もし「リボンの騎士」リメイクを作るなら主題歌は「Blue Moon」

手塚　忌憚なく感想を述べさせていただくと、最初どの曲が何の作品か資料を見ないで、まず「Blue Moon」を聴いた瞬間、すぐ「リボンの騎士」だとわかりました。「リボンの騎士」は60年代のアニメーションですが、もし今再びリメイクで「リボンの騎士」をやるとしたら、まずその主題歌だなっていうのがパッと浮かびました。

TAKUMA　えっ、めっちゃ光栄です！ 泣きそう……。

手塚　さっきも話に出ましたけど、この作品だけターゲットが女性なんです。なので、ものすごくロマンチックなメロディの作り方をされていますし、サファイヤ姫が自分を出したいけれども出せない、気付いていてほしいけれども気付いてもらいたくないという、2つのアンビバレントな心を持っているところもちゃんと歌詞に描かれていらっしゃって、本当にすごいなと思いました。次に「Link」を聴いて、たぶんこれは全部違うターゲットの方に聴いてもらいたいと思って書かれたんだろうなと思いました。「ジャングル大帝」は三世代にわたる大河ドラマ的な物語ですから、小さいお子さんから、おじいちゃんおばあちゃんまで、ある意味壮大なターゲットですよね。どうしても冨田勲先生のテーマ曲の存在が大きいと思うんですけれども、躍動感と疾走感はジャングル大帝のアニメには絶対必要なものなので、そこを壊さずに新しい楽曲として仕上げたのは本当に素晴らしいです。レオの子供のルネが都会から故郷のジャングルに思いを馳せるシーンが浮かぶような歌詞もありますし、命のつながり、生命同士の交流など「ジャングル大帝」に描かれている関係性が「Link」という言葉の中に集約されているように感じました。

TAKUMA　ありがとうございます！

手塚　最後に「僕のヒーロー」もそう。子供たちに夢と勇気を持ってもらうことが「鉄腕アトム」の大きなテーマですけれども、さらにその先の“君たちは大人になっていろんな苦労をするかもしれないけど、僕（アトム）はちゃんと君とつながっているよ”というアトムと子供たちの強い絆が歌詞にも書かれていていることにすごく感心しました。手塚ファンがwyseさんのことを知らずに聴いたとしても皆さん納得してくれるだろうなと思います。

TAKUMA　自分たちの受けたメッセージがもしかしたらずれてるかもしれないという不安感もあったんですけれども、今、感想をいただけて本当にうれしいです。

手塚　アニメやマンガを何度もご覧になってイメージを膨らませたそうですが、ドンピシャだったので、天才かなって。やはりwyseとして皆さんが伝えたいメッセージもあったと思うんですけれども、それが決して手塚に媚びる形でなく、20周年を迎えた皆さんがファンの方に届けたいこととうまく合致していたから、ここまでの完成度になったんだろうなと思います。

TAKUMA　今回はこれまで自分たちが経験してきたことをどれだけ表現できるかという点でもすごくチャレンジでした。

飾れるジャケットに

──ファンの方には手塚プロダクション描き下ろしのジャケットも、ぜひ実物を手に取っていただきたいですよね。

手塚　大きくていいですよね。飾れるサイズ。絵本みたい。

MORI　完成したイラストをいただいて、まずこの絵を見ながら楽曲を聴いてほしいと思ったんです。なので、ちょっと冒険ですけどタイトルやバンド名を入れないデザインにしました。飾っていただいても、1つのアイテムとして成り立たつようにしたくて。そのうえで歌詞を読んでいただけたら大切さの度合いもまた変わってくるでしょうし。

TAKUMA　優しさが感じられますよね。

手塚　最近のCDのパッケージは無機質に感じるところありますからね。あと今回、皆さん自身がイラストになって描かれているじゃないですか。私たちもコラボレーションではそういう遊び方をしてもらいたいなと常々思っていまして。小さい子がこのジャケットを見て、「こういうふうに自分も手塚治虫と遊べるんだ」って伝わるといいなと思います。

HIRO　イラストの中で手にしているギターは僕たちが実際に使っているものなんです。すごく細かく描いてくださってすごくうれしいです。

──9月29日からはコラボツアー「wyse20th＋OSAMU TEZUKA90th＝110万馬力 COLLABORATION TOUR『ヒカリ』」が開催されます。いずれかの日には、るみ子さんも参加されるそうですね。どういった形でご登場されるんですか？

手塚　どうしようかと悩んでいるんです。だってすごいステージをやってらっしゃる中に私が現れても違和感しかないでしょうし。今日も衣装は黒にするべきでした（笑）。

wyse一同　いやいや！ 僕らもすごく楽しみにしていますので。

──各会場2DAYS公演で、初日はwyseが再始動した2011年から2018年の楽曲で構成、2日目は1999年からのオールタイムベストライブです。20年の歴史を感じられるステージになりそうですね。

TAKUMA　今回の4曲でwyseが何を学べたかを表現するのはもちろん、僕らの生きてきた時間をちゃんと感じてもらって、未来にちゃんと導けるライブにしたいです。

月森　コラボツアーということで、3パターンのCD以外にも手塚プロダクションさんとグッズを作らせていただいているので。

手塚　いろいろ申請がきて監修中です（笑）。すごくたくさんグッズを作られるんですね。

月森　「手塚×wyse＝110万馬力」ということで、こんな面白いことをやってるんだとわかってもらえたらと思って、グッズもたくさん作ります。ツアーではお祭り的な雰囲気の中で、僕らの成長した部分も表現できたらいいなと思います。