音楽ナタリー Power Push - 矢井田瞳
音楽の本当の楽しさはライブにある
痛恨のミスもノーカットで
──今回の作品はライブ全編がノーカットで収録されています。
はい。5年前の私だったら、自分が失敗した部分とかをどうにかカットできないかって考えてたと思うんですよ。でも今回はそんな自分との闘いに勝ちました(笑)。
──すべてひっくるめて観てほしいと思えるライブだったということなんでしょう。
そうですね。今回は映像チームとの関係もすごくよかったし、これはもう1コマも切らずにノーカットで収録することが、あの日のライブの空気感を伝えるには一番手っ取り早い方法なんじゃないかなって思ったんです。
──映像を実際ご覧になってみて何か感じることはありましたか?
自分のライブを実際に客席から観ることはできないので、お客さん越しに観るステージとか、そこで生まれる一体感とか、そういうものを感じられるのは映像作品ならではだなって思いましたね。すごく胸を突き動かすものがありました。あとはバンドメンバーたちの表情。ステージ上の私はずっと客席を見ているので、「あ、(ベースの)FIREさんってこんな表情でサビを弾いてたんだ」「ドラムのまーくん(水野雅昭)はフィルのときにこんなに笑顔だったんだな」とかそういう発見もあって。観てくださる方々にも、そういったバンドメンバーの仕草を楽しんでいただけたらいいなって思いますね。
──バンドメンバーの皆さんも本当に楽しそうに演奏してました。
ね! 一緒にツアーを回っていく中で、例えば私が曲の入りを間違えたときに言葉を交わさずとも崩れずにライブを続けることができるような、いい関係になったと思っています。
──ライブBlu-rayには矢井田さん痛恨のミスもノーカットで収録されていますからね(笑)。
そうなんです……でもみんな演奏を止めないで「どこで最初に戻る?」ってみんなが心の中でうかがい合ってるのがすごく素敵だと思いました。
──で、そのあとに矢井田さんから衝撃の一言が飛び出し……。
あははは(笑)。ぜひBlu-rayを観てチェックしてください!
そっくりな女の子にMCを任せたい
──ライブ映像作品でMCもすべて収録されているのは、ファンにとってうれしい要素だと思いました。
MCは相変わらず苦手なんですけどね(笑)。MCだけをしてくれる私にそっくりな女の子が登場してくれないかなとか、事前にMCだけを録音しておいてテープを流したいとか、そんなことばっかり考えてます。
──影武者やテープにMCをまかせてる間、ご自身はどうするんですか(笑)。
水でも飲んで待ってればいいかなって(笑)。そういう姑息なことを考えてしまうくらいMCは苦手なんです。でも自分がいろんな方のライブを観に行ったとき、MCを通してその方のリラックスした表情とかが見えたりするとすごくうれしくなるんですよ。もちろんライブは音楽を聴くものではあるけど、音楽じゃない部分を感じられる瞬間もいいものだなってすごく思うんです。だから自分もそこから逃げてはならないと、ずっと闘い続けてはいるんですけどね。
──MCで話すことは事前に考えておくタイプですか?
