ナタリー PowerPush - XA-VAT
1stアルバム「艶℃」に漂う奇天烈な混沌に迫る
Kozi(ex. MALICE MIZER)、SADIE PINK GALAXY(SPEECIES)、小間貴雄(ex. GOATBED)、石井秀仁(GOATBED、cali≠gari)という鮮烈な才能を持ったアーティストたちによる新プロジェクト・XA-VATから、1stフルアルバム「艶℃」が到着した。
ニューウェイブ、ポジティブパンク、インダストリアル、デジタルロック、テクノポップ、モダンへヴィロックなどを自在にコラージュしたサウンド、デカダンスかつスキャンダラスなイメージをふりまくアートワークを含め、このアルバムには(現在のシーンには存在しない)奇天烈かつビビッドなセンスが溢れている。「アレンジはデザイン」「J-POPのラブソングは、意味がわからない」「ウソやインチキが大切」など、独自の感性を携えたバンドのキーパーソン、石井にたっぷりと話を訊いた。
取材・文/森朋之
アルバム制作にあたってメンバーと話し合いとかって、全然なかった
──シングル「XA-VAT」のインタビューをさせてもらったのが去年の11月だったんですが、あのときはもうアルバムに取り掛かってたんですか?
えーと、なんて言うか、実際にいつから取り掛かってかっていうのはけっこう曖昧なんですよね、こういう音楽なんで(笑)。最初のシングルを出したときに、それ以外に2曲ほどは録ってたから、取り掛かってたことになるんですかね。まあ、「アルバムを作るぞ」って始めたのは、12月のライブ(12月2日にLIQUIDROOM ebisuで行なわれたワンマンライブ)の後なんですけど。
──その時点でアルバムの全体像は見えてたんでしょうか?
ライブのときには7~8曲くらい「アルバムに入れようか」っていう曲が揃ってたから、なんとなくは(全体像が)あったと思うんだけど……。
──かなり派手というか、テンションの高い曲が多いという印象を受けたのですが。
あ、そうなんですかね?
──ダークなイメージの曲もあるのかな?と思ってたら、わりとライブで盛り上がれそうな曲が中心だな、と。
うん、そうっすね。メンバーと話し合いとかって、全然ないんですよ。個人的には「音楽のルールを無視してるものから、いわゆるポップス的なところまでカバーできたらいいな」っていう気持ちはあったんですけど。確かにダークなイメージはなかったですね。今考えてみると、ダークなヤツもやっておけば良かったかな。
実際に聴いてみたときにカッコよければそれでいい
──ひとつずつ訊いていきたいんですけど、まず「いわゆるポップス的な」っていうのは……?
ポップスっていうと語弊があるかもしれないけど、ポップスとしても成り立つってことですかね。わりとすんなり聴ける、というか。そういうものが好きで、どうしてもやりたいってことではないんですけど、そういうレベルまでカバーできたらいいな、と。
──「Mecca」「EPOC TRACE」あたりは確かにポップですよね。
風体に似合わないというか(笑)。ちょっと切なさも漂っちゃう、みたいな。
──それは聴き手に対する“入り口”ということですか?
いやいやいや、全然そういうことではなくて。わざとらしい、とか、似合ってないとか、いろんな言い方ができると思うんですけど、入り口とか聴く人に歩み寄るっていう感覚とは違うんですよね。昔から、このバンドに限らず、そういうアプローチはしてたんですよ。「そういうのもできまっせ」っていうか……そんなこと言う必要もないんだけど……それも自分の得意分野っていうか。勝手に得意分野だと思ってるだけかもしれないけど、「こういうのもあるよ」っていう……察してください(笑)。
──(笑)。もうひとつの「音楽のルールを無視してるもの」っていうのは?
最初からそういうふうに思ってたわけじゃないんですけど、メンバーそれぞれがわりと感覚だけで「こんなん、カッコいいんじゃないですか」って音を乗せてきたりとかするんですよ。それはギターだったり、シンセだったりするんですけど。あと、打ち込みのトラックですから、当然、いろんなシンセの音が入ってるんですよね。そこに感覚的に音を加えてくもんだから、パッと聴いた感じ、ほかのどっかの音と当たってたりするんですよ。
──不協和音的な。
最初のほうはそれを気にして、「ああでもねえです、こうでもねえです」って言ってたんですけど、途中から「全然コレでいいや」って思ってきて。そういう面白さもあるんじゃないかな、と。
──そうですね。音楽理論的には正しくないんだけど、カッコいいっていう。ポストパンク的なアプローチというか。
うん、そうなんですよね。そういう感覚って、曲を構築していくと忘れちゃうんですよね。カッコいい、カッコ悪いっていう判断の前に、MIDIのデータを見ながら「あ、ここ、半音で当たってるな」って直しちゃったり。実際に聴いてみたときにカッコよければそれでいいと思うんだけど、その前の段階で当たり前のように直しちゃうっていうか。でも、みんなといっしょに作ってると、そういう部分がいっぱい出てきちゃうんですよ。楽譜とか書いてる人たちではないので。そういう部分こそが面白いんですよね。
──狙ってできることじゃないし。
そうですね。それもね、狙ってやれてないとカッコ悪いって思ってたところがあるんでしょうね、きっと。「合ってるか合ってないか、よくわかんないけど」っていうのが嫌というか、自分で理解できてないのが好きじゃなくて。でも、それも全然いいやって思うようになった(笑)。
DISC 1収録曲
- BLACK RUNWAY OF DEVILS
- ZEROTICA
- Mecca
- VAT-DANCE
- Mr.VITAL
- E-Z
- INVASION-NOVATION
- NUMANS-Roxette
- EPOC TRACE
- THE 艶℃ BABY
DVD収録曲(※初回限定盤[CD+DVD]のみ)
- BLACK RUNWAY OF DEVILS
- ZEROTICA
- MECCA
- VAT-DANCE
- E-Z
- EPOC TRACE
- NUMANS-ROXETTE
- VIDEO GAYTION
- XANADOoM
DISC 2収録曲(※初回限定盤[CD+CD]のみ)
- BLACK RUNWAY OF DEVILS Remixed by 68(from MONICA URANGLASS)
- ZEROTICA Remixed by Tycoon Tosh
- Mecca Remixed by momokomotion
- VAT-DANCE Remixed by MAXDEADROOM
- Mr.VITAL Remixed by ATOMIZER
- E-Z Remixed by THE SODOM PROJECT
- INVASION-NOVATION Remixed by Keiichi Suzuki
- NUMANS-ROXETTE by YASUYUKI OKAMURA
- EPOC TRACE Remixed by Minoru Kurihara(from NIRGILIS)
- THE 艶℃ BABY Remixed by Luis Miguelez(from GLAMOUR TO KILL)
XA-VAT(ざばっと)
Kozi(ex. MALICE MIZER)、SADIE PINK GALAXY(SPEECIES)、小間貴雄(ex. GOATBED)、石井秀仁(GOATBED、cali≠gari)によるバンド。'80sニューウェイブやヘヴィロック、ゴシックパンクなどの影響を感じさせるサウンドと、グラマラスなビジュアルの融合は、ほかに類を見ない個性的な存在感を放つ。2010年12月、シングル「XA-VAT」でデビュー。2011年3月に早くも1stフルアルバム「艶℃」をリリース。