320円 / GNCA-1522 -
通常盤 [CD]
3240円 / GNCA-1523
- CD収録曲
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- snowglobe[作詞・作曲・編曲:やなぎなぎ]
- 時間は窓の向こう側[作詞:やなぎなぎ / 作曲・編曲:bermei.inazawa]
- over and over[作詞:やなぎなぎ / 作曲・編曲:北川勝利(ROUND TABLE)]
- here and there[作詞:やなぎなぎ / 作曲・編曲:中沢伴行]
- スーパーヒーロー[作詞・作曲・編曲:やなぎなぎ]
- あなたはサキュレント[作詞:やなぎなぎ / 作曲・編曲:齋藤真也]
- 海を込めて[作詞:やなぎなぎ / 作曲:北川勝利(ROUND TABLE) / 編曲:acane_mudder、北川勝利]
- 瞑目の彼方[作詞:やなぎなぎ / 作曲:鷺巣詩郎 / 編曲:CHOKKAKU、鷺巣詩郎]
- 砂糖玉の月[作詞・作曲:やなぎなぎ / 編曲:出羽良彰]
- relaxin'soup feat. DJみそしるとMCごはん[作詞・ラップ:やなぎなぎ、DJみそしるとMCごはん / 作曲・編曲:やなぎなぎ]
- 目覚めの岸辺[作詞:やなぎなぎ / 作曲・編曲:rionos]
- 夜明けの光をあつめながら[作詞:やなぎなぎ / 作曲・編曲:北川勝利(ROUND TABLE)]
- natte[作詞・作曲・編曲:やなぎなぎ]
- 初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容
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- やなぎなぎ 5周年記念ライブ「Cassiopeia Limited Express」ライブ映像
- やなぎなぎ 2018年ワンマンツアー
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- 2018年3月4日(日)宮城県 Rensa
- 2018年3月18日(日)大阪府 umeda TRAD
- 2018年3月21日(水・祝)愛知県 ElectricLadyLand
- 2018年3月24日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2018年3月25日(日)福岡県 イムズホール
- 2018年3月31日(土)新潟県 NIIGATA LOTS
- 2018年4月8日(日)北海道 cube garden
- 2018年4月15日(日)香川県 DIME
- 2018年4月21日(土)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- やなぎなぎ
- 関西出身の女性シンガーソングライター。2006年にライブハウスやインターネット上で音楽活動を開始するやいなや注目を集め、2009年発表のsupercell「君の知らない物語」にnagi名義でゲスト参加。2012年2月にはテレビアニメ「あの夏で待ってる」のエンディングテーマ「ビードロ模様」でメジャーデビューした。その後も2013年7月に1stアルバム「エウアル」、2014年12月に2ndアルバム「ポリオミノ」、2016年4月に3rdアルバム「Follow My Tracks」とコンスタントに作品を発表。2018年1月には4thアルバム「ナッテ」を、2月にはアニメ「覇穹 封神演義」のエンディングテーマである「間遠い未来」をシングルリリースする。