wacciの全国ツアー「wacci Hall Tour 2022 ~Boost!~」より、1月7日に神奈川・神奈川県民ホールにて行われるツアーファイナルの模様がWOWOWプラスで独占生中継される。
今年6月にリリースした「恋だろ」で「第64回 日本レコード大賞」の優秀作品賞を受賞するなど、今年も大きな活躍を見せたwacci。9月に開幕した「wacci Hall Tour 2022 ~Boost!~」を、2023年初ワンマンとなる神奈川県民ホール公演で締めくくる。音楽ナタリーでは、同公演の開催を前に5人にインタビュー。2022年がwacciにとってどういう1年だったかを振り返ってもらいつつ、ツアーファイナルへの意気込みなどを聞いた。
取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 大川晋児
「恋だろ」のリリースより前のことをあんまり覚えてないんです
──まず、2022年は皆さんにとってどんな1年でしたか? このインタビューは2022年11月末に行っていて、「恋だろ」が「第64回 日本レコード大賞」で優秀作品賞を受賞という大きなニュースとともに2022年も終わろうとしているところですが、今年もwacciはさまざまな活動をしていたと思います。直近だと11月に5thアルバム「suits me! suits you!」のリリースがありましたし、今は「wacci Hall Tour 2022 ~Boost!~」の真っ最中。また、11月7日にはメジャーデビュー10周年を迎えましたね。
橋口洋平(Vo,G) どんな1年だったかというと、「恋だろ」の1年だったのかな。正直、「恋だろ」のリリースより前のことをあんまり覚えてないんですよ(笑)。
村中慧慈(G) そうなんですよね。
小野裕基(B) どこからが2022年なのか、ちょっと曖昧になってます(笑)。
横山祐介(Dr) 確か年明けに「やんごとなき一族」の挿入歌のデモのアレンジを作り始めたんじゃなかった?
小野 そうだ、2021年の年末にすごくたくさんデモを作っていたんだった!
橋口 「恋だろ」とは全然違う曲も作ってたよね。
因幡始(Key) 少しずつ思い出してきました(笑)。
横山 リリースもたくさんさせてもらったよね。1月に「トータス」をリリースして、2月に「インク」をリリースして、武道館のBlu-ray(2021年11月の日本武道館公演の模様を収録したBlu-ray「wacci Live at 日本武道館 2021 ~YOUdience~」)も出しました。
──「恋だろ」を収録したシングル「恋だろ / 僕らの一歩」のリリースは6月でしたね。
横山 はい。6、7月にはライブハウスツアー(「wacci Live House Tour 2022 ~Reboot!~」)を回っていたんですけど、ツアーが終わったら、EX THEATER ROPPONGIで松下洸平くんと一緒に歌った「恋だろ」の映像がバズって。そう考えると、一瞬で過ぎていった1年だった気がします。
橋口 前半はめちゃめちゃ曲を書いていて、後半はめちゃめちゃ「恋だろ」を歌っていました(笑)。
村中 あはは! ミュージシャン冥利に尽きるね。
橋口 本当にね。
ご褒美みたいに思える瞬間がたくさんあった
──今回のツアーの愛知公演でメジャーデビューミニアルバム「ウィークリー・ウィークデイ」の収録曲「会いにいくよ」を演奏するときに、「最初はストレートなラブソングを書くことに照れもあったけど、この曲を通じてまっすぐに思いを届けることの大切さを知ることができた」「この曲が最初の曲でよかった」という話をされていましたよね。「恋だろ」のヒットはまさにその延長線上にあるものだったと思います。
橋口 そうですね。デビュー曲が「会いにいくよ」だったからこそ、今「恋だろ」が生まれたんだと思います。ちょうどデビュー10周年のタイミングで「恋だろ」のヒットというハッピーな出来事が起きたのは、もちろん一緒に歌ってくれた松下洸平くんのおかげでもありますし、運とか縁とか、たくさんの要因があったと思います。2022年は、10年続けてきたご褒美みたいに思える瞬間がたくさんあった1年でしたね。
──デビュー10周年を迎えた今、どんなことを感じていますか?
