WurtSに影響されて
──カップリング曲の「メタモルフォーゼ」は、気鋭のアーティスト・WurtSさんの提供曲です。エッジの効いたロックチューンですが、こういう楽曲も八木さんに合いますね。
ありがとうございます。自分の曲にはないテイストだったので、うれしかったですね。WurtSさんの曲は以前から好きで。メロディがキャッチーで1回聴くと覚えられるし、ノリもよくて、以前から移動中とかによく聴いてたんです。WurtSさんも私の「君への戦」(2022年7月配信リリース)をインスタのストーリーに上げてくれていて、それがきっけとなりました。
──もともと交流があったんですね。楽曲の制作はどんなふうに進めたんですか?
私が好きなWurtSさんの曲を挙げさせてもらって、「こういう感じの曲がいいです」というお話をさせてもらいました。私は熱帯魚が好きなので、「水の音も入れたいです」とか(笑)。すぐにデモが届いて、その時点ですごくよくて感動しましたね。
──自作曲と提供曲では、歌うときのスタンスに違いはありますか?
提供曲は自分からは出てこない歌詞やメロディがあるので、歌うのは難しいですけど、新しい発見もいろいろあって勉強になります。「メタモルフォーゼ」で言うとサビの歌い方ですね。ああいうパワフルな歌い方はあまりしたことがなかったんですけど、こういう感じもいいなって。
──レコーディングにはASIAN KUNG-FU GENERATIONの山田貴洋さん(B)と伊地知潔さん(Dr)のお二人が参加しています。
アジカンは大好きなバンドで、ライブも観させてもらったんです。レコーディングでは目の前で弾いていただけて、めちゃくちゃカッコよかったし、感動しました。緊張で何も言えず、口を開けて見てました(笑)。
──さらにこの曲では八木さんもギターを弾いています。
せっかくWurtSさんに楽曲提供していただいて、アジカンのお二人にも参加していただくのだから、自分も楽器を弾きたいと思って。曲の制作の段階からWurtSさんやスタッフさんに「ギターを弾きたいです」と伝えました。
──ギターのレコーディング、歌以上にプレッシャーがありそうな……。
そうなんですよ(笑)。でも、エレキギターを弾きながら歌うこともやっていきたいし、今回もがんばりました。
──使ったギターはライブでも弾いていたリッケンバッカーですか?
はい。エレキギターはまだ1本しか持ってないので。リッケンは見た目に惹かれたんですよ。あと、アニメ「フリクリ」に出てくる(ハルハラ・)ハル子がリッケンバッカーのベースを持っていて、その影響もあります(笑)。そう言えばRADWIMPSの「大団円 feat. ZORN」のミュージックビデオで野田洋次郎さんがリッケンバッカーを弾いていて、大興奮しました。一生使います!
──「メタモルフォーゼ」はバースデーライブでも披露されていましたね。
私の中では、「メタモルフォーゼ」を演奏する瞬間がライブの山でしたね。まだまだ満足はできてないですけど、「ここまではやろう」というノルマは達成できたかなって。お客さんも楽しんでくれてたみたいで、ありがたかったです。
──完成した「メタモルフォーゼ」に対して、WurtSさんからリアクションはありました?
直接感想を聞く機会はなかったんですが、ご本人のSNSで「いい曲だなと思ったら、自分で作った曲だ」みたいなコメントをアップしてくれて(笑)。SNSでMVも紹介していただいて、気に入ってもらえてるのかな……と思います。最近、自分で作った曲がちょっと「メタモルフォーゼ」に似ていて。今までにない感じの曲だったので、本当にいい勉強をさせてもらったというか、いい影響を受けているんだなと思いましたね。
メタモルフォーゼする八木海莉
──「メタモルフォーゼ」は「変形」「変身」「転身」という意味ですが、八木さん自身は、メジャーデビュー後の自分の変化についてどう感じていますか?
本当に変わっている最中だなと思いますね。一番大きい変化は、自分からコミュニケーションを取ろうとしていることかな。そう思ったのは3カ月くらい前なんですけど、自分の現状に対して「あまりよくないな」と感じて。自分を変えるとしたらどこだろうなって考えたときに「会話だろうな」と。
──自分のやりたいことや意志を相手にしっかり伝えるということ?
