中学生たちと作った「こころのてんき」
──今回、人権をテーマにした「こころのてんき」という曲も収録されています。けっこう扱いづらいテーマだと思ったのですがいかがでしたか?
大変でしたけど、ありがたいですね。こういったテーマでも私に作ってほしいって言ってくれてるわけですから。
──作詞が「笠岡西中学校一年生一同」というクレジットになっていますが、これはどういう経緯で?
この曲の歌詞は、岡山県の「笠岡市人間人権週間のつどい」というイベントで、「あなたが思う人権」というテーマに作られた詞がもとになっているんです。「友達のことだったり学校のことだったり、身近なことでいいんですよ」っていうテーマのコンテストが行われて、その優勝作がもとになっているんです。
──歌詞の洗練された言葉遣いと、中学生が書いたというギャップにびっくりしました。
ね。私も聞きたいですもん、どういうふうにこの詞ができたのか。私自身が“詞を作る人”としてすごい気になりましたね。でも、残念ながら直接聞く機会はなくて。入賞した詞にちょっと手を加えた部分もあるんですけど、基本的に私が好きな部分は残してるんです。ただもとの答えのない詞と比べると、ゴールが見えるような歌詞になったと思います。私の解釈ではあるんですけど、彼らのメッセージを聴く人に伝えるにはどういうふうにしたらいいんだろうなって考えて手を加えました。
──書いた本人たちに曲の感想を聞いたりは?
聴いてもらうって言うか、私自身も式典に参加してこの曲を歌ったんです。笠岡西中学校の生徒何人かもステージに立っていて、私の後ろで歌を聴いているっていう(笑)。本人たちも初めて曲を聴くのに、なぜかステージでお客さんと向き合って聴いてる状況で。でも「感動しました」ってすごい言ってもらえて、私も貴重な体験ができました。
──中学生たちにとっては思い出深い出来事になったでしょうね。自分たちの書いた詞が曲になってCDに収録されるというのは。
思い出に残ってくれたらいいなって思うし、この詞のことを忘れないでほしいなと思います。CDを聴いたら彼ら、びっくりするでしょうね。その日は弾き語りだったけど、バンドサウンドになると印象が全然違いますから。レコーディングするとき、あえて歌も不器用に歌おうって思って。そこはかなり気を付けたと言うか。
──親父目線の「親父ブルース」は、よく楽曲の世界観を成立させましたよね。
最初は「私が歌っていいのかな」って思ったんですけど(笑)。
──この曲は、お題としてはどんなオーダーが寄せられたのですか?
私に近い歳の1人娘がいる方に、「娘に彼氏を紹介してもらったんだよね。結婚も近いんだけど、俺自身ちゃんと大人になれてるのかなって思うことがあって」みたいなことを言われて、「娘が旅立つ喜び」と「俺って大人なのかな?」ということをテーマにして曲を作りました。でも、その2つの要素が破綻しないようにするのが難しくて。詞と曲を同時に作っていって難航しましたが、ちゃんと着地できた。結婚式のときにお父さんに歌ってほしいと思える内容になりましたね。
信頼する別府克彦との制作エピソード
──今回アルバムを作るうえでサウンド面にも画期的な変化があったようですね。楽器の音色やアレンジが多岐にわたっていたのでいろんなミュージシャンが参加しているのかなと思ったんですが、クレジットを見たら、すべての演奏やアレンジを別府克彦さんがお1人で手がけられていて驚きました。別府さんは山根さんと同郷の島根県松江市のご出身なんですね。今回別府さんをプロデューサーに起用した経緯を教えていただけますか?
別府さんのことはもともと知ってて、何年か前に何人かで地元のローカル番組のテーマソングを作る機会があったんです。そのレコーディングのディレクションを担当してくださったのが別府さんで、そのときに初めて会いました。そこから何年か経って、地元のCMソングのお話をいただいて、トラックを作るときに別府さんに頼んだらいいんじゃないかって閃いたんです。実際に別府さんのスタジオに行って一緒に1曲作ったのがきっかけでアルバム制作につながったという。
──彼にアルバムのプロデュースやミックスを任せたいと思った理由はなんだったんですか?
別府さん自身、アイデアや感性も素晴らしいんですけど、例えば事務所の社長や私が何か意見を言うとすぐにキャッチして応えてくださる感じがあるんです。それがすぐできたから、信頼感が生まれました。それから「これはチームとして合うね」ということになって。
──別府さんにアルバム全体を任せたいとオファーしたときの反応は?
とても喜んでくださって。楽曲も聴いてもらってない段階で、すごい盛り上がってくれました。それがうれしかったですね、単純に。
──収録された12曲を聴いていくと、別府さんの作るジャンルの幅広さに驚かされますね。
そうなんです。相当細かい指示を出したんですけど、それをすぐに理解して形にしてくださる。「いい!」と思うことはとりあえずやってみる。一方で、熱量を込めて弾いてくれたギターを、私が「ちょっとイメージと違うんでカットしてください」とか言ったりすることもあって。そういうやり取りもできました。
──意見やアイデアのキャッチボールを経て、このサウンドにたどり着いたんですね。
はい、相当やってますね。だからバンドみたいなんですよ。ドラムの音1つでも「これはリンゴ・スターで」とか「これはカーマイン・アピスで」とかリクエストして。私が挙げたアーティストを知らなかったら、聴いたうえでアレンジに取り組んでくださったんです。それを全部短期間でやってくれた。本当にありがとうございますっていう感じです。
──サウンドを作るうえでオーダーしたのはどんなイメージだったのですか?
