スタジオなんか入ったら、XA-VATの音楽はたぶん作れない

──考え方が変わったのは、何か理由があるんですか？

なんででしょうね？ まあ、音楽的なルールにのっとっても、それが正解とは限らないっていうことがわかってなかったんじゃないですか？

──そういう部分に改めて気付いたっていうのも、ほかのメンバーの影響かもしれないですね。制作のスタイルとしては、シングルのときと同様、メンバー同士のデータのやりとりなんですか？

そうですね。

──そのやり方がやっぱり面白い？

うーん、面白いかどうかはわからないですけど、直接コミュニケーションしながら「ああしよう、こうしよう」って作るのはけっこう苦手なんですよね。ほかのメンバーもきっとそうだと思うんだけど、誰かが「こんなのあるけど、どうだろう」っていうものを作ってきて、そこからほかの誰かが「じゃあ、こんなの乗っけてみたけど、どうですか？」っていう。そういうほうがやりやすいというか。例えば自分が作る場合、歌も歌詞も本チャンテイクが乗ってるものを渡したりするし。

──じゃあ、メンバーといっしょにスタジオに入ったりとか……。

まず入らないですね。スタジオなんか入ったら、たぶんできないですよ。だから何かね、0というか1というか、そういう段階のものって、どうにでもなるじゃないですか。例えばギターのコードでCがある、と。そっからどこにでも行けるけど、だからどこにも行けないっていう（笑）。

自分が思ってもなかった方向に進む面白さ

──メンバーにドラムとベースがいない、っていうのも関係してますよね、きっと。

そうなんですよね。シーケンサー走らせたり、エディットしたりするっていうのは、ひとりだからこそやれる作業だったりするので。

──それを踏まえた上で、“4人で”作るっていう。

はい。例えば自分が作ったものに対して、誰かがギターなりシンセなりを入れてくるじゃないですか。何が乗ってきても何も言わないんですよ。違うとは言わないし、もし違っても、違った感じを楽しむっていう。

──なるほど。

特定のジャンルというか「このあたりを狙いたい」って考えがあったりもするんだけど、それは伝えないんですよ。だから当然、自分が思ってもなかったようなギターが乗っかってきたりもするし、それによってピンポイントで狙いたかった部分は薄れたりもするんだけど、それが面白いっていう。ほかのメンバーも同じだと思いますよ。その人が想像もしてなかった歌詞とか歌を俺が乗っけることもあると思うし。まあ、10曲も作ってると、最後のほうは「いや、そうじゃねえんだ」っていうのも出てきたりしますけどね。それは俺の話じゃないですよ？ そういうこともあるんです、ってことであって（笑）。

「コレとコレがくっついたらカッコいいのにな」

──その作り方は大前提として、お互いのセンスや感性を信頼してないと成立しないですよね。「艶℃」は非常に未来的なサウンドというか、端的に言うと新しい音だと思うんです。

あ、そうすか？

──そこは特に意識してない？

うーん、それが新しいかどうかはわかんないですけど、「コレとコレがくっついたらカッコいいのにな」っていうのはありますね。そういう意味の新しさはあるかもしれないけど、みんなけっこういい歳で、40越えしてるような人もいるのに、いまさら「誰も聴いたことねえような、新しいロックをやってやるぜ」とか、そんなんじゃないです（笑）。「そんなもんねえし」っていうのは、みんな知ってるので。

──あるとしたら、組み合わせの新しさだけでしょ？ っていう。

そうですね。人にもよると思いますけど、子供のときからそういうやり方が好きなので。“へヴィメタっぽいテクノ”とかね、わかんないですけど（笑）。このバンドもそういうふうにやれたら一番いいのにな、とは思いますけどね。