そうです。自分ではやれているつもりだったんだけど、まだできるなと。こちらからしゃべりかけるからには、自分の意見を持っていないといけないじゃないですか。それでしゃべるのが億劫になることもあったんですけど、「どうしたらいいですか?」と聞いても大丈夫なんだなと気付いて。相手を頼ってみようと思えるようになった。
──積極的に会話することで、気付いたことはありますか?
全人類が優しく見えます(笑)。人と話すとき、基本的にマイナスから入ってたんですよ。警戒心というか、「いい人ばっかりじゃないぞ」みたいな感じがあって。でも、最近はそうじゃなくて、ノーマルな状態で人と話せるようになったし「いい人ばかりだな」と(笑)。
──いい傾向ですね。そう言えば、八木さん、「海が乾く頃」(2022年4月リリースのEP「水気を謳う」収録)で「会って話そうよ」という歌詞を書いてますよね。
(笑)。あの曲は、本当に信頼している人に向けて歌っている認識だったんですよ。今はその裾野が広がってるのかもしれないです。例えば曲のアレンジをするときも、以前は「こうしたい」と思っていても、どう伝えたらいいかわからなくて。「プロの人たちがやることが正しいんだろうな」と思っていたところもあったんですけど、気になることがあればとりあえず言うようになりました。私にとっては革命ですね。
──エレキギターを弾くようになったのもいい変化では?
そうですね。ずっとアコギしか弾いてなかったので。エレキに興味を持ったのは、同じ事務所の崎山蒼志くんとお話をしたことがきっかけなんですよ。そのとき「エレキギター、カッコいいな」と感じて。自分が弾いているのを想像したことがなかったんですけど、弾いてみたいなと思ったんです。ギターの知識がまったくなかったので、崎山くんがいろいろ解説してくれて、「楽器屋さんかな?」ってくらいのレベルで教えてくれました(笑)。
──12月には東名阪のワンマンツアー「八木海莉 One-Man Live Tour 2023 - know me...」が開催されます。初めてのツアーですね。
「know me...」は自分の中で大きな存在で。「この曲が作れてよかった」と思っているので、その曲を持ってツアーを回れるのがすごくうれしいです。いろんなライブを経験してきたので、今までで一番いいライブをやりたいですね。
──八木さんにとって「いいライブ」とは?
ライブをやる側としては、準備してきたことをそのままやれたら「いいライブ」だと思うんですよ。でも、お客さんとして観ていて「いいな」と思うのは、生感というか、アーティストが心から楽しんでいるのが伝わってきて、こっちも純粋に楽しめるライブなんですよね。自分もそういうライブをやりたいなと思うようになりました。バースデーライブもそういう意識で臨んだんですが、もっともっとやれると思うので。
──期待してます! ツアーが終わると、もう年末ですね。
早いですね。去年はダダダダダ!と過ぎた感じだったんですけど、今年はじっくり前に進んでいけたのかなって。重い足を運んでました。
──重い足なんですか?
はい(笑)。さっきのコミュニケーションの話もそうですけど、最初の1歩目は重かったです。やろうと思って簡単にできることではなかったし、やっとできるようになってきた感じです。
──楽曲リリースも続いているし、ツアーも決まって。楽しいことも多かったのでは?
そうですね。フジロックにも出られたし、いい思い出ができてよかったなと思います(笑)。
ライブ情報
八木海莉 One-Man Live Tour 2023 - know me... -
- 2023年12月9日(土)大阪府 OSAKA MUSE
- 2023年12月10日(日)愛知県 ell.FITS ALL
- 2023年12月23日(土)東京都 WWW X
プロフィール
八木海莉(ヤギカイリ)
2002年生まれ、広島県出身。アーティストになる夢を追いかけて15歳のときに上京。YouTubeに多数のカバー動画をアップして注目を浴びる。2021年に放送されたテレビアニメ「Vivy -Fluorite Eye's Song-」にて主人公ヴィヴィの歌唱を担当し、その歌声が話題に。同年12月にテレビアニメ「魔法科高校の劣等生 追憶編」の主題歌である「Ripe Aster」をデビュー曲としてリリースした。2022年4月に5曲入りEP「水気を謳う」を発表。9月に初のワンマンライブ「八木海莉 First One-Man Live -19-」を開催した。2023年に入ってからは全国のイベントやフェスに出演。11月にテレビアニメ「アンデッドアンラック」のエンディングテーマ「know me...」を含む同名シングルをリリースした。12月には初のワンマンツアー「八木海莉 One-Man Live Tour 2023 - know me... -」を行う。