XIIX |斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)×須藤優 盟友コンビで目指す音楽家としての新境地

UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介(Vo, G)とベーシストの須藤優による新バンドXIIX(テントゥエンティ)が始動。1月22日に1stアルバム「White White」をリリースする。

十数年前から親交があったという2人は、斎藤の自主企画ライブ「SK's Session」での共演をきっかけに楽曲制作をスタート。斎藤が作詞作曲した楽曲を須藤がアレンジ、または須藤が手がけたトラックに斎藤が歌を乗せるという主に2つの方法で制作を継続してきた。そんな彼らの1stアルバムは、ソングライター、トラックメイカー、プレイヤーとしての2人の個性が存分に発揮された作品となった。

音楽ナタリーではこのアルバム発売を前に斎藤、須藤にインタビューを実施。結成の経緯、楽曲制作のプロセス、XIIXの将来像などについて聞いた。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 中野敬久

“自分の中に生まれてくる音楽”を形にしたかった

──斎藤さん、須藤さんが最初に出会ったのはいつ頃ですか?

須藤優 12年くらい前ですね。僕が当時やっていたバンド(U&DESIGN)とUNISON SQUARE GARDENが交流があって。特別仲がいいわけではないんだけど、年に1回くらい顔を合わせて、少し話をするような関係だったんです。

斎藤宏介 ユニゾンがデビューする前ですね。まずU&DESIGNのボーカルの綾部(健司)さんと知り合って、「ベースがめっちゃうまい人」と須藤くんを紹介してもらいました。

須藤 ユニゾンは今と変わらず、バキバキの楽曲とステージング、圧倒的な熱量を持ったバンドで。

斎藤 確かに熱量はあったかも(笑)。

須藤 僕らのバンドはユルめだったんで。宏介はあれだけのギターを弾きながらスマートに歌っていて、「なんでもできる人だな」という印象でした。見た目もスマートで、王子様だなと(笑)。

──その後、須藤さんはサポートミュージシャン、アレンジャー、プロデューサーとして活動を重ねていきます。斎藤さんはユニゾンの活動を続けてきたわけですが、今回どんな経緯でXIIXを組むことになったんですか?

斎藤宏介(Vo, G)

斎藤 けっこう長い時間をかけて結成に至ったんですよね。僕はずっとユニゾンの活動で、曲を作っているのは自分ではないという中でもギターを弾くこと、歌を歌うこと、ステージに立つということにやりがいを見出して楽しくやってはいたんですけど、同時に音楽家として表現できていない“自分の中に生まれてくる音楽”というものもあって。「これはたぶん、どこかで形にして表に出さなくちゃいけないものだな」という思いは、ユニゾンの活動初期から持っていたんです。バンドの活動に支障をきたさない、リスナーが外から見ても不安にならない、ざっくり言うと迷惑をかけないタイミングでやろうと思っていたんですが、「このままズルズルしてると、たぶんタイミングはずっと来ない」と思い立って。で、3年前に「SK's Session」というツーマンライブ兼セッションライブを始めて、そのときに須藤くんと一緒にやるようになったんです。最初は僕が作った曲を須藤くんにアレンジしてもらって、「SK's Session」の最中に披露する場を設けて。

須藤 曲を聴かせてもらって、すごくいい曲を書くなと思いましたね。新鮮だったし「斎藤宏介の新たな一面をもっと広げたい」という気持ちになりました。

斎藤 そのうち僕が作った曲だけではなくて、須藤くんが作ったトラックに対して、僕が歌詞と曲を乗せることもやり始めたんです。そのキャッチボールの中で新しい曲ができてきて。これだけ付き合ってくれた感謝もあるし、自分たちの音楽に対するワクワクもあって「これは2人でやるべきだな」という結論に至りました。

対等の立場でやるためにバンド形式を選択

──バンドとして活動することに対して、須藤さんはどう感じていたんですか?

須藤優(B)

須藤 1回目の「SK's Session」のときに「来年もやりたい」という話を聞いて、「だったら、例えばこういう曲を歌ったらいいんじゃないかな」というアイデアが浮かんだんですよね。自分の音楽的好奇心が、宏介のギターと曲と歌詞を聴くことで湧き上がってきたし、自分も曲を作りたいなと。そこからトラックを作るようになったんですけど、そのうちに対等の立場でやりたいと思うようになったんです。プロデューサーやアレンジャーという立場だと、一歩下がったところから彼を立てながらやることになるけど、それより一歩進んで「自分はこう思う」と言いながら対等にやりたくて。それで「バンドにしない?」という話を僕からしたんです。

──須藤さんからの提案だったんですね。

須藤 はい。僕ももともとバンドをやっていて、その後はサポートが主になってましたが、またバンドをやりたいという気持ちもあったので。何よりも「この2人でやったら面白いんじゃないか」と思えたのが大きいですね。

斎藤 そう言ってもらったのが3、4年前で。自分としては「ユニゾンとは別の表現の場所を設けるときは、絶対に大成功させなくちゃいけない」と思っていたんですよね。それはユニゾンというバンドに泥を塗らないためでもあるし、別の活動をこじんまりやってしまったら、自分の思いが報われないという気持ちもあって。

──“大成功”というのは、具体的にはどういうことなんですか?

斎藤 うーん……バンドのボーカルがやるソロプロジェクトや別のバンドって、もともとのバンドを超えないという印象があるんですよね。元のバンドのファンの、さらに狭いところを狙ってやるというか。自分が新しいバンドをやるんだったら、さらにデカいところに向けて発信すべきだと思っていたし、その中で学んだり、気付くことがないと、やる意味がないなと。ただ3、4年前は、そういう活動に須藤くんに付き合ってもらうのは申し訳ないなと思ったんです。「ユニゾンとは別の表現をしても、絶対に揺るがない」と言えるほど強いものも、当時の自分にはなかったし。

──そのための準備に3年かかった、と。

斎藤 そうですね。スタッフに「こういうことを考えてます」と口にするようにしたり、自分のイベントを定期的にやることで、ちょっとずつ浸透させて。準備の時間はすごくかかりましたけど、その分いろんなことがしっかり整って、どれだけ全力を注いでもどこにも迷惑がかからない形を作れたと思います。僕の中で新しいバンドをやるというのは、“お試しでやる”とかではなくて、100%の力を注ぐべきことだったんですよ。なんの準備もなくいきなり「やります!」って言っても、ファンは戸惑うだろうし。みんなが気持ちよくいられる状況が必要だったんですよね。

──バンド名のXIIXはお二人で決めたんですか?

斎藤 共作ですね。バンド名が全然決まらなくてドツボにはまって。もうホントに決めなくちゃヤバいという日が10月20日だったんですよ。ネギマ鍋をつつきながら「“テン・トゥエンティ”でよくない?」って。

須藤 レコーディングを終えたあとに話し合って。響きがキャッチーだし、XIIXって表記が面白いから「それいいじゃないか」と。そこはライトな感じでした(笑)。