一度きりの人生でこれをやっちゃいけないなんてことはない
──吉田さんは2015年から「ポカリスエット」のCMでさまざまな名曲を歌っていますが、その中で特に思い入れの深い曲はありますか?
ここ数年で記憶に新しいのは、キョンキョン(小泉今日子)さんの「常夏娘」かな。最初に候補曲として聴いたときは、“ザ・昭和の曲”という印象だったのでCMに合うのかなと、少し不安だったんですよ。でも、現代に合わせてアレンジし直されたら、驚くほど令和の曲になっていて。これはすごいなと思いました。踊りながら歌ったというのもあって、すごく楽しかったことを覚えてますね。また、このCMのすごいところは、普段楽曲の使用許可を出されないアーティストの皆さんが、次々とOKを出してくれるところなんですよ。
──「ポカリスエット」のCMでは「常夏娘」以外にも、ZARDの「揺れる想い」やスピッツの「優しいあの子」、Yellow Magic Orchestra「君に、胸キュン。」、矢野顕子の「ひとつだけ」、小沢健二の「さよならなんて云えないよ」などを歌唱されました。
井上陽水さんに至っては書き下ろしてくださって。
──それは久留米出身の吉田さんを応援しようという気持ちからだったんでしょうか?
いや、同郷なのはまったく関係なくて(笑)。ただただ、「ポカリ」のブランドイメージがいいってことなんです。高橋幸宏さんは自らアレンジに入ってくださいましたし、矢野顕子さんはコーラスで参加してくださって。本当にぜいたくな体験をさせていただいております。我々の中では、参加してくださったアーティストさんが“ポカリ親子”にとってどういう存在かという裏設定があって。オザケン(小沢健二)さんはニューヨークに住んでる親戚のおじさん、井上陽水さんはおじいちゃんという設定なんです(笑)。
──(笑)。CMでの歌唱に抵抗はないですか?
そうですね。「ポカリ」のCMに関しては、親子という役の設定があるので気楽にやらせていただいております。
──2018年にはJUJUさんの「かわいそうだよね(with HITSUJI)」にHITSUJI名義で参加されましたね。
これはもともとテレビのバラエティ番組で、JUJUさんとカラオケでデュエットをさせていただいたことがきっかけになっていて。「あれ? 私たち、声が合いますね」となりまして、その後JUJU さんから「一緒に歌いませんか」と声をかけていただいて実現したんです。JUJUさんとご一緒させていただいて、プロのすごさを目の当たりにしたというか。当たり前ですけど、発声も表現力も素人の私とは雲泥の差でした。日本武道館でのライブにゲストで出させていただいたことがあるんですけど、JUJUさんのすべてがもはや職人技で。歌はもとより、トークの安定感がすごいんです。JUJUさんは下積みも長いですし、叩き上げでやってこられた方のすごみみたいなものを感じましたね。
──吉田さんも叩き上げですよね。1997年に小劇場でデビューして、2007年に映像の世界に入って、朝ドラや大河ドラマ出演を経て、2014年にドラマ「HERO」でブレイクして。
まあ、そうですね。いろんな経験をしてきたからこそ、新しいことに飛び込んでみる勇気があるのかもしれないですね。だから、JUJUさんからお話をいただいたときも、最初こそ「私なんて」と思いましたけど、生きているとチャンスが来るタイミングみたいなものがあるとも思っていて。それは、誰しもに与えられるものではないということをわかってるんです。だからこそ、私はいつも「なぜ今この話が私のところに来たのかな?」ということを考えるんですね。今回はこれまでだったら絶対に来なかったであろう話をいただいたということは、「挑戦してみなさい」ということなのかなと思い、参加することにしました。
──JUJUさんと吉田さんの声は確かに似てますよね。最初に聴いたときはどっちがどっちの声かわかりませんでした。
そうなんですよね。レコーディングでは、JUJUさんの声が先に入った状態で、私はあとから声を入れたんです。サビでハモるんですけど、できあがった音源を聴いて「私、下のパートだったかな?」と思ったらJUJUさんの声だったりして。それくらい2人の声が似てるというのは、ご一緒して初めて発見したことでしたね。
──2019年にはディズニー映画「アナと雪の女王2」の吹き替え版に王妃のイドゥナ役で参加されて。
いまだにあの名作に自分が名前を連ねていることが信じられないですね。私の歌で映画のタイトルが出ることに毎回驚くんですよね(笑)。松(たか子)さんや神田(沙也加)さんのようなプロの歌い手さんの中に入ると、自分の歌の貧弱さがどうしても気になるんですけど、今言っていただいたように、王妃イドゥナとして、母親が歌った子守歌として「魔法の川の子守唄」を皆さんが受け入れてくださったことはありがたいことだなと思います。
──これまでいろんな形で音楽に触れてきた中で、音楽活動をやっていこうという気持ちにはならなかったですか?
