山根万理奈がニューアルバム「海とダイヤ」を4月4日にリリースする。
メジャーレーベルでの活動を経て2013年に活動の場をインディーズに移し、2014年からはクラウドファンディングで資金を募ってアルバムを作り続けている彼女。完成したアルバムには、出資者からのお題をもとに楽曲を作る「オリジナル楽曲制作プラン」で作られたナンバーを中心に全12曲が収録されている。
クラウドファンディングを活用しての作品作りや、全国各地を回るライブ活動を重ねながらソングライティング力や歌に磨きをかけてきた山根に話を聞いた。
取材・文 / YASU
お題をもとに作ることが面白い
──2015年発表の「愛と妄想、25歳。」では“今の私”をテーマに一発録りでのレコーディングに挑み、2016年発表の「山根万理奈とマリナッチ楽団」では“旅と音楽と出会い”をコンセプトにファンと一緒にアルバムを作りました。そして2017年発表の前作「YAMANEMAN」は、クラウドファンディングでの「オリジナルソング制作」という特典のために作った楽曲をまとめた作品を発表するなど、ここ数年コンセプチュアルな活動が続いている印象を受けます。今作の「海とダイヤ」は何かコンセプトを設けて制作されたのですか?
今回はテーマを掲げず制作をスタートさせたのですが、結果として「YAMANEMAN」と同じようにファンからのお題をもとに作ったリクエスト曲が中心のアルバムになりました。前回もそうだったんですが、リクエストをしてくださった方の思いを汲み取って、私のフィルターを通して曲ができて、その曲がどんどん知らない人にも広がっていく。作っていてそれは面白かったし、喜びもあった。その経験があって、今回もそういう形で制作に臨みました。ファンからのお題をもとに曲を作る作業はセッション感があって面白いです。
──ファンからお題を受け取って作ることで、ソングライティングの精度がより高まったような印象を受けました。「この曲はどんなお題があったのかな?」と想像しながら聴くのが楽しかったです。歌詞の描写なども細かくて、設計図のような印象を受けました。
確かに、歌詞は設計図っぽいかもしれないですね。私は歌詞をフィーリングで書いていると思っていたんですけど、「ええカッコしい」「ちゃんとしたい」みたいなところもあって、結果的に細かくなったんだと思います。アルバムのコンセプトとかではないけど1曲1曲のお題が明確だったから、歌詞を通じて「こういうふうに言おう」みたいなことはすごく考えました。ただええカッコしいだけど、どこか正直でいたいところもあって(笑)。
──本能的な部分を、作品の中でバランスよく整えるのは山根さんの持ち味ですよね。
どうせボロが出るのに、全部カッコ付けてどうすんだろうみたいな感じなので、そういう歌詞になったりするのかな。照れ隠しかな? 実はすごいシャイなので。
──ご本人としては、曲作りをするうえで本能的な部分と技巧的な部分とどちらの比率が大きいのですか?
どっちだろう? あんまり考えてなくて。曲によるかな。「この曲のときはこういう私でいたい」とか。今回のアルバムでは、年齢も性別も違う人たちからそれぞれベクトルが違うお題をいただいたんですけど、けっこう年相応な曲になって。今だから書けたんだなっていう曲ばっかりになりました。
──前作に比べてお題に対する曲作りの手腕が上がっているのかもしれないですね。
そうかもしれないです。
「山根万理奈の作品」にする筋力が増強
──今回のアルバムを聴いて、さまざまなお題を「山根万理奈の作品」にしていける“筋力”を感じました。
クラウドファンディングで曲作りを依頼してくれる人の中には、私を試すことを楽しんでいる人もいますからね。「かかってこい!」じゃないですけど、受けて立ってます(笑)。別にアルバムに入れるために1曲1曲を作ってるわけじゃないから。だから「時間かけてでもやりますよ」ってリスナーの方に毎回言ってるんです。
──この企画を実際にやれる人はなかなかいないと思います。
この間、ほかのアーティストの方に聞かれました。「今度お題をもとに曲作りをするんです。どういうリクエストが来て、万理奈さんはどういうふうに作ってるんですか?」って。「それは人によるし、あなたがどう作りたいかじゃないの?」って伝えましたけど。私はこの形を楽しんでいますね。
──アルバムタイトルに「海とダイヤ」を選んだのはなぜですか?
