音楽ナタリー Power Push - 山本陽介×玉置成実
「コンレボ」がつないだ2人の新たな挑戦
山本陽介 feat. 玉置成実名義のシングル「ALL-WAYS」が、5月25日にリリースされる。
シングルの表題曲「ALL-WAYS」は、現在オンエア中のテレビアニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~THE LAST SONG」のエンディングテーマ。山本は昨年10~12月に放送されていたアニメ第1期にエンディングテーマとしてインスト曲「The Beginning」を提供しており、今回は同じく「コンレボ」のエンディングテーマとしてゲストボーカリストに玉置を迎えて「ALL-WAYS」を書き下ろした。
音楽ナタリーでは山本と玉置の両名にインタビューを実施。4月に神奈川・神奈川県民ホールで行われたライブイベント「『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』神化超人フェス」の感想のほか、「ALL-WAYS」や同アニメのオープニングテーマを手がけるZAQ作詞のカップリング曲「THE LAST SONG」の制作裏話などを語ってもらった。
取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 上山陽介
“コンレボ新人”にも優しいイベント
──アニメ放送開始前に掲載された音楽ナタリーでの特集で、監督の水島精二さんが、「半ば妄想ですが」と前置きしつつ「すごいラインナップのフェスができそう」とおっしゃってたんです(参照:「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」特集 水島精二×川本真琴×ZAQ鼎談)。それがつい先日「『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』神化超人フェス」として実現しました(参照:川本真琴&ZAQの言葉が現実に!「コンレボ」神化超人フェス、盛況のうちに幕)。お二人はイベントに出演してみていかがでしたか?
山本陽介 すごく楽しいイベントでしたね。各話ごとに異なる挿入歌を入れていることもあって、「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~THE LAST SONG」がものすごく音楽に力を入れているアニメだということは視聴者の方々に伝わっていたと思うんですけど、アニメの世界を飛び出して実際に演奏して音楽を届けることができたのはものすごく意義深くて。普段はご一緒しないような日高央さんや石田ショーキチさんといったアーティストの方と共演できたこともうれしかったですし、いろんな音楽や人の縁を「コンレボ」というアニメがつないだんだってことを改めて認識した1日でした。
玉置成実 私はアニメの第2期から参加させていただいた“コンレボ新人”だからものすごく緊張しました。しかも「ALL-WAYS」はまだエンディングサイズしか放送されてなくて、フルで聴いてもらうのは初めてだったんですよ。初めてフルで聴くにも関わらず、お客さんがサイリウムをちゃんと曲に合わせて振ってくださって、とてもうれしかったですね。
山本 勘がいいんですよね、彼らは(笑)。
玉置 そうそう! アニメの第1期が終わって、第2期が始まったばかりのタイミングだったこともあって、私も「コンレボ」のことを勉強しながら参加させてもらった感じなんですけど、コンレボ新人の私にも優しいイベントだったのでホッとしました。
──山本さんはバックバンドの一員としてもイベントに参加していたんですよね。「コンレボ」を彩るさまざまな曲を奏でた感想はいかがでしたか?
山本 ものすごく気持ちよかったですね。普通のライブって曲がけっこう続くことが多いですから、ギターを持ち替える機会が限られるんですよ。だから「この曲はこのギターで弾きたい」っていうのがなかなか実現できないんですけど、今回のイベントは演奏前に朗読劇やムービーが入る構成だったので、すべての曲で自分が弾きたいギターに持ち替えられたんです。ギタリストとして曲ごとに弾きたいギターを思いっきり弾ける機会ってなかなかないので。
──特に印象に残った楽曲は何かありますか?
山本 石田ショーキチさんとの「Time Slipper」ですね。この曲のためにvoxのアンプとリッケンバッカーを用意していたんです。この曲ではショーキチさんから「コーラスはバンドメンバーに生でやってもらいたい」というお願いがありまして。リハのときにバンドメンバーでコーラスを合わせる機会があったんですけど、ショーキチさんがマイクの細かいバランスにまでこだわっていたのを目の当たりにしたんです。本当に本番は素晴らしいステージでしたし、いろんな方々からいい刺激をたくさんもらいましたね。
インスト曲で“苦味”を表現
──少しさかのぼってお話を伺えればと思うのですが、もともと山本さんは「コンレボ」の第1期にエンディングテーマとしてインスト曲「The Beginning」を提供していました。この曲についてアニメサイドからはどのようなオーダーがあったのですか?
