音楽ナタリー Power Push - 成瀬英樹×山崎あおい
「Yamaha Music Audition」特集 Vol. 3
作曲にまつわる喜怒哀楽
ハードルを超えた瞬間の喜び
──では作曲のだいご味ってどこにあるんでしょう。
成瀬 転調がうまくいったときとか?
山崎 あはは(笑)。私の場合はいつも頭の中で曲のイメージを練って、ギターと簡単なリズムを入れたデモを作るんですけど。それをスタジオで各楽器のプロの方たちが演奏してくれたときですかね。最初に頭の中で鳴っていたイメージが目の前で再現されたときに、その一瞬だけは「天才だ!」って思えます(笑)。
成瀬 わかるなあ。ありきたりだけど、自分が気に入る曲ができるってすっごくうれしいよね。なんなら自分の曲しか聴かなくなる時期もあります。あとはやっぱり、自分の中のハードルを超えられると気持ちいい。
──ハードルを超える超えないって、はっきりとわかるものなんですか?
成瀬 それが一概には言えなくて、僕の中では作曲の経験ってミルフィーユみたいに「超えた、超えない」の層が重なっているんです。最初にいいと思ったものでも「歌入れしたらパッとしないな」とか、逆にCDになってみてやっといい曲だと思えることもあって。だからとにかく作って、完成させてみるしかないんですよね。
──なるほど。作曲をする人にしかわからない喜びは大きそうですね。
山崎 でも私は曲を書いていなければ、もうちょっとハッピーな人間だったんじゃないかって思うこともあります。
成瀬 そうなの?(笑)
山崎 昔から切ない曲とか歌詞が大好きで、実際デビューしてからやってきた音楽もそういうテイストのものが多くて。もう、何をしていても思考が「ちょっと切ない」みたいな(笑)。すごい幸せな出来事があっても、どこかでそれを俯瞰して「こんな幸せな日々もあったんだ」って気持ちになってしまうんですよね。
──それによって名曲が生まれるわけですから、よし悪しですね(笑)。山崎さんは高校生のときに受けたオーディションがきっかけでデビューされたんですよね。当時審査される側だったときの気持ちって覚えていますか?
山崎 実は私、オーディション審査で立ったZepp Sapporoが人生初ライブだったんです。
──初ライブがZepp Sapporoって、なかなかない体験ですよね。
山崎 当時はさっき話した通り、オリジナル曲を書いてるなんて誰にも言っていなくて。初ライブをすることになって、初めて親に「歌手になりたくて曲を書いています。ライブに来てください」って言いました。その一歩がなかったら本当に何もできていなかったと思うので、精神的にとても大きい踏ん切りになったかなと思います。
成瀬 ご両親はなんて?
山崎 「何を歌うの? 自分で書いてるの?」って。ライブ後にはダメ出しされましたけどね。「あそこはカ行が多い」とか。「とがって聞こえるからよくないわよ」みたいな(笑)。
成瀬 マニアックやな(笑)。
ゴツゴツしていても迫力ある作品を
──「“誰でもできちゃう”作曲コンテスト」の応募作品には「春の○○」という歌唱テーマが設けられています。山崎さんがイメージする春ソングってどんなものでしょうか?
山崎 春ってJ-POPでよく歌われる「出会い」も「別れ」も一番凝縮されている季節だと思うので、なんでもアリですよね。春っぽいコード進行を意識するのもいいし、あえて外すのもアリだと思います。
成瀬 でも、あおいちゃんが歌うってことは大いなる縛りだよね。
山崎 そうですね、ラップとかはできないので(笑)。
──では審査員は、ずばり応募作品のどこを見ているのでしょう。
成瀬 「この人はこの歌で何が言いたいんだろう」ということがはっきりわかるのが一番だと思います。逆にそれがわかりづらいと、審査員の目に引っかかりにくいのかもしれない。ポップスって3分か4分の間に「こういう歌です」って伝わるものだと思うので。うまく詞が書けなくてもいいので、ひと言で言い切ることかな。僕自身も、いまだにそういうものが書けるといいなと思って試行錯誤しています。
──最後に、お二人からオーディション参加者にメッセージをお願いします。
成瀬 鼻歌でも参加できるので、気軽に応募してほしいなと。うまくまとめようとせずに、多少ゴツゴツしていても思いっきりやって迫力のあるものを作ってほしいですね。
山崎 応募作品を歌わせていただくということで恐縮していますが、すごく楽しみです。私が歌うことで、楽曲をよりよい作品にできるようがんばります!
- 「Yamaha Music Audition」
- ヤマハミュージックパブリッシングが主催する多角型音楽オーディション。北海道在住者を対象とした「AREA CIRCUIT AUDITION in 北海道」といった地域を限定したオーディションや、歌モノのオリジナル楽曲を制作するソングライターを探す「The Songwriter STAR」といったオーディションなど、さまざまな切り口の音源募集を随時行っている。
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山崎あおい(ヤマザキアオイ)
1993年生まれ、北海道出身のシンガーソングライター。高校在学中にYAMAHA主催のコンテスト「The 3rd Music Revolution JAPAN FINAL」に出場し、グランプリと特別審査員賞を受賞。これをきっかけに自作曲が地元札幌を中心に企業CMやTV番組主題歌などに使われるなど注目を集め、2012年8月メジャーデビュー。透明感のあるピュアな歌声と、リアリティをもったセンチメンタルな歌詞が同世代をはじめ、幅広い層の男女に支持を受けている。
成瀬英樹(ナルセヒデキ)
1992年にバンドFOUR TRIPSを結成。ボーカル&ギターとして関西を拠点に積極的なライブ活動を行う。1997年にTBS系ドラマ「友達の恋人」の主題歌「WONDER」でメジャーデビュー。10万枚を超えるヒットとなる。その後アルバム1枚とシングル5枚を発表しバンドは解散。現在は作家としてAKB48「君はメロディー」「BINGO!」、前田敦子「タイムマシンなんていらない」「君は僕だ」などを手がける傍ら、シンガーソングライターとしてライブ活動も行っている。