「Uru Tour 2023『contrast』」インタビュー|最新ライブ映像をWOWOWプラスで放送 史上最長ツアーで表現した新たな世界とは (2/2)

殻を破った「ポジティ部入部」のジャンプ

──今回WOWOWプラスで放送されるのは、8月12日にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で行われたツアーファイナル公演です。その映像はご覧になりました?

はい、観させていただきました。自分で観ると……目をつぶって歌っているシーンが多いなと思いました(笑)。うつむきがちなのは知っていたんですけど、あそこまで目をつぶっているとは。歌に集中しているとどうしてもそうなってしまいがちなんですけど、映像になると画的にあまり変わり映えがしないし、お客さん的にもうちょっと目を開けててほしいものなのかな?と思いました。そういう意味では、今後の課題みたいなものが見えた部分もありましたね。

「Uru Tour 2023『contrast』」の様子。

──「ポジティ部入部」の曲終わりでは、Uruさんがジャンプで演奏を締めるシーンもありましたよね。

あれはツアー初日に偶然生まれた賜物なんですよ。曲終わりでバンドメンバーさんがジャカジャカジャカーって音を伸ばしていたので、「私に振っているのか?」と勝手に思ってしまって。で、ちっちゃくジャンプしてみたら、バラバラな感じで曲が終わってしまったという。すごいダサい終わり方をしたんです(笑)。

──予定されていた動きじゃなかったから、バンドもうまく合わせられなかったわけですね。

そうそう。で、2公演目からはちゃんとやろうかっていう話になって、そこからツアーを通してずっとジャンプし続けたんですよね。最初は照れくささがあったし「マイクスタンドにぶつかるかな?」とか、いろんなことを考えたりもしていて。でも、せっかくやるなら思い切りやろうと思って、腕をめっちゃグルグル回してジャンプするようになりました。実はずっとやりたかったことでもあったのですごく楽しかったし、お客さんも盛り上がってくれたのでよかったです。殻を1つ破れた気がします(笑)。

──「心得」を歌われる前には、一昨年の11月に開催された東京国際フォーラム ホールA公演(「Uru Live 2021『To You』」)直前に原因不明の体調不良に見舞われたお話をされていました。歌うこともできなくなり、ライブの中止も考えたというつらい時期のことをあえて告白した裏にはどんな思いがあったのでしょうか?

本当はその経験を話すつもりはなかったんですよ。ファンの方に心配をかけてしまうと思ったので、この先も話すことは絶対にないと思っていたんです。ただ「実際に経験したからこそ伝えられる思いもあるんじゃないか」とスタッフの方に言われたんですよね。自分の経験談を話せば同じような経験をしている人が救われることもあると思うし、そのつらい経験を乗り越えた身として話せば、スッと受け入れてもらえるのではないかなと。それによって「心得」という曲で伝えたいことがより響くのであればと思い、今回はそういったお話をさせてもらいました。

──こみ上げる思いを抑えながら話されているのが強く胸に響きました。

話していると、どうしても当時の記憶がよみがってきちゃうんですよね。絶対に泣かないようにしようと思うんだけど、一気に心拍数が上がってきちゃって。ツアーを通して泣きそうになってしまう瞬間は何度もありました。

──そうやって思いを赤裸々に吐露できたのも、ファンの方との信頼関係があるからこそかもしれないですよね。

そうですね。私の楽曲を聴いて、そこから何かを感じ取ってくださる方って、私自身にちょっと似てる部分があるような気がするんですよ。つらいこと、苦しいことがあったときに、音楽を聴いて救われているというか。私はこれまでいろんなアーティストの方々の音楽に、いろんな場面で救われてきた。だから私が歌う人になりたいと思うようになった根源には、誰かの救いになりたいという強い思いがあるんです。

──聴き手に寄り添うためならば、つらく苦しい経験ですら話せると。

そう。100%救うことはできないと思うけど、0.5%でも1%でも前を向くきっかけになってもらえるのであれば、どんな形であれ「大丈夫なんだよ」と伝えられたらいいなって思うんですよね。毎公演、その思いを成し遂げたいという一心で臨んでいたツアーでもありました。ただ、あのパートではどうしても心がキューッと締め付けられるので、体に力が入ってしまっていたようで。次の日は頭痛と筋肉痛がひどかったです(笑)。

──あははは。映像でもあのパートはじっくり堪能してほしいところですよね。

はい。私自身はどうしても観られなかったんですけどね。あのシーンだけは両手で目を覆ってしまいました(笑)。

声出しで実感「やっぱりこういうライブっていいな」

──そのほかにファイナル公演で強く印象に残っているシーンはありますか?

