スタイリッシュでとがったサウンドを目指して

──1stアルバム「エウアル」には宮川弾さんや小瀬村晶さんが作曲、編曲で参加していました。あれってすごくやなぎさんらしくはあるものの、けっこうビックリさせられる人選だったんですけど、今回も……。

ビックリしますよね（笑）。

──ARCHITECTさんや斎藤真也さんというやなぎなぎ楽曲ではおなじみのメンバーと並ぶのが、冨田恵一さんと末光篤さんですから（笑）。今回なぜこのお2方に？

冨田さんはキリンジのプロデュースをしてらっしゃる頃からずっと追いかけていたんです。昔は好きで聴いていただけだったんですけど、デビューして2年ちょっと経って「今なら自分なりにこういう曲も歌えるかもしれないな」と思って声をかけさせていただきました。

──冨田さんが手がけた「2つの月」はパッと聴きの印象としてはアガるギターロックなんだけど、実はメロディラインやコード進行がすごいしゃれている。「こういう曲」っていうのは、こういう曲？

そうですね（笑）。都会的というか、スタイリッシュにいきたい気持ちがあって。これまではもう少しインドア的、自分の内面を掘り下げるような音作りをしていたんですけど、今回は別の道を歩いてみようと思ってスタイリッシュでとがっている曲を作っていただきました。

──「navis」の作編曲家、末光さんに声をかけたのはなぜ？

実は「navis」は、ある作品のエンディングをイメージした曲なんですけど、そのイメージをどストレートに美しく表現できるのは末光さんしかいない！と思って。

──そして大切な思い出を「今も宝箱に仕舞って」「この道を行」く、ホントにキレイなピアノバラードができあがった。

これまでこんなにストレートな曲って作ったことがなかったんですけど、本当に優しい曲になったと思ってます。でも末光さんだからこその絶妙なバランスなんですよね。バラードなのにピアノのアタックが超力強い、みたいな（笑）。

──ちゃんとスタイリッシュだし、とがってる（笑）。

そうなんです（笑）。

ARCHITECTと斎藤真也とやなぎなぎのとがった音

──あとARCHITECTさん作編曲の「ファラウェイ・ハイウェイ」にしても……。

あのイントロのピアノのリフ、カッコいいですよね（笑）。

──ちょっとヤバいくらいカッコいいです（笑）。で、そのピアノは黒っぽいリフを刻んでるんだけど、実はエモい四つ打ちギターロックと聞こえなくもない。やっぱりスタイリッシュでとがってますよね。

そうなんです（笑）。実はこの曲は前のシングルのカップリングを作るときに候補としてデモをいただいていて。そのときはもう1曲のほうを（「インテンション・プロペラント」）を収録したんですが、今回のアルバムの全体像が見えてきたときに改めて聴いてみたら「このイントロは『ポリオミノ』だ！」って。

──斎藤真也さんの「landspace」も、やなぎなぎのディスコグラフィ的にはとがってますよね。アレンジを変えればアイドルポップにすら変身しそうな、ブライトな1曲です。

でも「実験でした」とか「挑戦でした」みたいな感じではなかったですね。真也さんとはデビュー当時からお仕事させていただいているから、私のことを本当にわかってくれていて。私の声の特徴を踏まえた上で何をしたら面白いのかみたいなことをめちゃくちゃいろいろ考えてくれる方なんです。だから、これまでの私の曲にはなかったタイプの曲であるんだけど、すごくやりとりをしやすかったです。

──そしてオープニングの「polyomino -into-」とラストの「polyomino -outro-」、それから「テトラゴン」「逆転スペクトル」はやなぎさん作編曲。制作はスムーズでした？

悩んだ記憶はあんまりないですね。どちらかというとすごく遊んだ記憶があります（笑）。

──それは聴けばわかります（笑）。「やりたい放題だな、この人」って思いましたから。以前「ルーパーを使って1人コーラス隊をやってみたい」と言っていた通り（参照：やなぎなぎ「エウアル」インタビュー）、「polyomino -into-」では声を重ねまくって遊んでるし、「テトラゴン」にしてもトイピアノなのかグロッケンなのか、金属的なオモチャっぽい音が鳴ってるうしろで、ぶっといシンセベースがブリブリいいまくっている。

ふふふふふ（笑）。「内面を掘り下げたり、自問自答したりしていた今までの自分の逆をいってみよう」と思いながら作ったので、自分の内側にこもりきりになってしまったり、悩んだりせずに済んだ部分が大きくて。自分がカッコいい、面白いと思った音を素直に作れました。