なるべく考えるようにはしてます。何も考えずにしゃべると、次の曲を演奏しながら「あれ、もしかしたらさっきの言い方は誤解を招くかもな……」とか考えちゃうことがあるんですよ(笑)。それはあまりよくないなと思うので、言いたいことのポイントだけは事前に考えておくようにしてますね。
変わらない熱量でアルバムをライブで再現
──今作には5月に行われたツアーのライブ音源を収録した特典CDが付属します。このCDでは最新アルバム「TIME CLIP」の全曲をライブバージョンで楽しむことができます。
ライブ映像にライブ音源が付く、すごくライブに特化した作品になりましたね。アルバム「TIME CLIP」の曲、例えば「東京タワーと蟻」なんかはアレンジャーさんと一緒に、打ち込みとバンドサウンドを融合して遊ぼうっていう感じで作っていったんですよ。アウトロには私のリクエストでバイオリンのソロを入れたりもして。そういったアレンジがライブでどう再現されているのか、ライブCDで聴いてもらいたいですね。曲に対するアプローチは違うけど、変わらない熱量で再現できていると思うので。
──アルバム「TIME CLIP」の楽曲のうち、「世界と私の間」「SEKIRARA」「YOUR SONG」「MOON」の4曲はBlu-rayにも映像として収録されていますから、それらをライブCDの音源と聴き比べるのも面白いなと思いました。
あー! その聴き方はまだしてない! 確かにBlu-rayに収録されたライブから、CDに収録されたライブまで半年くらい時間が経ってますからね。同じ曲でもきっと違って聞こえるところはあると思います。そういう楽しみ方もできますね、うん。
次のページ » ライブにこそ本当の音楽の楽しみがある
- ライブBlu-ray「矢井田瞳 LIVE TOUR "15" COMPLETE EDITION -the 15th anniversary-」
- 「矢井田瞳 LIVE TOUR "15" COMPLETE EDITION -the 15th anniversary-」
- [Blu-ray+CD] 2016年12月2日発売 / 6480円 / ヤマハミュージックコミュニケーションズ / YCXW-10011/B
Blu-ray収録内容
- 地下室の渦
- 馬と人参
- 未完成のメロディ
- My Sweet Darlin'
- 世界と私の間
- 明日からの手紙
- 雨と嘘
- B'coz I Love You
- もぎたての憂鬱
- Buzzstyle
- 君こそ道しるべ
- SEKIRARA
- GIRLS MAGIC
- アンダンテ
- Go my way
- 地平線と君と僕
- YOUR SONG
- 一人ジェンガ
- 恋バス
- ネバーランド行き
- MOON
CD収録曲
「All Songs of "TIME CLIP" from Zepp DiverCity 2016.05.02 - LIVE TOUR 2016『TIME CLIP』-」
- machine
- WAVE
- 幸せ呼ぶメロディ
- SEKIRARA
- YOUR SONG
- It's Time
- 東京タワーと蟻
- 世界と私の間
- MOON
- Circle
ライブ情報
矢井田瞳 弾き語りTOUR 16/17 ~ヤイダヒトリ~
- 2016年12月3日(土)東京都 日本橋三井ホール
- 2016年12月11日(日)愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2016年12月18日(日)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
- 2016年12月23日(金・祝)石川県 金沢21世紀美術館シアター21
- 2017年1月8日(日)岡山県 YEBISU YA PRO
- 2017年1月9日(月・祝)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2017年1月14日(土)長崎県 DRUM Be-7
- 2017年1月15日(日)福岡県 Gate's 7
- 2017年1月22日(日)北海道 cube garden
- 2017年1月28日(土)香川県 DIME
- 2017年1月29日(日)愛媛県 松山キティホール
- 2017年2月18日(土)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2017年2月19日(日)福島県 いわき PIT
- 2017年2月25日(土)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2017年3月20日(月・祝)神奈川県 Yokohama O-SITE
- 2017年3月26日(日)大阪府 サンケイホールブリーゼ
矢井田瞳(ヤイダヒトミ)
1978年大阪生まれ。19歳でギターを始め、同時に作曲活動も開始する。デモテープ作りを繰り返す中、2000年5月にシングル「Howling」をインディーズからリリース。同年7月にはシングル「B'coz I Love You」でメジャーデビューを果たす。結婚と産休を経て、2010年に所属事務所をヤマハミュージックアーティストへ移籍し活動を再開。2011年にアルバム「VIVID MOMENTS」を発表した。デビュー15周年を迎えた2015年には、弾き語りツアー「矢井田瞳 弾き語りTOUR2015~ヤイダヒトリ~」や、バンド編成でのツアー「矢井田瞳 LIVE TOUR "15"」を開催。2016年12月には「矢井田瞳 LIVE TOUR "15"」ツアーのうち東京・赤坂BLITZ公演の模様を収めたライブBlu-ray「矢井田瞳 LIVE TOUR "15" COMPLETE EDITION -the 15th anniversary-」をリリースした。