ナタリー PowerPush - XA-VAT
1stアルバム「艶℃」に漂う奇天烈な混沌に迫る
タイトルは普通じゃない感じ、パッと見て読めない感じに
──アルバムのタイトルはどんなふうに決めたんですか?
えーと、そろそろタイトルがないと困りますって言われて(笑)。考えたのは年末くらいかな? まず、普通じゃない感じが良かったんですよね。バンド名もそうですけど、記号みたいだし、パッと見た感じ読めないじゃないですか。でも、長い英語のタイトルとかではなくて、違う意味で読めないっていう……。
──ちなみに「艶℃」の読み方っていうのは……?
あ、「エンド」です、普通に。意味がありそうで、なさそうで。
──“意味がありそうでなさそう”ということはハッキリしてるっていう。
ええ、まったくそのとおりです(笑)。みんなで飲みながら「タイトル、どうしようか?」って話もしてたんですよ。俺としては、漢字のタイトルが良かったんですよね。例えば雑誌の表紙に「装苑」って書いてあったら、なんかカッコいいじゃないですか。
──あの漢字、カッコいい!っていう。外人ですね、感性が。
ハハハハハ! まあ、その中でバンドに合うものを探したときに、“艶(つや)”っていうのはいいなって思ったんですよ。そこから、じゃあ、どう読ませるかってことを考えて、結果こうなったっていう。
──艶っぽさって大事ですか?
なんかね、今ってそういうバンドがいないじゃないですか。昔はいっぱいいたと思うんだけど。だから、メンバーみんなけっこうオジサンなのに“艶”とか言ってるんですよ(笑)。イメージとしては“ギラギラ”って感じでもないんですよね。そうなっちゃうと、それこそSIGUE SIGUE SPUTNIKみたいになっちゃうので。あとはストイックじゃない感じですよね。自然とそれが出てくるのはいいんだけど、あえて前に出してくるじゃないですか、みなさん。
──ストイックのアピールは暑苦しい、と。
そういう人たちは、それでいいと思うんです。ただ、そればっかりじゃ嫌だなってだけで。いろいろあったほうがいいじゃないですか、ってことですよね。
歌詞は曲に対するデザインのようなもの
──歌詞の世界観も一貫してますよね。読んでも意味がわからないというか、メッセージよりも語感とか発音したときの気持ち良さが優先されているっていう。それも石井さんのスタイルですよね?
うーん、まあ、そうですねえ。スタイルなんでしょうね、きっと。
──最初は適当に歌っていくんですか、これって。
そういうことも多いですね。そのあと「あ、ここはこんなふうに聴こえる」とか……まあ、これはあんまり言わないほうが(笑)。なんて言うか、言葉ありきでメロディを作らないんですよ。「この言葉を言いたい」っていうのはなくて、全部完全に後付けなんですよね。歌詞というよりも……曲なんかもそうなんですけど、アレンジってけっこう、デザインみたいなところがあるんですよね。そういうことなんですよ、言葉なんかも。曲に色付けをしていく、最終的なデザインというか。
──デザインを優先すると、意味はないほうがいい?
100%じゃないですけど、イメージのほうが大きいというか。たまに意味があるような歌詞もあったりするんだけど、かといって、それを聴いている人に伝えたいわけではなくて。ブックレットとかも、文字がまったく読めない感じですからね。完全にデザインの一環になってて。だから「この曲のこの歌詞が……」って単体で捉えられると、「やめて」ってなる(笑)。
歌詞っていうのは歌詞であって、小説やドラマとは違う
──(笑)。XA-VATの場合、サウンド、ビジュアルなどを含めて、すべての要素が表現につながってるというか。歌詞もその一部なんでしょうね、きっと。
あの、歌詞っていうのは歌詞であって、小説とかそういうものとは違うじゃないですか。よくポップスのラブソングとかだと「愛してる」みたいなことが歌われるけど、俺、全然意味がわからないんですよ。そんな現実にないことを歌われても、まったく共感できませんっていう。でも、リスナーの方々は共感した“ふう”になってるじゃないですか。
──うん、ホントにそうですね。ほとんどは共感したフリなんで。
俺もずっとそう思ってるんですよね。ただ、この前「トイレの神様」の人が「徹子の部屋」に出ていて、初めてまともに聴いたんですよ。あれ、超いい曲ですよね。家にひとりだったから、かなりグッときちゃいましたよ。ああいうのが売れるっていうのは、なるほどーって思ったし。だから、そういうものが嫌いではないんです(笑)。
──(笑)。映画とか小説でグッとくることもあるんですか?
意外とありますね。けっこう涙もろいというか、映画とか小説じゃなくても、テレビのドラマとかでもしょっちゅう泣いてますよ(笑)。
──そういう部分は音楽に反映されない、と。
だって、全然別物じゃないですか。そんなこと、絶対できないですよ。音楽って大体は見よう見まねでできると思うけど、例えばクラシックとかは無理でしょ。それと同じです。
DISC 1収録曲
- BLACK RUNWAY OF DEVILS
- ZEROTICA
- Mecca
- VAT-DANCE
- Mr.VITAL
- E-Z
- INVASION-NOVATION
- NUMANS-Roxette
- EPOC TRACE
- THE 艶℃ BABY
DVD収録曲(※初回限定盤[CD+DVD]のみ)
- BLACK RUNWAY OF DEVILS
- ZEROTICA
- MECCA
- VAT-DANCE
- E-Z
- EPOC TRACE
- NUMANS-ROXETTE
- VIDEO GAYTION
- XANADOoM
DISC 2収録曲(※初回限定盤[CD+CD]のみ)
- BLACK RUNWAY OF DEVILS Remixed by 68(from MONICA URANGLASS)
- ZEROTICA Remixed by Tycoon Tosh
- Mecca Remixed by momokomotion
- VAT-DANCE Remixed by MAXDEADROOM
- Mr.VITAL Remixed by ATOMIZER
- E-Z Remixed by THE SODOM PROJECT
- INVASION-NOVATION Remixed by Keiichi Suzuki
- NUMANS-ROXETTE by YASUYUKI OKAMURA
- EPOC TRACE Remixed by Minoru Kurihara(from NIRGILIS)
- THE 艶℃ BABY Remixed by Luis Miguelez(from GLAMOUR TO KILL)
XA-VAT(ざばっと)
Kozi(ex. MALICE MIZER)、SADIE PINK GALAXY(SPEECIES)、小間貴雄(ex. GOATBED)、石井秀仁(GOATBED、cali≠gari)によるバンド。'80sニューウェイブやヘヴィロック、ゴシックパンクなどの影響を感じさせるサウンドと、グラマラスなビジュアルの融合は、ほかに類を見ない個性的な存在感を放つ。2010年12月、シングル「XA-VAT」でデビュー。2011年3月に早くも1stフルアルバム「艶℃」をリリース。