「XIIXとは何か?」に正面から向き合った渾身のセルフタイトル作を全曲解説

XIIXが3rdアルバム「XIIX」をリリースした。

前作「USELESS」以来およそ2年半ぶりのアルバムとなる本作には、アニメ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」エンディング主題歌の「アカシ」、「まばたきの途中 feat. 橋本愛」「スプレー feat. SKY-HI&谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)」などのシングル曲に加え、さらに自由度と多様性を増した新曲を収録。斎藤宏介(Vo, G)が「これまでの区切りを付けられたアルバム。この先はもっと楽しくなると思ってます」と語る本作について、斎藤と須藤優(B)に話を聞いた。

取材・文 / 森朋之

「XIIXとは何か?」を時間をかけて積み重ねたかった

──2年半ぶりとなるアルバム「XIIX」が完成しました。

斎藤宏介(Vo, G) すっきり感がハンパないですね(笑)。思っていた以上に時間がかかりましたがそれがようやく、ちゃんと満足いく形になったので……一番気持ちの中を占めているのは“すっきりした”ですね。

須藤優(B) うん。2ndアルバムの「USELESS」を出してから制作期間をしっかり取っていた分、向き合う時間がすごく長くてゴールがなかなか見えない時期もあったんですよね。こうやって完成してやっとひと段落というか、ホッとしました。

──前作「USELESS」をリリースした時点で、次のアルバムに向けたビジョンは既にあったんですか?

斎藤 まず「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」のタイアップのお話をいただいて「アカシ」という曲を作って。この曲がカギになるだろうなということだけはわかっていたんですけど、そもそも僕がXIIXを始めたときに考えていたことがあったんです。長く続けているバンドがすでにありながら、ほかに新しいことを始めたら、リスナーの視点からは「もともとのバンドのファンに向けた、さらに小さいもの」「気晴らしやストレスのはけ口」みたいなものに見えかねないなって。僕自身はそうは考えてなくて、心からいいものを作るのはもちろん、どう聴いてもらえるか?というところまで意識した音楽を作りたい、広めていきたいという思いが核にありました。ただ、そのことを説明するには時間がかかるだろうなという気持ちもあって。そのためにはアルバム3枚ぐらいかかるんだろうなと。

須藤 うん。

斎藤 とは言え、自分がやるのは「純粋にいい音楽を作る」ということだけなんですけどね。例えば「UNISON SQUARE GARDENの自分とは違うことをする」というふうに自分を縛るとクリエイティブにも悪影響が出ると思うし、「XIIXとは何か?」ということを時間をかけて積み重ねていきたくて。実際、1st、2ndとアルバムの制作を重ねていく中で、自分のロマンだけではなくて、すってぃ(須藤)のロマン、スタッフやチーム全体の「XIIXって、こうだよね」というものも血となり肉となってきた感覚があるんですよ。XIIXが勝手に歩いていく瞬間みたいなものを感じる機会も多くて。なので3作目のアルバムに関しては「こうしたい」という自分のビジョンというより、XIIXが呼び込むものを作っていきたいと思ってましたね。すみません、話が長くなっちゃいました(笑)。

──いえいえ、XIIXに対する意識の変化がよくわかりました。斎藤さん自身のやりたいことというより、XIIXが呼び込むものを取り入れたいという話は、すごく興味深いです。

斎藤 そっちのほうが面白いなと思ったんですよね。特にすってぃは音楽的な引き出しが本当に多いし、いろんな音楽に敏感で。僕が「こうしたいんだよね」と押し付けるより、すってぃのアイデアに乗っかって、それを楽しんだほうがXIIXが生きるんじゃないかなって。その感覚はアルバムを作るごとに強くなっているし、今回のアルバムにはそれが一番出ていると思います。

XIIX

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今回のアルバムでようやく自己紹介ができたのかな

──そういうスタンスのほうが、リスナーも楽しんでくれるだろうと?

斎藤 まずは自分たちがやっていて楽しい、こうすれば長く続けられそうということを優先していて、それがリスナーに喜んでもらうための最善策なのかなと思ってます。「いい曲を作ろう」という思いが根底にあって、そこさえブレなければ大丈夫なのかなと。

須藤 宏介が言うように、今回のアルバムでようやく自己紹介ができたのかなと。最初は「これ、いいよね」という感覚だけで走り出して、1枚目、2枚目と作ってきた。でも今回のアルバムの制作は、さらに解き放たれた感じがあったんですよ。ベースという楽器にこだわらなくなったし、プロデューサー的な目線で作る部分も増えて。宏介もギターボーカルというスタイルだけではなく、「スプレー」ではハンドマイクで歌ったりして、それも新しい扉を開くことにつながると思うし、2人で時間をかけて向き合うことで「こんな扉もあったんだ」と気付くこともありました。2人だけで回った「in the Rough 1」というツアーもそう。最初はどうなるかわからなかったけど、いざやってみると「俺ら、こんなこともできるじゃん」って(笑)。

斎藤 うん。今いろいろ思い出してきたんですけど、「USELESS」のツアーのときに、手応えを感じながらも「あとひと伸びが必要だな」と思ったんですよね。サポートミュージシャンと一緒にステージに上がるときも、前にいる僕ら2人がもっと明確な存在でいないとダメだなと。自分たちの頭の中で鳴っている音に達してないという感覚もあったし、さらにシンプルで、ダイレクトに伝わるスタイルのライブをやりたいと思って、2人だけでツアーをやってみることになったんです。XIIXはちょっと特殊で、ライブをたくさん重ねているわけでもないし、1年中、顔を合わせているわけでもない。その中で共通認識を作って経験を積んでいかないといけないから、「in the Rough 1」を通して「2人でXIIX」という時間をちゃんと経験できたのは大きかったと思います。

須藤 そのあとのバンド編成のツアー(「SANITIY」)はさらに自由にやれた感覚があって。バンドメンバーは素晴らしいミュージシャンばかりだし、しっかりXIIXのマナーに沿ってやってくれて、すごく手応えがありましたね。

──ライブで得た経験値も今回のアルバム「XIIX」にも反映されている?

須藤 そうですね。ライブを通して「この2人でやればXIIXになる」という幹が太くなったというか。今回のアルバムはバラエティに富んでいるけど、しっかり筋が通っているのはそういうことだと思います。

2023年7月26日更新