ならなかったです。俳優でありながら、腰かけでほかのフィールドの方のお仕事に手を出すのは恥ずかしいことだと思っていたので。でも、ここ3、4年かな。事務所から独立したぐらいのタイミングで、「一度きりの人生でこれをやっちゃいけないなんてことはないな」と思うようになって。今回、こういうタイミングでライブのお話をいただいたのも、「歌っていいよ」ということなのかなと思って引き受けました。この先、また私が歌うことを求めていただけて、私自身も歌いたいと思ったら、歌います。音楽という字のごとく、楽しみながら音を紡いでいきたいです。
歌手としての吉田羊が存在する世界線
──今回のコンサートはどのようなステージにしたいと考えていますか?
皆さんご存知だと思うんですけど、Billboard Live TOKYOは東京のど真ん中、六本木にありまして、大きな窓から東京の街を一望できるという、最高に色っぽくて、ちょっぴりゴージャスな大人の雰囲気なんですね。なので今回は、往年の名曲など、思い入れのある曲に加えて、ジャズナンバーもセットリストに入れています。会場総立ちでペンライトをブンブン振り回すようなライブではないということだけはお伝えしておきます(笑)。あと、今はライブの合間に流すVTRを制作しておりまして。転換の時間もお客様に楽しんでいただきたいなと思って、いろいろと考えている最中です。
──プライベートでBillboard Live TOKYOにライブを観に行ったことはありますか?
今回の勉強のためにお邪魔しました。キラキラとめくるめくような照明で、夢の中にいるような体験でした。これが自分の好きな人のステージなら、その幸福感はいか程だろうと想像しまして。勝手に自分のファンの方の気持ちになってライブを拝見させていただきました。
──ビルボードはお客さんとの距離が近いですが、その点はいかがですか?
それがですね、舞台出身だからなのか、目の前にお客さんがいるほうが乗る!という性質でして(笑)。昔「鶴瓶のスジナシ!」という番組に出させていただいたんですけども、スタジオで収録した「スジナシ!」よりも、舞台版の「スジナシ!」のほうが楽しかったんです。それはやっぱり、目の前のお客様が作ってくれる空気感に助けられることを知っているからなんですよね。今回も、アイコンタクトが取れる距離で歌わせていただきますので、お客様を巻き込みながら歌っていけたらいいなと思っております。
──スペシャルゲストが登場する予定はありますか?
なにせ初めてなので、ゲストが来たほうがいいのか、全部吉田羊で埋めたほうがいいのか迷ったんですが、検討を重ねた結果……大泉洋さんとの“洋羊コンビ”で出させていただければと思っております。
──大泉洋さんとは2016年に大河ドラマ「真田丸」や2020年にWOWOWで製作されたリモートドラマ「2020年 五月の恋」で共演されていますよね。
歌のうまさ、トークスキル、そして、根っからのエンタテイナー。こんなにゲストにふさわしい方はいない!