収録曲の中で最初にできたのが「海とダイヤ」なんです。言葉自体を気に入っていて、「アルバムタイトルをどうしようかな」って悩んでるときもずーっと「海とダイヤ」という言葉が頭にあって。海って生命の誕生の地だし、いつの時代も変わらずに命の源や象徴としてあり続けてるじゃないですか。ダイヤはもとはただの石だけど価値を見出されて、美しいものとして認識されている。人の手にかけられて市場に出たりとか、それを必要としてる人がいたりとかする。その「海」と「ダイヤ」が並んでるというのが面白いなと思って。
──そうでしたか。
あと自分が信じる音楽を作って人に求められないと、ミュージシャンとして終わってしまうかもしれない。ダイヤのように自分も求められる存在でありたい。そういう思いがタイトルに出るといいのかなって思って付けました。
──ほかに曲を作る過程で印象に残っているエピソードをきかせてください。
「ハイスクール・モーメント」という曲は、あえて1番と2番のサビの歌詞を変えなかったんです。それによってよりキャッチーになるかなと思って。逆に曲で遊んだらいいんじゃないかと思って、1番と2番でサビのメロディを変えました。
──歌詞は同じですが、歌い回しがファルセットになったり、自由に変化していく面白さがありました。
そうですね。歌を録るとき、曲に登場するキャラクターになりきるのが楽しかったし、コーラス入れも別人格になれて面白かったです。
──サウンドも歌謡曲ふうのテイストで印象的でした。
アレンジもそうだし、曲を作る段階でも歌謡曲を意識したんです。
──歌詞も本来漢字で表記するところをカタカナにしていますね。校舎を「コウシャ」としたり、落書きを「ラクガキ」と表記したり。
変わった歌詞の曲なので、それを極端に表現したくて。CDで出すからブックレットがあるし、そういうところにもこだわりたいなって思ったんです。
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中学生たちと作った「こころのてんき」
- 山根万理奈「海とダイヤ」
- 2018年4月4日発売 / バーガーインレコード
-
[CD]
2700円 / BUCA-1043
- 収録曲
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- ええ顔えがお
- そんな夜なら歌うのさ
- LUCKY STRIKER
- 海とダイヤ
- 柔く優しく
- ハイスクール・モーメント
- こころのてんき
- セレナーデを聴かせて
- imaginary line
- ソーダ水から見上げる空
- 親父ブルース
- 島はいつくし地球の唄
- ニューアルバム「海とダイヤ」リリースツアー
TOUR 2018 海とダイヤ -
- 2018年4月1日(日)東京都 lown
- 2018年4月4日(水)東京都 タワーレコード渋谷店
- 2018年4月7日(土)埼玉県 Cafe Tico Tico
- 2018年4月8日(日)東京都 チャイナスクエア
- 2018年4月13日(金)愛知県 K.D ハポン
- 2018年4月14日(土)京都府 someno kyoto
- 2018年4月15日(日)兵庫県 神戸VARIT. / nomadika / ARTRIUM / SPORTEREA / STUDIO KIKI / Flat Five / クラブ月世界(※「トアロード・アコースティック・フェスティバル2018」出演)
- 2018年4月21日(土)島根県 仁夫里浜公園(※「野だいこん祭り」出演)
- 2018年4月25日(水)島根県 MUSIC BAR Birthday
- 2018年4月27日(金)岡山県 城下公会堂
- 2018年4月28日(土)島根県 味巣亭
- 2018年4月29日(日・祝)広島県 楽座
- 2018年4月30日(月・振休)島根県 イオン松江ショッピングセンター
- 2018年5月3日(木・祝)大阪府 イオン高槻店 1F スタジアムコート
- 2018年5月4日(金・祝)大阪府 BAR LAUGHING
- 2018年5月5日(土・祝)香川県 RUFFHOUSE
- 2018年5月6日(日)兵庫県 かくれんぼ
- 2018年5月9日(水)島根県 WATERWORKS
- 2018年5月11日(金)島根県 Punicafe
- 2018年5月26日(土)鳥取県 Bar Matchbox
- 2018年5月27日(日)島根県 王陵の丘
- 2018年5月29日(火)岡山県 カフェ・ド萌
- 2018年6月1日(金)島根県 アポロ
- 2018年6月2日(土)広島県 音楽喫茶ふらんす座
- 2018年6月3日(日)島根県 Cafe ごはん Read
- 2018年6月16日(土)北海道 cafe CHI-MM
- 2018年6月17日(日)北海道 musica hall cafe
- 2018年6月24日(日)東京都 Live Cafe El Jugador
- 2018年7月4日(水)愛知県 K.D ハポン
- 2018年7月5日(木)大阪府 ブラステ
- 2018年7月7日(土)福岡県 箱崎水族館
- 2018年7月8日(日)山口県 Zan Cro Blues
- 2018年7月10日(火)島根県 おもひで屋
- 2018年7月14日(土)島根県 松江 AZTiC canova
- 2018年7月15日(日)島根県松江(※詳細未定)
- 2018年7月22日(日)東京都 lown
- 山根万理奈(ヤマネマリナ)
- 島根県出身のシンガーソングライター。2009年よりYouTubeでカバー曲やオリジナルの弾き語り映像を公開し、透明感あふれる声が注目を集める。その存在が現在所属する事務所スタッフの目に留まり、2011年6月に山音まー名義でニコニコ動画で人気を博している楽曲をカバーしたミニアルバム「人のオンガクを笑うな!」をリリースし、同年7月にワーナーミュージック・ジャパンからシングル「ジャンヌダルク」でメジャーデビューした。同年11月にカバーアルバム「ざっくばらん」で、自身のルーツとも言える名曲の数々を弾き語りで披露。2012年1月に「STAR e.p.」、3月に「スタートライン」という2枚のシングルを発表したのち、4月に1stフルアルバム「空な色」をリリースする。その後ワーナーを離れ、2013年5月にインディーズレーベルより「好きで悩んでるわけじゃない」を、2014年にはクラウドファンディングサイトにてファンから募った資金をもとに制作したアルバム「歌ってhappy!」をリリースする。以降もクラウドファンディングを活用して作品作りを行い、2018年にニューアルバム「海とダイヤ」を発表。年間100本を超えるライブを通じて全国各地でファンを獲得している。