Who-yaのプライベートを反映させた「Discord Dystopia」
──続く「Discord Dystopia」は、「VIVID VICE」の世界観とつながっている楽曲です。タイトル通り、ディストピア感にあふれたサウンドですが、これもWho-ya Extendedの特徴ですよね。
「VIVID VICE」とのつながりは意識しました。がなってるギターだったり、熱量がありつつ、どこか俯瞰しているようなスタンスの歌詞もそうなんですけど、この2曲は近しいところがあるなと思ったんですよね。アルバムにはいろんなテイストの楽曲が入っていて、前半に新しいタイプの曲を入れるのもいいんですけど、「VIVID VICE」でWho-ya Extendedを認知してくれた方が自然に入っていけるほうがいいなと思って3曲目にしました。歌詞の内容としては、今の状況というよりも、ゲームの歌なんですよ。
──ゲームの歌?
はい(笑)。僕はかなりゲーム好きなんですけど、夜やり始めて、「あ、朝だ」みたいなこともあって。その最中は熱中しているし、達成感もあるんですけど、何かを失ったわけではないのに、どこかで「やっちまった」という謎の絶望感もある。その一瞬を切り取って曲にできたら面白いかなと(笑)。
──Who-yaさん自身のプライベートな状況も反映されてるんですね。
そうですね。ゲームが好きなアーティストの方も多いし、今後も両立できたらいいなと思ってます。両立って言い方はおかしいか(笑)。
クリエイターとのディスカッションの中で生まれる音楽
──4曲目「Wander Wraith」はアルバムのリード曲です。この曲はどのように作っていったんですか?
この楽曲も実は8月のライブと関係があるんです。ライブはYouTubeで生配信したんですけど、アンコールは配信なしにして。そのときに披露したのが「Wander Wraith」だったんです。会場に足を運んでくれた人たちのためだけのサプライズというか、「来てよかった」と思ってもらえる特別なことをしたくて。
──反応はどうでした?
お客さんにとっては初めて聴く曲なので、戸惑いと喜び、楽しさが混ざっていたような気がします(笑)。そういう空間も新鮮だったし、当たり前ですが、有観客だからこそ味わえたことだなと。その時点でアルバムのリード曲にする構想はあったんですが、先にライブで披露することで、「さらに突き進んでいきたい」という意味合いも加わりました。鼓舞するような歌詞ではないんですけどね(笑)。
──歌詞よりもサウンドやビート、メロディから“進化していきたい”というメッセージが伝わるというか。
アレンジやサウンドメイクでも、いろいろと新しいことをやってますからね。例えばボーカル音源のデータをあえてブツ切りにして編集していたり。もちろん全部歌ってるんだけど、ライブでは再現できないんですよ(笑)。リード曲だし、メロディ自体はポップなんだけど、面白い仕掛けがたくさんある曲だと思います。
──アレンジのアイデアは、Who-yaさんの提案なんですか?
もちろん自分から意見を出すこともありますし、Who-ya Extendedはいろいろなクリエイターと共同で進めているプロジェクトなので、ほかの人からのアイデアを採用させてもらうこともあって。そこは話し合いというか、ディスカッションしながら制作しています。
理解しようとするスタンスが大事
──続く「MESSY WORLD」は、ストリングスのアレンジがめちゃくちゃ刺激的でした。
ストリングスをデータ上で刻んでるんですよ。「MESSY WORLD」は、まさに今の世界を描いていて。例えばテレビでコロナ関連のニュースを見ていると、感染症の専門家の皆さんは「いかに感染を広げないか」について話していて、経済を専門にしてる方々は「そうすると日本の経済が終わってしまう」と言ってるじゃないですか。まったく違う視点を持っていて、見ている場所も異なるというか。
──今の話は本当に象徴的だと思いますが、コロナ禍になって、いろんな場面でギャップや分断が生まれてますよね。
それぞれの正義がありますからね。自分が見ているもの、考えていることが正しいとは限らないし、ほかの人の意見に対して「わからない」で終わらせるんじゃなくて、理解しようとするスタンスが大事じゃないかなと。そういう思いも「MESSY WORLD」には込めているし、それはストリングスのアレンジにも表れていると思います。
──6曲目の「Growling Ghoul」は2nd ミニアルバム「Icy Ivy」、7曲目の「The master mind」は1st ミニアルバム「VIVID VICE」の収録曲ですね。
さっきもお話したようにWho-ya Extendedの今を表現したかったし、ミニアルバムの収録曲も連れて行きたいなと思ったんです。この2曲は「VIVID VICE」「Icy Ivy」の音像と近しいところもあるんですが、アルバムの中に入ると、また聞こえ方が違うんじゃないかなと。
──確かに。この2曲が収録されることで、1stアルバムからの変化も改めて実感できます。音楽的な幅がすごく広がってますよね。
そうかもしれないですね。1stアルバムと大きく違うのは、人が演奏していたり、僕が歌っている場面が浮かびやすいことだと思っていて。それもやっぱりライブの影響なんですよね。生ライブもそうだし、「THE FIRST TAKE」(2021年4月出演)もそうなんですけど、自分自身が表舞台に立って歌うことが増えて、それが楽曲に反映されていると思います。
──単純に生音の割合も増えてるんですか?
そうですね。生音も増えているし、生で録ったものをエディットしているところもあって、アレンジはいろいろなんですけどね。
──8曲目の「Wasted Dawn」は、ヘビーなギターを軸にしたミディアムチューンです。悲しみや切なさを滲ませるメロディ、「日々を奪っていく」というフレーズもそうですが、シリアスな雰囲気が漂ってますよね。
タイトル通り、“無駄に消費された夜明け”を表現しています。多くの人がそうだと思うんですが、理由もわからず悲しくなったり、なかなか寝付けない夜があって。気付いたら夜が明けていて、何もできなかった虚しさを感じるというか。そういう瞬間を切り取って表現してみたかったんです。僕もまだ20歳そこそこだし(笑)、悩まなくていいことまで悩むこともあるので。
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ボーカリストとしての成長が感じられる「透明な花」