2月リリースの3rdアルバム「コントラスト」を引っさげ、4月から8月まで全13公演を巡るツアー「Uru Tour 2023『contrast』」を行ったUru。これまで以上に多彩な楽曲を盛り込み、会場に集まったファンとより濃密なコミュニケーションを取ったツアーを経て、Uruはライブの楽しさを強く実感するようになったという。
そんなツアーの最終公演、8月12日に東京LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で行われたライブの模様が、10月29日にWOWOWプラスで放送される(参照:Uruが最新アルバムツアーで届けた真摯な思い、カバー曲やMCでもオーディエンスを魅了)。オンエアにあたり、音楽ナタリーではUru自身にツアーを振り返り、ファイナル公演の思い出を聞くインタビューを実施した。ライブに参加した人も、参加できなかった人も、本テキストで放送への期待を大きく膨らませてほしい。
取材・文 / もりひでゆきライブ写真撮影 / 白石達也
Uruという存在をもっと身近に
──Uruさんは今年2月にリリースされたアルバム「コントラスト」を携え、4月から全国ツアー「Uru Tour 2023『contrast』」を開催されました。改めて「コントラスト」というアルバムがご自身にとってどんな作品になったかを聞かせていただけますか?
これまで皆さんは私に対してバラードのイメージを強く抱いていたと思うんですよ。でも「コントラスト」は、そのバラードのイメージもしっかりとある中でアップテンポな曲があったりと、わりと振れ幅の大きなアルバムになった気がしていて。そういった意味では、それぞれの曲がしっかりと強い色を持っている作品になったと思います。その結果「contrast」ツアーに関しても、その流れを汲んだライブがやれたと感じていますね。
──今回のツアーを通して、大事にされていたテーマのようなものはありましたか?
前回の「Uru Tour 2022『again』」(2022年7月から11月まで開催された全11公演のツアー)を通して、お客さんとの距離感をグッと近くできた実感があったんです。なので、今回の「contrast」においてもそこはすごく大事にしたいと思っていましたね。それぞれの楽曲をしっかり聴いていただくことはもちろんですが、合間のMCではお客さんとやりとりができるアンケートコーナーを設けたりもして。今までは私がしゃべったり笑ったりしている姿があまり想像できないところもあったと思うので、そういった部分を含めて、Uruという存在をもっと身近に感じてもらえる空間にしたい。そこはすごく意識していました。
──Uruさんは今年でメジャーデビュー7周年を迎えましたが、ここ数年でファンの方との距離感をより一層縮めたいと思うようになったのはどうしてなんでしょう?
そう思えるようになるまでに7年近くかかったというのは、自分自身の日常生活における人間関係の縮図のようでもあって(笑)。私は誰に対してもものすごいスローペースで扉を開くタイプなんですよ。最初はすごく警戒心があって、誰に対しても怖さを感じてしまうところがあるんです。
──なるほど。つまり活動を重ねて行く中でファンの方たちとの信頼関係をゆっくりと育んできたからこそ、やっと距離を縮める段階に入ることができたと。
そう思います。そこに至るまで時間がかかったのは、私という人間を考えると、なるべくしてなった経過だったかなって(笑)。
「ハクセキレイ」で心地よく没入して
──ライブのセットリストに関してはどんなイメージで構築していきましたか?
セットリストはすごく悩みましたね。最初に持ってくる曲はアルバムの1曲目と同じにしたいという思いがあったので「それを愛と呼ぶなら」にすることはすぐ決まりました。そのうえで、私がYouTubeで活動しているときからやってきたカバー曲を織り交ぜつつ、それ以外は緩急を大事にして曲を並べていった感じでした。ちょっとほっこりとするゾーンがあったり、私のライブっぽさでもある、じっくりと聴いていただける時間があったり。そういった流れをいろいろ考えながら決めていきました。
──アルバム「コントラスト」に入っていた、新たな感触を持つアップテンポな楽曲をどこに配置するかも悩んだポイントでした?
そうですね。アップテンポの曲につなげる流れはすごく悩みました。ずっとバラードが続いても飽きてしまうし、じゃあアップテンポの曲をどこに置けばいいかっていうのもまた難しくて。最終的な形になるまで曲の並べ替えはかなりやりましたね。
──ご自身による朗読のあと、「ハクセキレイ」が歌われた流れはすごく感動的なシーンでしたね。
朗読はこれまでもずっとやらせていただいているし、これからもやっていきたいなと思っていることで。タイアップの付いていない、ちょっと優しい曲で朗読を入れていくのが自分としてはすごく好きなんですよ。なので、今回は「ハクセキレイ」を選びました。私が書いた詩をもとにスタッフの方々が作ってくださった線画の映像や照明の演出がすごく素敵だったので、観てくださる方々も心地よく没入していただけたんじゃないかな。あのパートは私もすごく好きなところです。
ハプニングは「これ次のMCで話せるじゃん」
──「contrast」はUruさんにとって最長となる全13公演のツアーでした。公演を重ねるごとに内容が変化していった部分もあったんでしょうか?
ありました。当初はセットリストに入れていなかった曲を途中で追加したり。演奏面に関しても、「ここはこういう感じがいいかもね」ってバンドの方々とお話しする中で変化したところもありましたね。1公演終わるごとに、より磨きをかけていこうという気持ちはみんなの中に強くあったと思います。
──バンドメンバーで言うと、ピアノの宗本康兵さんが初参加でしたよね。これまで楽曲制作でご一緒されることはあったと思いますが、ツアーを通して関係性がより深まったんじゃないですか?
はい。私が人見知りなのもあって、リハーサルのときはあまりお話しできなかったんですけど、宗本さんがすごく話しかけてくださるので助かりました(笑)。どの楽器もそうですけど、ピアノも演奏する方によって全然雰囲気が変わるじゃないですか。宗本さんは楽曲の持つ雰囲気や歌の温度感をすごく柔軟に吸収したうえで演奏してくださる方だなって思いました。宗本さんをはじめ、バンドの皆さんが私のMCにもちゃんとリアクションしてくださるのがすごくうれしくて。私はソロアーティストなので、どうしても1人でしゃべってる気持ちになってしまうんですけど、ふと横を見ればバンドの方々が大きなアクションでうなずいたりしてくれていて。なので、ライブにおいては私自身もメンバーの1人として、バンド感を味わえていましたね(笑)。
──ファイナル公演のMCでお話しされていましたが、今回のツアーではいろいろなハプニングもあったとか。
別に気を抜いていたわけではないんですけど、本当にいろんなハプニングがありましたね。そこも含めて楽しめました(笑)。
──予想外のことが起こってあたふたすることもないですか?
あまり動じないかな。ただ、自分でちょっとイヤだったのは、何かハプニングが起きたときに、「あ、これ次のMCで話せるじゃん」って思ってしまうことで。
──それはもうお笑い芸人さんの感覚ですよね。
そうそう。ハプニングをネタにしようとしてる自分がちょっとイヤでした(笑)。
──衣装を前後逆に着てステージに出てしまったこともあったそうですね。かなり衝撃のハプニングですが。
どうしてだったんでしょうね(笑)。歌っているときに腕の可動域が小さくて、すごく気になってたんですよ。で、曲間に前後逆で着ていることに気付いて……そのまま進めようかなと思ったんですけど、そのあとのパフォーマンスにも関わってくることでもあったので、ライブ中に着替えに行きました。あれは自分でもちょっとビックリしましたね(笑)。
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