どのシーンも印象に残っているんですけど、最後に歌った「星の中の君」はすごかったですね。あの曲ではお客さんにも声を出して歌ってもらうんですけど、その声がツアーを通して一番大きかったのが最終日だったような気がします。ファイナルということもあったでしょうし、私自身がライブを心から楽しんでいることを感じ取ってくださって、皆さんもより楽しい気持ちになってくれたんじゃないかな。

──コロナ禍での制限がなくなったからこそ戻って来たシーンでもありましたよね。

そうですね。コロナ禍でのライブではマスクで表情がほぼ見えなかったですし、拍手でしか気持ちを表現することができなかったですからね。声が出せる状況が戻ってきたことで、その空間を一緒に過ごしていることがより強く感じられました。「やっぱりこういうライブっていいな」ってすごく思いましたね。

「Uru Tour 2023『contrast』」の様子。

──「contrast」ツアーを終えてみて、新たに目標が見えたりもしましたか?

MCも含め、お客さんとのコミュニケーションの取り方はもっともっと磨いていきたいです。最近はライブを観る側の気持ちをちょっと忘れてしまっているところがあったりもするので、いろんな方のライブを拝見し、自分なりに学んでいくことも必要かなと思っています。今回、ライブの映像を自分で観て感じましたけど、歌っているときの動きや視線の行き先っていうのは、その歌に込めた思いを伝えるうえですごく重要だと思うんです。なので、もうちょっと自分のことを俯瞰で見つつ、いろんな部分をブラッシュアップしながら次のライブに生かしていきたいです。

──ライブの構成などについて何か思うことはありますか?

現状、お客さんと一緒に歌える曲が「星の中の君」くらいなので、そういった曲をもっと増やしてもいいのかなという思いもありますね。みんなで一緒に楽しめるパートがもっとあってもいいような気がします。とは言え、私のライブは映画を観るように、ずっと座ったままでも楽しめるから来てくださっている方もたくさんいらっしゃると思うので、バランスを考えながら新しい要素を取り入れていけたらなと思っています。これまではライブに対して苦手意識があったんですけど、「again」「contrast」という2本のツアーを経て、ライブの楽しさをちょっとずつ感じられるようになってきたので、その感覚を忘れないうちに次のツアーに出たいですね。

──では最後に、WOWOWプラスでファイナル公演を視聴する方々にメッセージをいただけますか?

それぞれの楽曲に合った照明や映像の演出がすごく素敵なので、そこをじっくり堪能していただけたらうれしいです。あと、楽曲の振れ幅が広がった分、私の声色も曲ごとにかなり違っているんです。スパーンと高い声を張り上げて歌う曲もあれば、消え失せそうなほど細い声で歌っている曲もあったり。そういったボーカルの表現にも注目してもらえたらなって思います。チケットが取れなかった方も多かったと聞いているので、そういう方はぜひ放送で楽しんでください。

──はじめましての方が今回の放送を観てくれる可能性もありますしね。

確かに! それって路上やショッピングセンターでやるライブみたいな感覚ですもんね。たまたまUruのライブに遭遇していただけるのであれば、それはすごくラッキーなこと。いいチャンスをいただけたことが本当にありがたいです。もし放送で「いいな」と思っていただけたら、今度はぜひライブ会場にも足を運んでいただきたいですね。

「Uru Tour 2023『contrast』」の様子。

プロフィール

Uru(ウル)

2013年に活動を開始したシンガーソングライター。オリジナル楽曲のほか、J-POPを中心にさまざまなジャンルの楽曲をカバーし、YouTubeで発表して話題を集める。2016年3月に東京・キリスト品川教会 グローリア・チャペルで初の単独ライブを実施。6月にシングル「星の中の君」でSony Music Associated Recordsからメジャーデビューを果たした。以降、ドラマや映画などさまざまな作品とタイアップした楽曲を多数発表している。2021年11月にはデビュー前からの念願であった東京・東京国際フォーラム ホールAでの単独公演「Uru Live 2021『To You』」を成功させた。2023年2月に3rdアルバム「コントラスト」を発表し、これを携えた全国ホールツアーを4月より開催。8月12日に東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でファイナルを迎えた。