山本 「The Beginning」を作るとき、スタッフから「アニメのエンディングまで観終わっても、視聴者をスッキリさせたくないんです」って言われて。
玉置 へー!
山本 「シナリオが必ずしもハッピーエンドで終わるわけではないので、苦味みたいなものを持たせたい」って感じの話をいただいたんです。言葉ではわかるんですけど、それを音楽で表現するのはけっこう大変で。「苦味って言われてもなあ!」みたいな(笑)。
──山本さんはアニメが表現する“苦味”をどういうものだと解釈したんですか?
山本 シナリオを読ませていただいて、アニメで描かれている「正義」というテーマについて考えたんです。人から「ヒーロー」と呼ばれていても、その人物は自分自身のことをヒーローであると思っていないというギャップとか。登場人物それぞれに強い気持ちがあって正義と正義が対立したとき、果たしてどちらが正しいんだろうかとか、いろいろ考えて。正義感の強さみたいなものは旋律の強さで表現して、苦味の部分は怪しげなコード進行を使うことで表現できないかなと思ったんです。
──インスト曲ですから歌詞に頼ることができないわけですし。
山本 そうそう。インスト曲がアニメのエンディングテーマになること自体が珍しいから、知人からの反応が面白かったですね。最初にエンディングテーマの担当アーティストとして僕の名前が発表されたときに「歌うのか?」って聞かれたりして(笑)。だからアニメが放送されるまでけっこうドキドキしてたんですよ。インスト曲が流れてどういうふうに受け入れられるのか。
玉置 そういう、人をドキドキさせるのって超いいと思います。「The Beginning」は曲もカッコいいし、最高じゃないですか。
山本 カッコよかったでしょ? どういう反応があるかはわからなかったけど、自分がやるべきことはやったつもりだし、当然楽曲に対しても自信があったから。でも中には「歌が出てこないままエンディングが終わった」なんて声もあって。まあそれはそれで面白かったんですけど(笑)。
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- 山本陽介 feat. 玉置成実 ニューシングル「ALL-WAYS」2016年5月25日発売 / Lantis
- アーティスト盤[CD+DVD] 1944円 / LACM-14486
- アニメ盤[CD] 1296円 / LACM-14487
CD収録曲
- ALL-WAYS
- THE LAST SONG
- ALL-WAYS(INSTRUMENTAL)
- I'll do my best(INSTRUMENTAL)
アーティスト盤DVD収録内容
- 「ALL-WAYS」Music Clip
山本陽介(ヤマモトヨウスケ)
ギタリスト。The Beatles、The Rolling Stones、ギルバート・オサリバン、ビリー・ジョエルといったアーティストに影響を受け、自身の音楽観を築く。バンド活動を通してギター、ベース、ドラムなど多様な楽器の経験を積み、現在はギタリストとしてさまざまなアーティストのライブサポートやレコーディングなどに参加している。2015年10月に放送がスタートしたテレビアニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」にエンディングテーマとしてインストゥルメンタルナンバー「The Beginning」を提供。2016年5月には、同アニメのエンディングテーマとして書き下ろした新曲「ALL-WAYS」を山本陽介 feat. 玉置成実名義でシングルリリースする。
玉置成実(タマキナミ)
1988年生まれ、和歌山出身の女性シンガー。2001年から2002年にかけて開催された「Sony Music Audition」に合格し、2003年4月にシングル「Believe」で歌手デビューを果たす。同曲はテレビアニメ「機動戦士ガンダムSEED」のオープニングテーマに起用され、20万枚を超えるヒットを記録。2ndシングル「Realize」も同アニメのオープニングテーマとなり、一躍スターダムを駆け上った。2004年3月には第18回日本ゴールドディスク大賞でニュー・アーティスト・オブ・ザ・イヤーを受賞。2007年に高校を卒業してからは、歌手以外にもミュージカルにも挑戦している。2011年にはアジア4都市を回るツアーを開催したほか、日中国交正常化四十周年記念舞台「ジンギスカン」に出演した。2013年4月デビュー10周年記念シングル「REAL」を発表。2015年5月には山本陽介 feat. 玉置成実名義でニューシングル「ALL-WAYS」をリリースする。