音楽ナタリー Power Push - 山根万理奈
25歳のリアルな「愛と妄想」
山根万理奈がニューアルバム「愛と妄想、25歳。」をリリースした。
シンガーソングライターとしての覚悟をもって生み出したという全11曲にはさまざまなトライアルが詰め込まれ、今までにない新たな表情が鮮烈に出ている。さらにほぼすべての楽曲を一発録りしたことで、ライブ感のある生々しい臨場感を味わえる仕上がりとなった。“愛”をテーマに作られた、アーティストとしての進化を実感させる本作。そこに込めた思いを聞いた。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 白石望十八
原点回帰を求めての一発録り
──前作「歌ってhappy!」から約10カ月という早いペースでニューアルバムが到着しました。前作リリース後、すぐに制作へ入った感じですか?
「歌ってhappy!」を昨年9月にリリースしたあと、年末までツアーをやっていて。その間に、「次どうしようか」っていう話はもうしてましたね。で、具体的には年明けからは着手し始めた感じでした。今回も資金を募るために、2月から4月までクラウドファンディングをやらせていただいて。
──アルバムの内容としてはどんなものを思い描いていましたか?
まず一番大きいところはサウンド面でしたね。今までいろいろ試行錯誤して、いろんなサウンドに挑戦してきたんですけど、今回はシンプルに歌が生きるスタイルでいこうと。振り返ってみると最初はYouTubeで自分のありのままの歌を聴いてもらってたわけなので、今回はある意味、原点回帰とも言えるスタイルで勝負したいなって。結果、バンドと一緒に歌を一発録りするというレコーディング方法になっていったんですよね。
──今回の作品はサウンドも歌も非常に生々しい印象で。まるですぐそばで歌ってくれているような臨場感が味わえました。
今の私の活動を考えると、ライブがすごく大きなウエートを占めているんですよ。で、そこでのライブ感、生の雰囲気を皆さんに好いてもらっている実感もあるので、だったらパッケージに関してもそこをもっと出してもいいんじゃないかなって。すごく自然な流れで、そうなっていった感じはありました。
──レコーディングはいかがでしたか?
2日間で全部録ったんですけど、やっぱり一発録りなんでね、緊張しまくっちゃって。アルバムでは初めてフルで参加してくださった坂田(学 / Dr)さんや、ずっと一緒にやってくれている斉藤(哲也 / B, Key)さん、石垣(隆太 / G)さんという信頼できる先輩たちに囲まれていたので、ちょっと弱音を吐いてみたり(笑)。でも、そんな私に「歌がメインなんだから思うように歌ってよ。それについていくから」って皆さんおっしゃってくれて。そういうコミュニケーションがしっかり取れたことで、ちょっと肩の荷が下りたところもありました。すごくいい時間でしたね。
自分の声をコントロールする
──レコーディング環境の違いが影響しているんだと思うんですけど、山根さんの歌声もこれまでとはちょっと違った表情が見えていますよね。
確かに違いますよね。私の場合、ライブはたくさんやっているけど、いつもだいたい1人でやっているんですよ。だからバンドで歌うことに実はあまり慣れていなくて。しかも今回は一緒に録るわけだから、周りの音をいかにちゃんと聴くかっていうことを、いつものレコーディング以上に意識したんです。その結果、声や歌い方が自然と変わったところがあるんだと思います。
──サウンドとしっかり融合しつつ、歌声がちゃんと前に立っていますよね。
今までのレコーディングだと、自分の感情が盛り上がると、声のボリュームが自然と上がっちゃうところがあったんですよ。1人でブースに入って歌っているから。でも、今回のようにみんなで一緒に音を出していると、感情が盛り上がったとしても、「あ、今はそういう場面じゃないな」とか、いい意味でちょっと冷静になれる感覚があって。それはつまり、周りの音との融合を考えて、自分の声をコントロールできたということだと思うんですけど。とはいえあまり難しく考えず、ずっと「気持ちいいな」って思いながらのレコーディングでしたけどね。
──今作のご自身の歌声を聴いてみて、改めて発見はありました?