小野 10年分しっかりやってきたなと感じています。地道に一歩一歩進んできた実感があるので。
横山 「会いにいくよ」もそうだけど、「ウィークリー・ウィークデイ」の曲たちをレコーディングしていたときのことは今でも思い出せるんですよ。
因幡 すごいね。思い出せるの?
横山 うん、どこのスタジオで録ったかも全部覚えてる。だからわりと最近だったような気がしちゃうんですけど、当時の写真を見返すと「誰だこいつ」と思えるくらい若い頃の自分たちが写っているので、「ああ、この日から10年経ってるんだ」と思ったりはしますね。ずっと中身が詰まっていた、濃い10年だったなと思います。
橋口 「トータス」という曲で「ウサギとカメ」に例えて「ウサギを追い抜けないままのカメに ゴールテープはなくともゴールはある」と歌っているんですけど、本当にその歌詞の通り、10年かけてゆっくりステップアップしてきたバンドなんです。カメの速度でも歩みを止めずにやってきたからこそ今があるし、応援し続けてくれたスタッフの皆さんやファンの皆さんからの“沿道の声援”も励みになりました。10年続けてこられたのは皆さんのおかげだし、10年歩みを止めないでいられたからこそ、今胸を張れる位置にいられる。カメの速度でも、振り返ればちゃんと足跡があるんだということを誇っていたいですね。
ツアーを通して提示する“大正解”
──では、ここからはライブの話を聞かせてください。2022年はファンクラブ・wacci荘会員向けのツアー、ライブハウスツアー、そして現在開催中のホールツアーと3種類のツアーがありましたね。
村中 はい。その手前くらいまでは47都道府県ツアーのうち延期になってしまった公演のリベンジをしていたんですけど、そのときから「次はファンクラブツアーをやりたいよね」という話をみんなでしていて。
小野 wacci荘のみんなにはコロナ禍でも支えてもらったからね。
橋口 そうそう。「感染拡大が落ち着いたら、やっぱり一番にwacci荘の皆さんに会いに行きたいよね」ということで、まずはファンクラブツアーを回ることに決めました。そこから「suits me! suits you!」のリリースもありつつ、ライブハウスツアー、ホールツアーと続いていくんですけど、この3本のツアーのバランスがよかったし、ライブのペースも僕らにとってはちょうどよかったなと思っていて。今までは週3くらいでライブをしていたんですよ。特に最初の47都道府県ツアー(2018年11月~2019年4月)のときはボロボロになりながらライブをやっていたんですけど、今年は丁寧に準備して、心にゆとりを持ってライブ活動ができているので、それはすごくよかったと思いますね。
──今回のホールツアーも、1公演ごとの間隔がけっこう空いていますよね。愛知公演のMCでは、ツアー2本目だけど初日のような気持ちだということで「セミ初日」という新しい言葉が生まれていましたが。
因幡 本当にそんな感じで、毎回新鮮だし、初日のような緊張感と「楽しみだな」という気持ちを持ちながらライブに臨めているんですよ。それをツアーと呼んでいるのは、新しいし面白いなと思います。
──福岡、愛知、大阪公演を経てどんなツアーに仕上がっているのか、そして皆さん自身がどんな手応えを感じているのか、聞かせてください。
橋口 10年分の思いを全部出したいという気持ちでやっているツアーなので、アルバムの新曲はもちろん、これまでの10年で広がっていった、wacciの代表曲だと胸を張って言える曲もしっかりやっています。セットリストは新旧織り交ぜたものだし、僕ら自身すごくいいライブができているので、「恋だろ」や「別カノ」(2018年に発表した楽曲「別の人の彼女になったよ」)でwacciを知って初めてライブに来るという人も、wacciをずっと応援してくれている人も、みんながひとつになって楽しめるライブを初日の福岡からできていると思います。このまま神奈川公演でも大正解を提示してツアーを終えたいですね。
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