音楽ナタリー Power Push - 山根万理奈

25歳のリアルな「愛と妄想」

芽生えたソングライターとしての覚悟

──今回収録されている曲は、いつ頃書いたものなんですか?

 山根万理奈

基本的には前回のアルバム以降の曲たちですね。そういう意味では、これまでの私のアルバムの中で一番制作期間が短い作品でもあって。

──短期間でこれだけさまざまな曲を書けたのは、山根さんの中にあふれるものがあったから?

というよりは、曲を書くということに対して、アプローチの仕方が増えたんだと思います。今までは感情に起伏があったときにバッと歌詞を書いて曲を付ける作り方が多かったんです。でも今回は、曲から作り始めてみたりとか、感情うんぬんではなく何か1つキーワードを決めて、そこから歌詞を膨らませてみたりとか、そういうことがちょっとずつできるようになって。それは今までやってこなかったアプローチなので、自然と曲自体の色にも変化が出たところがあったと思いますね。

──曲が降りてくるのを待つだけだと、不安もありますもんね。

そうそう。そんな天才じゃないでしょ、っていう(笑)。感情の起伏に任せた曲作りだけじゃ、ずっと続くわけはないなと思うし。新しいアプローチができるようになって、自分に対しての発見も改めてあったので、曲作りがより楽しくなりましたね。

──今回の作品にはソングライターとしての成熟を感じた部分もあったんですよ。すごくいい曲たちばかりなので。

ありがとうございます。それぞれの曲は自分の子供みたいなものなので、なかなか自分で評価するのは難しかったりはするんですけどね。ただ、私はずっとシンガーソングライターというものに縛られたくないって言ってきたんですよ。

──そうでしたよね。「女優に挑戦したい」とおっしゃってました。

 山根万理奈

でも、その捉え方にちょっと変化があったんですよね。今まで同様、シンガーとしての山根万理奈はこれからも大事にしていきたいし育んでいきたいけど、自分で作詞作曲もしているし、そこもちゃんと磨いていきたいなってすごく意識するようになったというか。

──自作曲以外を歌うシンガーとしての柔軟さはこれからも大事にしつつ、ソングライターとしての覚悟も生まれてきたと。

そうそう。それによって緊張感というかね、作品に対してのストイックさみたいなものが今回は出たような気がするんですよね。それは自分にとっての大きな変化。これからも、もっといい曲が書きたいって本気で思うようになりました。

25歳の山根万理奈が知った新しい“愛”

──今回のアルバムは、タイトルにも示されているように“愛”が大きなテーマになっていて。しかも単なる恋愛だけではない、大きな視点での“愛”が見えている印象でした。

はい。生きていると恋愛だけじゃない愛というものを感じることがすごく多くて。私自身、いろんな愛を与えてもらっているし、それに支えられているところがある。なので今回は、今まで書いてきたような恋愛の曲だけではなく、違った形の愛も描いていきたいなって思ったんですよね。あとは、今までの恋愛の曲は感情的な部分で自分の中だけで完結しているものが多かったけど、今回は私だけじゃなく“あなた”がいたりとか、もう少し周りの顔が見えてくる書き方をしたいなっていう気持ちもすごくあって。そこもかなり意識はしましたね。

──そういった思いを象徴する1つとして、お母様への気持ちをつづった「誰よりも」という曲がありますね。25歳になった山根さんのリアルな感情がにじんでいます。

最近、結婚して子供を授かる友達がすごく多いんですよ。で、そういう子たちから話を聞くと、親の完璧じゃない部分がすごくよくわかるというか(笑)。つまり、自分の親もいろんな悩みを持ちながら自分のことを育ててくれたんだなと思えるようになったんですよね。なので、この曲では自分の親に対しての思いをかなり具体的に、赤裸々に書いてみました。母親がこれを聴いたらどんな反応するんでしょうね(笑)。

 山根万理奈

──いや絶対うれしいと思いますよ。あと、「てつやの恋人」という曲がすごく面白かったです。恋愛ソングではありますけど、視点がちょっと斬新で。

今までの恋愛ソングは自分目線が多かったんですけど、ここでは第三者目線で書いてみたんですよね。知り合いの男性の方が上司と飲んでるときに彼女の話をしたってことを聞いたので、それをそのまま歌詞にしてみたっていう。

