XIIX「スプレー feat. SKY-HI&谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)」リリース記念座談会|斎藤宏介、須藤優、谷中敦、SKY-HIが語り合うコラボ曲の背景と“大人じゃない大人”たちのフラットな関係性 (3/3)

ライブでやるときのラップはどうする?

谷中 歌詞で言えば、斎藤くんが書いた「大人は大人じゃないと知っても」の1行もすごく響いたんだよね。これ、55歳になった自分が感じてることなんだよ(笑)。「まだまだ、いろんなことができるはずだ」という可能性だったり、大人になり切れない情けなさだったり。それが一緒になって響いてきて、グッと来ました。

斎藤 めちゃくちゃうれしいです。

谷中 スカパラのメンバーもぜんぜん大人じゃないからね。30年以上、ずっと移動教室やってる感じというか(笑)、誰も大人にならないし、関係性も変わらなくて。

SKY-HI いいですね。タイムカプセルだ。

谷中 そうそう。外側はなんとか時代に合わせようとしてるんだけど、中身は変わらないから。それはいい部分でもあるし、課題でもある感じかな。

左からSKY-HI、谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)。

左からSKY-HI、谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)。

SKY-HI 斎藤さんのトップラインもいいですよね。ヒップホップやラップミュージックが日本に定着した頃のテイストが要所要所に感じられるというのかな。僕らが中学、高校の頃って、海外と日本のヒップホップとポップスの境界線がファジーになってきた時期なんですよ。メロディ、リズム、ライムがそろっている音楽の原体験だったし、それもノスタルジックな雰囲気を醸し出しているのかも。

斎藤 確かに高校の頃は最盛期だったよね。

SKY-HI Steady&Co.とかをこの曲を初めて聴いた時に思い出しました。

斎藤 RIP SLYME、KICK THE CAN CREWも流行ってたしね。Dragon Ashもカラオケで歌ってたし、Mummy-Dさん(RHYMESTER)のラップも好きでよく聴いてた。

SKY-HI 斎藤さんにはそういうDNAもあるのかもなって、「スプレー」を聴いて思いました。

須藤 なるほど。ヒップホップはカラオケで歌うくらいだったんですけど、そういう音楽ってベースがキモになっていたり、ループやドラムの音色が大事だったりするじゃないですか。そこは「スプレー」にも生かされてるかもしれないですね。

谷中 そうだよね。斎藤くん、自分でラップをやってみようとは思わなかった?

斎藤 やりたい欲はあったと思うんですけど、それよりもギターボーカルに憧れすぎてて(笑)。まだ先ですけど、「スプレー」をライブでやるときに、SKY-HIのヴァースをどうするか?という話になると思うんですよ。そのとき自分で完コピするという選択肢はまだ捨ててないです(笑)。

谷中 それもスキャンダラスだね。「日高さん」のところは「斎藤さん」に変えるの?

斎藤 あ、そうですね(笑)。「ダチのケイスケ」は「ダチのスッティー」にしようかな。

須藤 (笑)。俺が歌うっていうのはどう?

SKY-HI それ、めっちゃいいですね!

左から斎藤宏介(XIIX)、SKY-HI、須藤優(XIIX)、谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)。

左から斎藤宏介(XIIX)、SKY-HI、須藤優(XIIX)、谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)。

コラボレーションすることでもっと自分がわかる

谷中 コラボレーションって、自分で自分のことを探求するよりも、もっと自分のことがわかるんだよね。「この人と俺の違いはなんだろう?」と考えざるを得ないし、おのずと足りない部分も見えてきて。こっちの手の内を明かさないと面白いものはできないし、丸裸にならなくちゃいけないんですよ。面倒くさいんだけど(笑)、自分の成長につながることがわかると病みつきになるというか、「自分のことも知りたい、相手のことも知りたい」という気持ちが強くなるので。スカパラは外国でライブすることも多いけど、そこで得られる経験と、アーティストを1人呼んでコラボするときの経験はほぼ同じだと思ってます。SKY-HIとやったときも斎藤くんが歌ってくれたときも、一緒に旅しているような感覚だったので。

SKY-HI わかる気がします。僕もアマチュアのときから人とやる機会はめちゃくちゃあって。多いのはラッパー同士なんですけど、コミュニケーションの延長に楽曲を一緒に作るという行為があるんですよね。今、谷中さんがおっしゃったように“他を知る、己を知る”という感覚もあります。特にミュージシャンとしてのマナーが違う人と一緒にやると、お互いに大事にしているところが違うし、自分のやり方のいいところ、悪いところに気付けるので。