ある意味、聴き慣れない自分の歌だなって思ったりするところはあるんですよ。それくらい今までと違う歌い方をしてると思うので。ちょっと弱々しすぎるんじゃないかなって最初は思うところもありました。でも、周りの方々に「すごくいいよ」って言っていただけたし、自分でも声の表情的な部分を感じながら聴いてみると、最終的にすごく納得できたというか。今までも声の表情に関しては常に意識してきたけど、今回のレコーディングが新しい自分を引き出してくれたところはあったと思いますね。すごく感謝してます。
──歌はもちろんですけど、サウンドに関してもその場のグルーヴでいろいろ変化していくこともありましたか?
そうですね。劇的に歌詞やメロディ、フレーズが変わったわけではないんですけど、跳ねたノリとか音の間とか、そういう部分は確実にデモとは違いますし、演奏ごとに変化はあったと思います。歌もその変化にあわせて表情を変えるし。「こう来たか! じゃ、こう歌おう」っていうことが多々ありましたからね。そういうやり取りもすごく楽しかったです。
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収録曲
- 砂漠のマーメイド
- X-day
- 時のまにまに
- ふたりのとき
- ワイキキ・チェキラ・シェキラ・ビーチ
- てつやの恋人
- 誰よりも
- たぶんね
- オトメコーヒー
- 街角
- あなたとわたしのうた
アルバムリリースツアー「愛と妄想、25歳。」
- 2015年6月26日(金)大阪府 D'STYLE
- 2015年6月27日(土)京都府 京都ROOTER×2
- 2015年6月28日(日)兵庫県 Sound Bar かくれんぼ
- 2015年6月30日(火)島根県 LIVEHOUSE&STUDIO APOLLO
- 2015年7月3日(金)山口県 なべ萬&トム・キャット
- 2015年7月4日(土)山口県 Organ's Melody
- 2015年7月5日(日)島根県 cafe gallery bar Po
- 2015年7月10日(金)島根県 MUSIC BAR WeST
- 2015年7月11日(土)山口県 玉ネギ畑
- 2015年7月12日(日)島根県 Tete De Bavard
- 2015年7月17日(金)東京都 lete
- 2015年7月18日(土)東京都 江古田マーキー
- 2015年7月19日(日)東京都 lown
- 2015年7月20日(月・祝)東京都 Last Waltz by shiosai
- 2015年7月21日(火)千葉県 柏ThumbUp
- 2015年7月24日(金)愛知県 K.D ハポン
- 2015年7月25日(土)岡山県 カフェ・ド萌
- 2015年7月26日(日)島根県 Night&Day 味巣亭
- 2015年7月29日(水)岡山県 城下公会堂
- 2015年7月30日(木)香川県 RUFFHOUSE
- 2015年8月1日(土)広島県 楽座
- 2015年8月2日(日)兵庫県 LIVESHOT BLANTON/BLANTON
- 2015年8月8日(土)東京都 lown
- 2015年8月9日(日)東京都 lown
山根万理奈(ヤマネマリナ)
島根県出身のシンガーソングライター。2009年よりYouTubeでカバー曲やオリジナルの弾き語り映像を公開し、透明感あふれる声やおっとりしたキャラクターが注目を集める。その存在が現在所属する事務所スタッフの目に留まり、2011年6月に山音まー名義でニコニコ動画で人気を博している楽曲をカバーしたミニアルバム「人のオンガクを笑うな!」をリリースし、同年7月にワーナーミュージック・ジャパンからシングル「ジャンヌダルク」でメジャーデビューした。同年11月にカバーアルバム「ざっくばらん」で、自身のルーツとも言える名曲の数々を弾き語りで披露。2012年1月に「STAR e.p.」、3月に「スタートライン」という2枚のシングルを発表したのち、4月に1stフルアルバム「空な色」をリリースする。その後ワーナーを離れ、2013年5月にインディーズレーベルより「好きで悩んでるわけじゃない」を、2014年にはクラウドファンディングサイトにてファンから募った資金をもとに制作したアルバム「歌ってhappy!」をリリースする。2015年6月にニューアルバム「愛と妄想、25歳。」を発表。年間100本を超えるライブを通じて着実にファンを獲得している。