wrong city初めてのバラード

──今作は6曲目に「The Night」というバラードが入っていますね。

Atsushi　Onoshitが先に曲を作って、Victorがメロディをつけて、それにあわせてまた曲を変えるっていうのが僕らの基本スタイルなんですけど、この曲に関してはVictorのメロディが先にあって。もともとは速い曲に乗せたいメロディだったんですけど、ツアー中にVictorが楽屋で「こういうコードで……」ってゆっくりやってるのがすごくしっくりきたんで、このままバラードにしてしまいました。

Victor　この曲だけ純粋なラブソングなんですよ。終わった話なんですけど、昔付き合っていた元恋人が、子供が生まれて結婚しちゃったんです。その話を聞いたときに、当時のことを思い出して。中学校とか高校のときに初めてできた彼女で、長い間付き合ってたんです。その子が1人の妻となったら、自分の知らない別の人間になってしまった感じがして、うれしいんですけど「あー」みたいな。

──複雑な気持ちになりますよね。素直に祝福しきれないというか。

Victor　しかも当時「子供できたらこういう名前付けたいね」って言ってた名前を、彼女が自分の娘に付けたんです。それで「マジかー」ってなって、歌詞を書いてみようと思いました。バラードをこのバンドで作ったことがなかったので苦戦しました。

Atsushi　俺の中では苦戦はしてなくて。それこそメロディ重視の最たるものなので。バックはドシンプルでいいからっていうのが合言葉になりました。

──この曲が6曲目に入っていることでアルバムに流れができますよね。初めてのフルアルバムということもあり、曲順は悩んだんじゃないでしょうか？

Atsushi　だいぶ悩みました。曲調からしても自分たちのやりたいことを代表するものという意識があったので、リード曲になっている「Your Warmth」を1曲目に持っていこうというのと、「Love Goes Over」を最後にしようというのは決めてたんですけど。バラードをどこに入れるかっていうのが最大のポイントで、最終的には「The Night」で「Induction Of Otherside」の第1章が終わりました、次の曲から第2章が始まります、みたいなイメージで構成を考えました。

──アルバムができあがってみてどうですか？

Atsushi　正直、いいのできたなって思いました。

Victor　家に帰ってCD入れて聴いたときに、ニヤニヤできた。「かっけーな」ってちゃんと思えるアルバムです。

日常生活の何かのきっかけになれたら

──wrong cityというバンド名についてなんですが。直訳すると「間違った街」で、世の中に対する皮肉を込めてこのバンド名を付けたそうですね。社会的、政治的に訴えかけたいことがあるんでしょうか？

Atsushi　そんな大きなことではなくて悪ガキが家の中でテレビを見ながら愚痴ってるみたいな感じです。「世の中が間違ってるのか、俺が間違ってるのか」ってよく言うじゃないですか。もちろん自分たちが間違ってるとは思うんですけど、アホなので「世の中が、この街が間違っとるんじゃい」みたいな（笑）。でも自分たちもそれを作ってるいち人間だし、自分たちはそこでしっかり生きていかなければいけない、という……皮肉です。

──こんな街や日本を変えたい！ということではない？

Atsushi　そんな大それたことじゃないです。表現する場がここしかないので自分たちの表現するものをすべてwrong cityで出してるっていうだけです。

Onoshit　僕は映画や日常生活の風景や景色を観て、曲が生まれることが多くて。この景色がこの曲に乗っかって、Victorの歌が乗っかって、色付いた状態でみんなが聴いてくれたときに どう思うかな？っていうのが楽しみで。それが俺の生きがい、wrong city全体の生きがいだと思うんです。

jorge　観に来た人が僕らのライブでフラストレーションを発散できたりだとか、誰かの日常生活の何かきっかけになれたらいいなと思います。バンドで歌ってる人でもこんなに悩んでるんだな、こういうつらい思いをしてきたんだなっていうところから、聴いてくれた人が一歩進むようなバンドになれればと思います。

Atsushi　誰かにとっての何かになる、その「誰か」の人数を増やしていきたいです。僕らの音楽を聴いてもらっているということは、その人の人生の1シーンにwrong cityも存在してるということなので。例えば電車乗ってて「この車両に乗ってる人のうち、3人はwrong city聴いてたら」とか考えると楽しいです（笑）。