最初、今回のアルバムはちょっとオシャレな作品にしようと考えていて、それを伝えてたんです。だけど作り始めたら、正直オシャレじゃないほうがいい曲が多くなって、曲に合わせてアレンジを変えていきました。
──そうだったんですね。
私のほうで作ったデモの段階で、リズムも入れたりしてたんですよ。ほとんどの曲はレコーディングの前にサウンドのイメージがあったんですけど、アルバムの最後に収録されている「島はいつくし地球の唄」に関してはちょっとイメージが湧かなくて。そうしたら別府さんが「バンドっぽい感じで」というアイデアをくださったんです。もともとはアコースティックなサウンドをイメージしてたから最初は「どうかな?」って思ったけど、実際にやってみたらすごいよくて。最終的に3ピースのバンド編成にしました。今回はどの曲も「こうしたらもっとカッコよくなる」ということを手を抜かずにやりました。一緒にできる人がいるとがんばれるんですね。
──自分がやりたいことを形にしてくれる別府さんという武器を得たことで、自分の作りたいアルバムを作ることができたわけですね。
そうですね!
──でも、万理奈さんの今の活動は大変なことも多いのでは?
いえ、私はこの方法で音楽を届けることを心から楽しんで活動しているので大変ではないです。4月1日にツアーが始まるので、ぜひたくさんの人に遊びに来てもらいたいですね。
- 山根万理奈「海とダイヤ」
- 2018年4月4日発売 / バーガーインレコード
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[CD]
2700円 / BUCA-1043
- 収録曲
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- ええ顔えがお
- そんな夜なら歌うのさ
- LUCKY STRIKER
- 海とダイヤ
- 柔く優しく
- ハイスクール・モーメント
- こころのてんき
- セレナーデを聴かせて
- imaginary line
- ソーダ水から見上げる空
- 親父ブルース
- 島はいつくし地球の唄
- ニューアルバム「海とダイヤ」リリースツアー
TOUR 2018 海とダイヤ -
- 2018年4月1日(日)東京都 lown
- 2018年4月4日(水)東京都 タワーレコード渋谷店
- 2018年4月7日(土)埼玉県 Cafe Tico Tico
- 2018年4月8日(日)東京都 チャイナスクエア
- 2018年4月13日(金)愛知県 K.D ハポン
- 2018年4月14日(土)京都府 someno kyoto
- 2018年4月15日(日)兵庫県 神戸VARIT. / nomadika / ARTRIUM / SPORTEREA / STUDIO KIKI / Flat Five / クラブ月世界(※「トアロード・アコースティック・フェスティバル2018」出演)
- 2018年4月21日(土)島根県 仁夫里浜公園(※「野だいこん祭り」出演)
- 2018年4月25日(水)島根県 MUSIC BAR Birthday
- 2018年4月27日(金)岡山県 城下公会堂
- 2018年4月28日(土)島根県 味巣亭
- 2018年4月29日(日・祝)広島県 楽座
- 2018年4月30日(月・振休)島根県 イオン松江ショッピングセンター
- 2018年5月3日(木・祝)大阪府 イオン高槻店 1F スタジアムコート
- 2018年5月4日(金・祝)大阪府 BAR LAUGHING
- 2018年5月5日(土・祝)香川県 RUFFHOUSE
- 2018年5月6日(日)兵庫県 かくれんぼ
- 2018年5月9日(水)島根県 WATERWORKS
- 2018年5月11日(金)島根県 Punicafe
- 2018年5月26日(土)鳥取県 Bar Matchbox
- 2018年5月27日(日)島根県 王陵の丘
- 2018年5月29日(火)岡山県 カフェ・ド萌
- 2018年6月1日(金)島根県 アポロ
- 2018年6月2日(土)広島県 音楽喫茶ふらんす座
- 2018年6月3日(日)島根県 Cafe ごはん Read
- 2018年6月16日(土)北海道 cafe CHI-MM
- 2018年6月17日(日)北海道 musica hall cafe
- 2018年6月24日(日)東京都 Live Cafe El Jugador
- 2018年7月4日(水)愛知県 K.D ハポン
- 2018年7月5日(木)大阪府 ブラステ
- 2018年7月7日(土)福岡県 箱崎水族館
- 2018年7月8日(日)山口県 Zan Cro Blues
- 2018年7月10日(火)島根県 おもひで屋
- 2018年7月14日(土)島根県 松江 AZTiC canova
- 2018年7月15日(日)島根県松江(※詳細未定)
- 2018年7月22日(日)東京都 lown
- 山根万理奈(ヤマネマリナ)
- 島根県出身のシンガーソングライター。2009年よりYouTubeでカバー曲やオリジナルの弾き語り映像を公開し、透明感あふれる声が注目を集める。その存在が現在所属する事務所スタッフの目に留まり、2011年6月に山音まー名義でニコニコ動画で人気を博している楽曲をカバーしたミニアルバム「人のオンガクを笑うな!」をリリースし、同年7月にワーナーミュージック・ジャパンからシングル「ジャンヌダルク」でメジャーデビューした。同年11月にカバーアルバム「ざっくばらん」で、自身のルーツとも言える名曲の数々を弾き語りで披露。2012年1月に「STAR e.p.」、3月に「スタートライン」という2枚のシングルを発表したのち、4月に1stフルアルバム「空な色」をリリースする。その後ワーナーを離れ、2013年5月にインディーズレーベルより「好きで悩んでるわけじゃない」を、2014年にはクラウドファンディングサイトにてファンから募った資金をもとに制作したアルバム「歌ってhappy!」をリリースする。以降もクラウドファンディングを活用して作品作りを行い、2018年にニューアルバム「海とダイヤ」を発表。年間100本を超えるライブを通じて全国各地でファンを獲得している。