XIIX |斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)×須藤優 盟友コンビで目指す音楽家としての新境地

ロサンゼルスとイギリスでやってるみたいな制作作業

──2人で最初に作った曲はアルバム「White White」にも収録されているんですか?

斎藤 はい。「E△7」という曲ですね。大本のアレンジは今とはだいぶ違うんですけど。

須藤 そのタイミングで「Answer5」「Saturdays」もありましたね。

斎藤 今年の1月に本腰を入れてアルバムを作り始めたんですが、ガムシャラにやってたら曲がどんどんできて。結局「E△7」「Answer5」「Saturdays」以外は全部、今年に入ってから作った曲なんです。

須藤 3年前の「SK's Session」のときに4曲、2年前にも3、4曲、去年も新しい曲を作ったんですが、アルバムに収録したのは最初の3曲だけで、あとはすべて新曲です。

左から須藤優(B)、斎藤宏介(Vo, G)。

斎藤 僕はもともと、曲を作るのが楽しいというタイプではなくて、「ライブのために作る」とか「この日にCDを出したいから」という締め切りがないとなかなかできないんですよ。でも、須藤くんとのキャッチボールは楽しいし、彼は仕事も早いんですよね。高いクオリティのものをすぐに返してくれる人だから、自分が球を持っている時間を長くしたくなくて。そのほうがいいものができるなって気付きました。

──制作のスピード感が大事だと。

斎藤 鮮度が落ちてくると、曲があまりよく聴こえなくなったり、途中で迷ってしまうというか「何を考えて作ってたんだっけ?」みたいになることもあって。そうなる前にバンバンやり取りしたほうがいいことがわかって、量産体制に入ったという。

須藤 作ってるのが好きなんですよ、僕も。「宏介にこういう曲を歌ってほしい」とイメージしながらトラックを作って送るとメロディと歌詞を乗せて戻してくれて、それでまたモチベーションが上がって。1人でやってたら迷う瞬間もあるけど、宏介との制作はすごくスムーズですね。

斎藤 音源のやり取りで制作すれば顔を合わせる必要もないし、お互いにそれぞれの活動がある中で、自分の時間だけを使ってやれるのもいいんですよ。僕は夜型で須藤くんは朝型なんですが、僕が夜中に作業して、それを送ってから寝ると、起きたときには須藤くんからアレンジされたものが戻ってたり。

──海外のクリエイターと作業してるみたいですね(笑)。

斎藤 そうそう。「ロサンゼルスとイギリスでやってるみたい」って言ってました(笑)。

ストライクゾーンのギリギリを狙いたい

──斎藤さんと須藤さんは、音楽の趣味や好きなテイストも似てるんですか?

須藤 重なる部分はかなりあると思います。

斎藤 圧倒的に須藤くんのほうが音楽に詳しいですけどね(笑)。

須藤 いやいや(笑)。僕はけっこう雑食なんですよ。基本的にロックを聴いて育ってきたんですけど、R&Bやヒップホップも好きで。宏介との共通言語としては、例えば「THE 1975の新譜、カッコいいよね」みたいなことだったり。普通にロックをやってもつまらないし、ヒップホップの要素を入れたり、実験的なこともけっこうやってます。普通じゃないこともやりつつ、ポップに落とし込むというか、ストライクゾーンのギリギリを狙いたくて。そのあたりは「あまり語らずとも」という感じなんですけどね。楽曲をやり取りしている中で「これ、いいね」ということも多いし、説明っぽくなるのもイヤなので。トラックを送るときも「こういうイメージで」みたいなことは言わないで、解釈は任せてるんです。それだけ信頼しているし、想像以上のものが返ってくることも多いですからね。

──アルバムを聴くと、現在の海外のシーンとも重なる部分も感じて。トレンドも意識していました?

