ナタリー PowerPush - YALLA FAMILY×Kj(Dragon Ash)
盟友同士が語り合う「音楽を続けること」
日本と異国の混血児同士がLAで結成したヒップホップユニット、YALLA FAMILY。Dragon Ashのニューアルバム「THE FACES」の収録曲「Still Goin' On feat. 50caliber, Haku the Anubiz, WEZ from YALLA FAMILY」に3MCが客演としてフィーチャーされたのに続き、同日にリリースされるYALLA FAMILYの1stアルバム「BEGINNING」にはKjが参加した「Place to be feat. Kj」が収録される。今回ナタリーではKjとYALLA FAMILYのインタビューを実施。2年前にプライベートの場で出会ったという2組がどのように親交を深め、今回のコラボレーションに至ったのか。ざっくばらんに語り合ってもらった。
取材・文 / 三宅正一(ONBU) 撮影 / 佐藤類
僕らの世代にとってはDragon Ashがニュータイプ
──まずはKjとYALLA FAMILYの出会いから聞かせてください。
Kj こいつらのレーベルのスタッフが俺と昔から仲がよくて。そいつからメンバー個々に紹介してもらった感じかな。普段の遊び場が似たり寄ったりなんで、そこからいっぱい会うようになって。50(caliber)は同い年で、こいつが前にやってたグループはKREVAくんと同期くらいで。それでRIP SLYMEとも昔から知り合いだったんだよね。だから、クラブとかで俺が誰かを紹介したら実は前からつながっていたみたいなこともザラにあって。
──FG(FUNKY GRAMMAR UNIT。RHYMESTER、KICK THE CAN CREW、RIP SLYMEなどが所属するヒップホップクルー)周辺ともつながりがあって?
50caliber(MC) そうですね。一緒にイベントをやらせてもらったりしてました。もう16年前くらいの話で、そのときにやっていたグループのメンバーはみんな音楽を辞めちゃったんですけど。
──KjはYALLAのメンバーと交流するようになってどういう印象をもったんですか?
Kj 50は同い年だし、(DJ)I.Oも1コ下だから感覚がわかるんだけど、HakuとWEZは俺からするとだいぶニュータイプで。
──どういうところが?
Kj ハナからジャンルの垣根がない世代だから。Hakuは前にベースを弾いていて、Dragon Ashのカバーもやってたらしいのね。高校から単身渡米してアメリカンスクールに行ったらしいんだけど。そこから自然とラップに流れてみたいな。
Haku the Anubiz(MC) 中学のときに同級生と組んだバンドで学園祭に出てDragon Ashのコピーとかしてましたね。馬場さん(IKUZONE)の教則ビデオを買って練習してました(笑)。
Kj 出してたよねー(笑)。俺は、音楽はカッコいいかカッコ悪いかしかない、そこに年齢は関係ないと思っていて。キャリアは関係あると思ってるけど。でも、この2人はニュータイプだと思った。音楽の掘り方が違うというか。話してると、「そんなとこは深く知ってるのに、そこは知らねえんだ!」みたいなことが多々あって。YouTube世代っていう感じだよね。あとは、明らかに筋がいい。音楽の筋肉と骨格が違うなって。すでにミュージシャンに向いてるところからスタートしてるみたいな感じは俺らの世代よりあると思う。
Haku the Anubiz そこは自覚してないところなんですけどね。ホントにそのときどきで自分の好きな流れで音楽を聴いてきたので。中学時代はDragon AshやRIP SLYMEを聴いて、高校でアメリカに行ってからはどっぷり向こうのヒップホップにハマって。まったく日本の音楽を聴かなくなったんですよね。周りが全員ヒップホップの人ばっかりだったんで。高校の友達とは英語でフリースタイルばっかりやってました。
50caliber ニュータイプという話でいえば、僕らの世代にとってはDragon Ashがニュータイプでしたよね。若い頃から誰もやってない前人未到のことを成し遂げていったわけじゃないですか。当時も僕は音楽をやってましたけど、アンダーグラウンドな場所にいたので。でも、周りの友達はDragon Ashを聴いて刺激を受けてるわけですよ。まさに僕らの世代のスターだったので。当時、渋谷でマスタングに乗っているKjに睨まれたことがあったんですけど。厳密に言えばあれが最初の出会いでしたね(笑)。
Kj 絶対嘘だよ、それ(笑)。
50caliber ホント、ホント(笑)。「これがスターか!」と思いましたね。
クロスオーバーな交流ができるならお互いプラスになる
──KjはYALLA のバックグラウンドにシンパシーを覚える部分もあったんですか?
Kj いや、そういう感じはなくて。グループとしては出会いもライトだし、シンパシーの部分でいったらほかのロックバンドに対してのほうがあるよ。でも、こいつらはとにかく才能があるんだとね。表現力、リズム感とか音楽的な部分もそうだし、コミュニケーションの能力においてもそう。ものを考える力もあるしね。俺は16歳のときから同じエンジニアさんとやっていて、これまでやってきたフィーチャリングものとかも全部その人は知ってるのね。その人がこいつらのことを「だいぶ筋がいいね」って言うくらいだからよっぽどだと思うんだよね。だからこそ、こいつらの現状に対してもったいないなと思うこともあるし、Dragon Ashとクロスオーバーな交流ができるなら、こいつらにも俺たちにもプラスになると思って、今回一緒にやったんだけど。
──つまり、フックアップという意識ではないと。
Kj うん、フックアップという意識は全然ない。
──これまでいろんなアーティストと音楽的な交流を実現させてきましたけど、Kjがコラボレーションしたいと思うアーティストの基準って何かあるんですか?