斎藤 そうだよね。

SKY-HI ただ、コラボを楽しめるようになったのはこの数年なんですよね。以前は客演やフィーチャリングのたびに「爪跡を残さないと」という気持ちが強かったので。

谷中 「爪跡を残したい」と思うと緊張しちゃうんじゃない? テンションが高くなりすぎるというか。

SKY-HI そうなんですよ。最近は素直にやれてるので、楽しいです。「スプレー」の自分のリリックも「いいなあ」って思うし(笑)。

須藤 最高だよ(笑)。僕は普段、いろんなアーティストのライブやレコーディングに参加させてもらってるんですけど、それぞれが大事にしていることを知って、そのうえで自分の表現を追求できるのは恵まれているなと思います。今回、XIIXとしてお二人をお迎えしたのもかけがえのない経験になりました。お二人ともいい具合に力が抜けていて、すごくフラットだし、“俺が俺が”がないんですよ。そのおかげで「スプレー」に隙間が生まれたし、聴いてくれる人も自分の心情や気持ちを入れることができるんじゃないかなと。

須藤優(XIIX)

須藤優(XIIX)

谷中 いいこと言うなあ。大事だよね、それは。

SKY-HI リスナーが当事者になれるのも、この曲のエモさにつながってるのかも。

須藤 うん。コラボの醍醐味を味わえたし、病みつきになりそうです(笑)。

斎藤 さっきも言いましたけど、「スプレー」は谷中さん、SKY-HIとの関係性ありきで作ったところが大きくて。自分の人生のテーマソングというか、長く愛せる曲になったなと思います。

SKY-HI すごいな、それは。

斎藤 あと、迎える側になったのは初めてだったんですよ。これまでは参加させてもらう立場だったんですけど、ゲストを迎える側になってみて、今までに経験したことがない責任を感じてますね。「スプレー」という曲を聴くべき人に聴いてほしいし、届くべき人にまっすぐ届けないといけないなと。これから、そのことをがんばろうと思ってます。もちろん、曲としては本当に最高なので。

SKY-HI いい曲ですもんね、シンプルに。

谷中 うん、すごくいい曲。俺もずっとリピートしてます。

須藤 うれしいです。お二人にお願いしてよかった。

斎藤 そうだよね。本当にありがとうございました。

左から谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)、須藤優(XIIX)、斎藤宏介(XIIX)、SKY-HI。

左から谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)、須藤優(XIIX)、斎藤宏介(XIIX)、SKY-HI。

ツアー情報

XIIX LIVE TOUR「SANITY」

  • 2022年10月3日(月)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2022年10月10日(月)宮城県 SENDAI GIGS
  • 2022年10月12日(水)大阪府 なんばHatch
  • 2022年10月14日(金)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2022年10月15日(土)福岡県 BEAT STATION
  • 2022年10月20日(木)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

プロフィール

XIIX(テントゥエンティ)

斎藤宏介(Vo, G / UNISON SQUARE GARDEN)と須藤優(B / ex. U&DESIGN)が結成したバンド。2016年、斎藤による自主企画イベント「SK's Session」をきっかけに楽曲制作を開始し、2019年1月より本格的なアルバムレコーディングに入る。2020年1月に初の音源となるアルバム「White White」をリリース、2021年2月に2ndアルバム「USELESS」を発表した。2022年5月からは斎藤と須藤の2人だけでのステージを繰り広げるツアー「in the Rough 1」を開催。7月に「まばたきの途中 feat. 橋本愛」、8月に「スプレー feat. SKY-HI&谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)」と、ゲストアーティストを迎えた新曲を連続リリースした。

東京スカパラダイスオーケストラ(トウキョウスカパラダイスオーケストラ)

NARGO(Tp)、北原雅彦(Tb)、GAMO(Tenor Sax)、谷中敦(Baritone Sax)、沖祐市(Key)、川上つよし(B)、加藤隆志(G)、大森はじめ(Perc)、茂木欣一(Dr)からなるスカバンド。1989年のデビュー以降、インストゥルメンタルバンドとしての確固たる地位を築く中、日本国内に留まることなく世界31カ国での公演を果たし、世界最大級の音楽フェスにも多数出演。2021年8月には「東京2020オリンピック競技大会」の閉会式でライブパフォーマンスを披露した。2022年7月に幾田りらをゲストボーカルに迎えたニューシングル「Free Free Free feat.幾田りら」をリリース。11月からはライブツアー「Traveling Ska JAMboree 2022-2023」を開催する。

SKY-HI(スカイハイ)

ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーとして幅広く活躍するアーティスト。2005年にAAAのメンバーとしてデビューし、同時期からSKY-HIとして東京都内のクラブで活動をスタートさせる。2014年3月には1stアルバム「TRICKSTER」をリリースし、2017年5月には東京・日本武道館で単独公演を開催。また2020年秋には自身のマネジメント / レーベル会社・BMSG(ビーエムエスジー)を設立し、1億円以上を投資してオーディション「THE FIRST」を開催した。このオーディションを経て結成されたボーイズグループ・BE:FIRSTが20221年11月にデビューしている。現在は全国ホールツアー「SKY-HI HALL TOUR 2022 -超・八面六臂-」を開催中。