Who-ya Extended|当たり前を疑い、自分の手で真実をつかめ

Who-ya Extendedが8月11日に2ndミニアルバム「Icy Ivy」をリリースした。

2月に発表したアニメ「呪術廻戦」第2クールのオープニング曲「VIVID VICE」によって、知名度を一気に上げたWho-ya Extended。新作「Icy Ivy」には、放送中のテレビアニメ「NIGHT HEAD 2041」のオープニングを飾る「Icy Ivy」など新曲4曲が収録されており、音楽性やサウンドメイク、ボーカルなどさまざまな側面でWho-ya Extendedのさらなる進化を実感できる仕上がりとなっている。

新作リリースに際し、音楽ナタリーではWho-yaにインタビュー。「VIVID VICE」の反響や新作「Icy Ivy」の制作、理想のボーカリスト像などについて語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 斎藤大嗣

「音楽は国境を越える」って言いますけど、ホントなんだなって

Who-ya Extended

──「VIVID VICE」がロングヒットを記録中です。大きな反響が生まれていますが、この状況をどう捉えていますか?

「VIVID VICE」をたくさんの人に聴いてもらえて、自分たちの曲を届けることができて、純粋なうれしさがずっと続いています。今まで縁がなかった「歌ってみた」や「踊ってみた」のようなカルチャーと接点ができたんですよ。日本だけじゃなくて、海外の方にも「VIVID VICE」を歌ってもらって、それがSNSを通じて広がって。いろんな国の方が日本語の歌詞の曲を歌ってくれてるのは、もう感動の域ですね。「音楽は国境を越える」って言いますけど、ホントなんだなって。

──「VIVID VICE」の歌ってみた動画、けっこうチェックしてます?

してますね(笑)。当たり前ですけど、これまでは自分が歌っている「VIVID VICE」しか聴いたことがなくて。母国語が違う人が歌うと当然それぞれにクセがあるし、「VIVID VICE」の別の一面が見えてくるというか。それはすごく興味深いです。

──そして4月にはYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に出演。「VIVID VICE」の歌唱動画は再生数385万回を超え(取材時)、こちらも大きな注目を集めました。

「THE FIRST TAKE」は企画がスタートしたときからチェックしていました。自分が日頃聴いていたり、ライブに行ったりしたことがあるアーティストも出ていたし、よく観ていたんですよ。そこに自分たちが出演して、動画がいろいろなSNSで広まっているのは面白いですね。収録はすごく緊張しました。ライブとレコーディングの間というか、緊張と興奮が混ざった独特な雰囲気があって。出演されたアーティストの皆さんが「今まで味わったことがない、特別な空間でした」とおっしゃってましたけど、「なるほど、こういう感覚なのか」と(笑)。あとで映像を観たら、意外と歌えていたのでちょっと安心しました。

──「VIVID VICE」のヒットによって、Who-ya Extendedの名前が広まった手ごたえもあるでは?

うーん……確かに「VIVID VICE」は日本、海外を問わずいろんな人に届いた実感があるんですけど、自分たちの知名度が上がった実感はそこまでなくて。それはこれからでしょうね。

「THE FIRST TAKE」の経験も影響しているかもしれない

──では、「VIVID VICE」が拡散したことで、その後の制作に影響はありましたか?

注目度が高まったあとの作品をどうするか、ということですよね? スタンスとしてはそんなに大きく変わってないですね。「売れたぜ」とか「注目された」という気持ちはまったくないし、今回の「Icy Ivy」という楽曲も、デビューから「VIVID VICE」まで自分たちがやってきたことを引き継ぐ感覚で作っているので。

──バンドサウンドとデジタルの融合ということですか?

それもあります。確かにデジタルな音色は前に出ているし、存在感を放っているけど、基本はバンドサウンドですし。「Icy Ivy」に関して言えば、ボーカルエフェクトを減らしています。曲全体にはデジタル音をかなり生かしているんですけど、ボーカルは生音に近いのかなと。「THE FIRST TAKE」の経験も影響しているかもしれないですね。

──確かに「VIVID VICE」に比べると、「Icy Ivy」のボーカルは生々しさが増してますね。

だと思います。レコーディングのときに感じた思いも声に反映されているし、かなりヒリヒリした手触りになってるんじゃないかなと。

「これはダメ」の先にある真実を追求すること

──「Icy Ivy」はアニメ「NIGHT HEAD 2041」のオープニング曲です。どんなテーマで制作されたんでしょうか?

曲自体のテーマとアニメの世界観をすり合わせながら制作しました。もともとのテーマは……ちょっと哲学的な話になるんですけど、世の中には「それはよくない」とされていることってたくさんあるじゃないですか。でも、誰かが決めた「これはダメ」に従うだけはなく、その先にある真実を追求することも大事なんじゃないかなって。

──そういう哲学的な思索は、普段からやられているんですか?

哲学や心理学の本を読んだりはしますね。ただ、それは楽曲のテーマを探すためでもあって。コロナ禍の影響も大きいと思います。コロナによって世界の形が変わって、今まで当たり前だったことが、当たり前じゃなくなってるので。

──既存の常識を疑わざるを得ないことも多いですよね。

そうですよね。あと、1人の時間が増えたことも関係してるのかなと。20数年生きてきて、今までこんなに1人の時間を過ごすこともなかったし、その中でいろいろ考えることもあって。それはマイナスじゃなくて、むしろプラスになってると思いますね、個人的には。

僕自身にもすごく当てはまるテーマ

──ではアニメ「NIGHT HEAD 2041」に対しては、どんな印象を持っていますか?

主人公の兄弟(霧原直人・直也)は生まれながらに超能力を持っていて、そのせいで追われる身になるんです。超能力を持つことは自分たちで望んでいたわけではないのに排他的な立場に立たされるわけですけど、彼らはそれに抗って生きようとする。そのテーマは、さっき言った「誰かが決めたことではなく、自分で真実を追求する」ということにもつながるというか、同じベクトルを向いてるなと。

Who-ya Extended

──そのテーマは、誰にでも置き換えが可能ですよね。生まれ育った環境は、自分では選べないので……。

はい。超能力と言うと現実離れしてるけど、親とか兄弟とか、生まれながらに決まったことは自分で選べないし、その中で生きて、自分を形成するしかないので。アニメを観る人もそうでしょうし、僕自身にもすごく当てはまるテーマだと思います。

──アニメのオープニング映像とのマッチングも素晴らしいですね。疾走感と緊張感のあるサウンドと、ディストピア的な世界観がしっかり重なっていて。

ありがとうございます。アニメのストーリーや世界観からもインスピレーションをもらっています。そこから見えてくる景色を踏まえて作った曲だし、うまくハマってよかったなと。「VIVID VICE」でWho-ya Extendedのことを知った人にも、ぜひ聴いてほしいです。「VIVID VICE」と近いものを感じるのか、ギャップを感じるのかはリスナーの皆さんに任せたいですが、どんな反応が返ってくるかも楽しみです。