Kj うーん、明確に設けてるわけではないけど、俺はやっぱりファミリービジネスが好きなんだよね。公私ともに気が合うという前提で交流して、そこからお互いが足りない部分を補っていく流れが好きで。あとは今思ってることは、俺はけっこう芸歴も長いし、上の世代も下の世代も知り合いが多いから、そこを現場でつなげていくことをやっていきたいなっていう。TAKUMA(10-FEET)と(横山)健くんをつなげたのも俺だったりするし。
──それは僕もDragon Ashのニューアルバムを聴いて思ったことで。バンドの立ち位置的にも音楽的にも脂が乗り切ってるなって。ちょっと話は逸れるけど、今だからこそTMC(Total Music Communication。かつてDragon Ashが主催していたジャンルレスなアーティストをブッキングする対バンイベント)をそろそろ復活させてもいいんじゃないかって思うんだけど。
Kj いや、実は去年(2013年)やろうと思ったんだよ。サク(桜井誠)が言い出したのかな。でもTMCってネーミングでやってるんだから、それなりのことはやらないと意味がないわけで。当時はあまり知られてなかったRIP SLYMEとかLISAがいた頃のm-floとか山嵐とかをブッキングしていた時代と音楽シーンの状況が違うじゃん。細分化もしているし。それで新たにやるなら海外のバンドを呼ぼうってなったんだけど、ギャラを調べたら驚愕の金額で「うん、やめよう」って(笑)。
──やってほしいけどなあ。
Kj あとはフェスも飽和してるから、ジャンルレスな音楽に出合う環境はいっぱいあるわけで。
──でも、既存のフェスとは差別化はできるでしょう。
Kj できるけど、バランスが難しいよね。入れ墨だらけのバンドのあとにターンテーブルとMCのヒップホップグループが出てくるイベントって当時はフレッシュだったけど、今はそれも当たり前になってるからね。そこをいかに独自のカルチャーにしてマスを動かせるかっていう問題があるから。俺はプロのミュージシャンであることに誇りをもってやってるから、自己満足になるのは絶対ヤなんだよね。
- YALLA FAMILLY ニューアルバム「BEGINNING」 / 2014年1月15日発売 / 1480円 / Unity-ltd. / UNY-1001
- YALLA FAMILLY ニューアルバム「BEGINNING」
収録曲
- intro
- Beginning (Japanese ver.)
- Atsumare
- Mottox
- Silent World
- Crazy Party feat. FINGAZZ
- skit ~Welcome to YALLA PARTY~
- Happy Birthday
- Slow Down feat. LUNA
- Place to be feat. Kj (Dragon Ash)
- Kadode feat. JiLL YAMAMOTO
- Remember
- outro ~JiNIOUS Jam~
- Beginning (English ver.)
- Dragon Ash ニューアルバム「THE FACES」 / 2014年1月15日発売 / MOB SQUAD/Victor Entertainment
- Dragon Ash ニューアルバム「THE FACES」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3570円 / VIZL-621
- 通常盤 [CD] / 2940円 / VICL-64098
CD収録曲
- Introduction
- The Show Must Go On
- Trigger
- Run to the Sun
- Neverland
- Today's the Day
- Here I Am
- Blow Your Mind
- Still Goin' On feat.50Caliber,Haku the Anubiz,WEZ from YALLA FAMILY
- Golden Life
- Walk with Dreams
- The Live feat.KenKen
- Lily
- Curtain Call
初回限定盤DVD収録内容
- THE SHOW MUST GO ON(スペシャルビデオ)
- Lily(ミュージック・ビデオ)
- Here I Am(ミュージック・ビデオ)
- Trigger(ミュージック・ビデオ)
- Run to the Sun(ミュージック・ビデオ)
- Walk with Dreams(ミュージック・ビデオ)
YALLA FAMILY(やらふぁみりー)
ガーナ、韓国、中国、日本の混血児による、音楽とファッションを融合させたエンタテインメントグループ。メンバーは50caliber(MC)、Haku the Anubiz(MC)、WEZ(MC)、DJ I.O(DJ)。LAで同じ音楽性、似ている感性、異なる個性を持った4人が出会い、2007年にグループを結成。同時に共同生活を始め、トーランス、ハリウッド、ダウンタウンを中心に音楽活動を行う。2008年にはA.I.のLA凱旋公演のオープニングアクトに抜擢されたほか、FINGAZZのコンピレーションアルバム「NEXUS」のメインアーティストに起用。その後、個々の可能性を高めるためソロ活動に徹し、2011年1月には日本で活動を再開させる。DIX AZABUを本拠地とし、レギュラーイベント「YALLA PARTY」をオーガナイズしながら、日本各地でライブ活動を展開。2014年1月に1stフルアルバム「BEGINNING」をリリースした。
Dragon Ash(どらごんあっしゅ)
Kj(Vo, G)、桜井誠(Dr)、IKUZONE(B)の3人で結成されたミクスチャーロックバンド。1997年2月にミニアルバム「The day dragged on」でメジャーデビューを果たす。1999年に発表したシングル「Let yourself go, Let myself go」が大ヒットを記録し、一躍有名に。2002年にはシングル「Fantasista」がサッカーワールドカップのFIFA公式テーマソングのひとつに抜擢された。その後もオルタナティブロックやヒップホップ、ラテンなどさまざまなジャンルを取り入れたミクスチャーサウンドで独自の活動を続けるが、2012年4月にIKUZONEが急逝。以降はKj、桜井、BOTS(DJ)、HIROKI(G)、DRI-V(Dancer)、ATSUSHI(Dancer)の6人にサポートベーシストを加えた編成で活動している。2014年1月に3年ぶりのオリジナルアルバム「THE FACES」をリリース。同年5月31日にはキャリア初となる日本武道館ワンマンライブが控えている。なおKjをはじめとするメンバーは、それぞれソロやユニットとして多方面で活動中。