須藤 けっこう新譜を漁るタイプだし、その中でいいなと思うものもあって。トレンドみたいなものも意図せずとも入ってるかもしれないですね。「これとこれを組み合わせたら面白いな」ということもあるし。

斎藤 ドラム、ベース、ギターのバンドとは違う音作りをしたいという気持ちはあります。日本のバンドは勢いや音圧、音数で空間を埋める方向に進んできて、今はそれがマックスになってる時期だと思っていて。その楽しさも十分わかりつつ、XIIXでは奥行きとか、隙間を楽しみたいなと。その両方ができたほうが、ミュージシャンとして面白いと思うので。

左から須藤優(B)、斎藤宏介(Vo, G)。

──アルバムの収録曲についても聞かせてください。2人のセンス、技術が混ざり合っているのがXIIXの基本スタイルだと思いますが、例えば「Stay Mellow」はどういうプロセスで制作されたんですか?

須藤 トラックを作ったときは、もっとファンクっぽい曲だったんですよ。ギターもジャガジャガ鳴ってたんですが、宏介がモタったラップを乗せてきて「何が起きたんだろう?」と。

斎藤 ラップ好きですからね、もともと。高校生の頃からジャパニーズヒップホップを聴いてたし、それこそ田淵(智也 / UNISON SQUARE GARDEN)と「Mummy-Dがヤバい」みたいな話をしてたので。あと、身近にいるSKY-HIってやつがたまたまラップをやってたり(笑)。

須藤 ラップを入れるのは自分にはない発想で、すごく面白かった。「だったらヒップホップにしたい」と思って、イントロから全部作り直しました。この曲が一番、デモから形が変わりましたね。

斎藤 どの曲にも明確なテーマがあるんですけど、「Stay Mellow」は“変態性”を歌おうと。そのことを考えてたからリズムがちょっとズレたのかも(笑)。

須藤 はははは(笑)。

斎藤 変態性というと誤解されるかもしれないけど、フェチとか偏食とか、そういうのは誰もが持ってるじゃないですか。

──歌詞のテーマは、トラックの雰囲気にインスパイアされて出てくるんですか?

斎藤 それもあるし、須藤くんがトラックに付けてくれた仮タイトルから考えることが多いかな。英単語が1つだったりするんだけど、そこからスタートして。結果として全然違う内容に変えちゃうこともありますけどね。

1時間くらいで作ったり、聴き込んで作ったり

──「LIFE IS MUSIC!!!!!」の場合は? タイトル通りに踊れてポップな曲です。

斎藤 この曲の仮タイトルは「TIME」ですね。

須藤 なんも意味がないね(笑)。トラックを作ったときは、そのときの自分の中のブームを形にしようと思ったのかな? 確か2日くらいでできたんですよね。

斎藤 うん、早かった。レコーディングのときに「こういう曲があったらいいね」と話していてできた曲もあるんですよ。「Fantome」もそれで生まれた曲なんですけど、「チルなやつ」みたいな話をしていて。

須藤 そうだった。すぐにイントロのアコギのリフを思い付いて。

斎藤 「イントロのメロディは口笛っしょ」って(笑)。

須藤 その場のノリですね。わざわざ曲作りのためにスタジオに入ってたらこういう曲はできなかったかも。気が抜けた瞬間にパッと思いつくこともありますからね。

斎藤 「Fantome」なんて、歌詞込みで1時間くらいでワンコーラスできましたから。そういう曲もあれば、トラックをじっくり聴き込みながらメロディと歌詞を乗せることもあって。無心でやってると、自分でもどこに行くかわからないまま歌ってることがあって、それも意外とイケるんですよ。これは特技だなって思いました。

須藤 そうなんだ。

斎藤 何回か歌って一番いいものを選んで。そういう意味では即興に近いところもあるかも。須藤くんのトラックはコードも付いていて、その時点でクオリティが高いんですけど、それもすごくよくて。

須藤 ちゃんと情景が見えるところまでは作り込んでますからね。