「おもちゃの街」と「ユースレス・シンフォニー」がアルバムの軸
──そして「Vivid Noise」は、エッジーなギターサウンド、ラップを取り入れたボーカルが共存しています。
斎藤 (歌詞を見て)言葉、多いな。
須藤 多いね(笑)。
斎藤 歌詞では“揺れ”のようなものを書いてみたいなと。この曲も須藤くんが作ったオケが先にあって、危うさみたいなものを感じたんですよね。
須藤 この曲だけ少し毛色が違うかもしれないですね。もともと「誰かとコラボしてみたいね」というところが入り口だったので。
──曲によっていろんなエピソードがありますね。「ZZZZZ」はチルというか、メロウに揺れる曲ですが、最後に爆音のギターが炸裂しています。
須藤 心地よく眠りについたと思ったら、とんでもない夢が襲ってきたっていう(笑)。ひねくれてるから、普通に終わっちゃうのがイヤなんですよ。宏介には「とりあえずギターを重ねて、壁にして」とお願いしました。
斎藤 めっちゃ面白かったです。高校生が弾くようなシンプルなパワーコードで、10回くらいまったく同じフレーズを重ねて。けっこうアホな発想なんですけど(笑)、やったことがないことをやるのは楽しいので。
──「おもちゃの街」は「忘れて欲しくない 僕らがそこにいたこと」というフレーズが心に残りました。
須藤 去年の緊急事態宣言のときに感じたことが出てるかもしれないですね。音楽関係の人は仕事がなくなって、己を見つめ直す時間が増えた。自分はどういう人間なのか、どういう音楽を作って、どういう人たちに聴いてもらって、どんな気持ちになってほしいのか。そういうことを深く考えたし、「おもちゃの街」も聴いてくれる人に寄り添うというか、「この曲を聴いて、少しでも気持ちが軽くなってくれたらな」と思って作っていて。自分の中ではこの曲と「ユースレス・シンフォニー」がアルバムの軸になってますね。
斎藤 「おもちゃの街」は須藤くんのトラックに導かれるように作った曲です。今回のアルバムのテーマを踏まえて、大事なメンバーの須藤くんのオケにしっかり乗っていこうと思って。結果、すごくいいものができたことは、自分にとっても発見でしたね。こういう作り方もアリだなと。
──「ユースレス・シンフォニー」についてはいかがですか?
斎藤 そうですね。トラックを聴いたときに「青春だな」と思って、今の自分の年齢から青春を表現してみようと。若さを費やして積み上げてきたものを“不要不急”と言われた時期だったし、「世の中からいらないと言われてるけど、自分にとってかけがえのないものだよ」って、いつかライブで歌いたいと思ったんですよね。その感じをできるだけまっすぐな言葉で残したいなと。
──2020年を強く反映した曲なんですね。
斎藤 残せてよかったです、ホントに。去年の12月のライブで「おもちゃの街」と「ユースレス・シンフォニー」を披露したんですけど、たまらなかったですね。
須藤 むちゃくちゃよかった。泣きそうでした。
──個人的には「like the rain」も、このアルバムを象徴する楽曲だと思っていて。叙情的なバラードですが、まさに老若男女に響く曲だなと。
斎藤 うちの母もこの曲が好きだって言ってました。
須藤 お母さまが! うれしいな。「like the rain」は自分の中の「これはロックじゃない」という限界ギリギリを突きたかったんです。限りなくJ-POPに寄った曲というか。宏介に“ド”バラードを歌ってほしいという気持ちもあったんだけど、「もしかしたらあんまり気に入らないかもしれないな」とも思っていて。
斎藤 ハハハ(笑)。
須藤 XIIXでこういう曲をやることに意味があると思ったし、J-POPのど真ん中で勝負したかったんですよ。でもやっぱりひねくれてるので、ドラムにはちょっとクセがあったりするんですけど、そこはうまく表現できたのかなと。
──ラブソングとしても聴ける歌詞も、ポップスの王道だなと。
斎藤 そうですね。愛は愛でも、音楽愛みたいなところもあるんですよ、自分の中では。
今回出し切れたからこそ、次はまた違うことを
──アルバムの最後は「Endless Summer」。さわやかなエンディングですね。
須藤 こってりした曲が続いたから、お口直しのデザートみたいな曲がいいかなと(笑)。「Endless Summer」は最後にできた曲なんですよ。どういう終わり方がいいか考えて、急遽作って。
斎藤 アルバムのまとめというわけではないけど、落とし前を付けたいという気持ちがあったんです。「USELESS」というアルバムを作ること自体が挑戦というか、「聴き手にとっての音楽」を心の底から考えながら制作したのは初めてだったし、それを1年間続けてきて「結局、どうだったの?」というか。本当に素晴らしいアルバムを作れたし、歌詞にもありますけど「今を愛せた」と描きたかったんですよね。あと“終わらない季節”感もすごかったじゃないですか、去年は。
──この状況がいつまで続くんだろう?っていう。この曲の冒頭は「終わらない季節は終わろうとしている」ですね。
斎藤 はい。「いつか絶対、今やっていることが報われるはず」と言い聞かせながらやってたので。よかったです、このアルバムができて。あとはもう、とにかくライブをやりたい。ただただ、ライブがしたいです。
須藤 ホントだよね。
──気が早いですが、アルバム「USELESS」を経て、XIIXがどう進化するかも楽しみです。
須藤 もう次のアルバムのイメージはあるんですよ。
斎藤 1曲はすでにレコーディングしたんですけど、今回とはだいぶ違う感じになると思います。この前、須藤くんと話したんですよ。ちょっとドキドキしながら「次はもっと攻めたい」って言ったら、「だよね」って。
須藤「USELESS」で自分の中のポップは追求できたので。
斎藤 そう、今回出し切れたからこそ、次はまた違うことをやりたいんですよね。
ライブ情報
- XIIX LIVE TOUR「USELESS」
-
- 2021年6月1日(火)東京都 昭和女子大学 人見記念講堂
- 2021年6月7日(月)愛知県 DIAMOND HALL
- 2021年6月8日(火)大阪府 なんばHatch