──要は、その上司目線で書いてるわけですよね。

そうですそうです。その知り合いの男性が“てつや”なんです。作詞面でもチャレンジをしたいなと思っていたので、面白がってスラスラ書けましたね。しかもね、私の周りには偶然“てつや”が多くて。レコーディングに参加してくれた斉藤さんも“哲也”なので、最初に聴いてもらったとき「これ俺のこと?」って言われて(笑)。具体的な名前を使うと、そういう反応があるってわかったのも面白かったです。

ニューアルバム「愛と妄想、25歳。」/ 2015年6月24日発売 / 2700円 / BURGER INN RECORDS / BUCA-1039
ニューアルバム「愛と妄想、25歳。」/
収録曲
  1. 砂漠のマーメイド
  2. X-day
  3. 時のまにまに
  4. ふたりのとき
  5. ワイキキ・チェキラ・シェキラ・ビーチ
  6. てつやの恋人
  7. 誰よりも
  8. たぶんね
  9. オトメコーヒー
  10. 街角
  11. あなたとわたしのうた
アルバムリリースツアー「愛と妄想、25歳。」
  • 2015年6月26日(金)大阪府 D'STYLE
  • 2015年6月27日(土)京都府 京都ROOTER×2
  • 2015年6月28日(日)兵庫県 Sound Bar かくれんぼ
  • 2015年6月30日(火)島根県 LIVEHOUSE&STUDIO APOLLO
  • 2015年7月3日(金)山口県 なべ萬&トム・キャット
  • 2015年7月4日(土)山口県 Organ's Melody
  • 2015年7月5日(日)島根県 cafe gallery bar Po
  • 2015年7月10日(金)島根県 MUSIC BAR WeST
  • 2015年7月11日(土)山口県 玉ネギ畑
  • 2015年7月12日(日)島根県 Tete De Bavard
  • 2015年7月17日(金)東京都 lete
  • 2015年7月18日(土)東京都 江古田マーキー
  • 2015年7月19日(日)東京都 lown
  • 2015年7月20日(月・祝)東京都 Last Waltz by shiosai
  • 2015年7月21日(火)千葉県 柏ThumbUp
  • 2015年7月24日(金)愛知県 K.D ハポン
  • 2015年7月25日(土)岡山県 カフェ・ド萌
  • 2015年7月26日(日)島根県 Night&Day 味巣亭
  • 2015年7月29日(水)岡山県 城下公会堂
  • 2015年7月30日(木)香川県 RUFFHOUSE
  • 2015年8月1日(土)広島県 楽座
  • 2015年8月2日(日)兵庫県 LIVESHOT BLANTON/BLANTON
  • 2015年8月8日(土)東京都 lown
  • 2015年8月9日(日)東京都 lown
山根万理奈(ヤマネマリナ)
 山根万理奈

島根県出身のシンガーソングライター。2009年よりYouTubeでカバー曲やオリジナルの弾き語り映像を公開し、透明感あふれる声やおっとりしたキャラクターが注目を集める。その存在が現在所属する事務所スタッフの目に留まり、2011年6月に山音まー名義でニコニコ動画で人気を博している楽曲をカバーしたミニアルバム「人のオンガクを笑うな!」をリリースし、同年7月にワーナーミュージック・ジャパンからシングル「ジャンヌダルク」でメジャーデビューした。同年11月にカバーアルバム「ざっくばらん」で、自身のルーツとも言える名曲の数々を弾き語りで披露。2012年1月に「STAR e.p.」、3月に「スタートライン」という2枚のシングルを発表したのち、4月に1stフルアルバム「空な色」をリリースする。その後ワーナーを離れ、2013年5月にインディーズレーベルより「好きで悩んでるわけじゃない」を、2014年にはクラウドファンディングサイトにてファンから募った資金をもとに制作したアルバム「歌ってhappy!」をリリースする。2015年6月にニューアルバム「愛と妄想、25歳。」を発表。年間100本を超えるライブを通じて着実にファンを獲得している。