──送り出しても帰らない可能性がありますね。
帰らなくてもいいんです。私が歌ってる間、横でツッコミを入れ続けてもらってもいいですし。これ以上ないベストキャスティングかなと思います。
──そして吉田さんのオリジナル楽曲「colorful」も9月9日に配信されました。
この曲は2020年のリモートドラマ「2020年 五月の恋」に登場する2人をイメージして作ったんです。初めての緊急事態宣言が出たときに、「おうち時間でやることがないし、歌でも作ろうか」と思って作った曲で。ドラマをご覧になった方には、作中のモトオとユキコをイメージして聴いていただけますし、ご覧になってない方には、大切な人を失ってしまった経験や思いと照らし合わせて聴いていただける曲になっています。
──楽しみですね。ライブタイトルの「Night Spectacles The Parallel」にはどんな思いを込めましたか?
「歌手としての吉田羊が存在する世界線があったとしたら、こんなライブをやっていただろうな」というコンセプトで付けたタイトルです。生のライブだけど、どこか非現実的な世界を楽しんでいただけたらと思います。
──また、「ご自身が思うとびっきりオシャレな格好」というドレスコードも発表されていますが、これはどのような格好をイメージされているんですか?
このドレスコードは、ライブに行く準備すらも特別なイベントになるといいなと思って発表しました。いつもなら躊躇する、少し振り切ったファッションが会場の雰囲気に合うのではないかと思っています。2日間だけの特別な空間ですから、勇気を出して、おしゃれをしていただきたいですし、何よりステージから皆さんのおしゃれした姿を見ることがすごく楽しみなんです。私は着物好きなので、私を楽しませるために着物で来ていただいてもけっこうです!
──あははは。ハードル上げますね。
もちろんドレスでもいいし、ワンピースでもいいんですよ。「勇気を出して買ってみたけど、なかなか出番がないのよね」という服があるじゃないですか。そんな服こそ、今回が出番です。
──では最後に、コンサートを楽しみにしているファンの方々にメッセージをお願いします。
私とファンの皆さまだけの特別な一夜を過ごしたいなと思っております。特に生のライブは、楽しんだもの勝ちですから。六本木に来られないという方のために、23日の公演は生配信も予定しておりますので、前のめりで楽しんでいただきたいと思います。
公演情報
吉田羊Night Spectacles The Parallel~ウタウヒツジ~25th Anniversary Special
2022年9月22日(木)東京都 Billboard Live TOKYO
[1st]OPEN 16:00 / START 17:00
[2nd]OPEN 19:00 / START 20:00
2022年9月23日(金・祝)東京都 Billboard Live TOKYO
[1st]OPEN 15:30 / START 16:30
[2nd]OPEN 18:30 / START 19:30
※9月23日公演の第2部のみ配信あり。
<出演者>
吉田羊
スペシャルゲスト:大泉洋
配信視聴チケット販売中
配信日時:2022年9月23日(金・祝)19:30~
※途中から視聴した場合はその時点からのライブ配信となり、巻き戻しての再生はできません。
※アーカイブ配信はありません。
<視聴料金>
WOWOW Webアカウント限定チケット:3000円(税込)
一般チケット:3500円(税込)
<販売期間>
2022年9月23日(金・祝)20:00まで
WOWOWオンデマンド / YouTube公式チャンネルでは、公演に向けた番組「吉田羊『メグルヒツジ』ウタウ前に話すこと。」を配信中。
プロフィール
吉田羊(ヨシダヨウ)
福岡県生まれの俳優。小劇場で活動を開始し、2007年以降はテレビ、映画、舞台で幅広く活躍している。2018年にリリースされたJUJUの「かわいそうだよね(with HITSUJI)」にゲストボーカルで参加。2019年にはディズニー映画「アナと雪の女王2」日本語吹き替え版にて王妃・イドゥナ役の声を担当し、劇中歌「魔法の川の子守唄」で歌声を披露した。また2015年から出演している大塚製薬「ポカリスエット」のCMではさまざまな楽曲をカバーしている。
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