生産者の顔が見える野菜、どういう人が作っているかわかる音楽

──YOASOBIは小説を音楽にするユニットというコンセプトで活動していて、自分たちの思いを歌っているわけではないのに、ファンへの感謝の思いなどが歌からヒシヒシと伝わってきました。ikuraさんがライブで歌ううえで心がけていることはありますか？

ikura　レコーディングするときとはまったく違う意識なんですよね。音源は原作の物語の世界観やストーリーをよりわかりやすく伝えるために主人公の気持ちに寄り添ったり、楽曲が持つ背景を考えたりしながら歌を乗せているんですけど、ライブではとにかく「YOASOBIのAyaseとikuraがここにいて皆さんに向けてパフォーマンスしています」ということを念頭に置いて歌っています。今ここにYOASOBIという実態があって、皆さんに向けてパフォーマンスしていますよということがわかるようなライブにできるように思いを込めて歌っていました。

ikura

──手作り感みたいなところって、ボカロ的なサウンドとはかなり離れたところにあるものかなと思うんですけど、お二人はなぜそこまで手作りにこだわるんでしょう？

Ayase　野菜も生産者の顔が見えるもののほうを買いたい感覚と近いというか。どういう人間がやっているかを知ったほうが楽曲に対して興味を持ってもらえるし、奥行きもきっと出てくると思っていて。もちろん僕らの人となりを知らずに曲だけ好きでいてくれてもいいんですよ。でもそれを作っている人、歌っている人が例えば「こんなに面白い人でした」とか「こんなに律儀で誠実な人でした」ってわかったときにまた聞こえ方も変わってくるんじゃないかなって。その人たち自体に興味を持ちだしたら、そこから音楽の聴き方も変わっていくだろうし、自分たちのことは知ってもらいたいなと思っています。

武器を増やしてレベルアップしている感じがある

──YOASOBIはデスクトップミュージックから始まったユニットということもあって、ちょっと現実感がない存在なのかなと思うんです。それがいざ目の前に現れてあれだけ圧倒的な演奏と演出で魅せてくれた。これですごくユニットとしても説得力が増したんじゃないかなと思うんですよね。

Ayase　ネクストステージに上がったなって感じは自分でもします。ゲームの中で新しいトロフィーがポロンって解禁された感じというか（笑）。まずは配信で楽曲をリリースして、EPを配信して、CDを出して、配信ライブをやって……1つずつやれることが増えていく中で、「NHK紅白歌合戦」に出場して、今回のような武道館のライブをやって、自分たちの音楽の表現方法の1つとして新たなツールが解禁された。じゃあ次はツアーをやりましょうとか、フェスに出ましょうとか、どんどん現実的なイメージが沸くようになってきた。コロナ禍が明けたら海外ツアーもやってみたいですし、1つひとつをクリアしていくことで、どんどんやりたいことや夢が具体性を帯びてきているんですよね。2021年は僕らのパーソナルな部分を知ってもらいたい、YOASOBIという実態に触れてもらいたいという思いで活動してきたので、それがラジオだったり有観客ライブだったりで、徐々に伝えられるようになってきたのかなと。武道館での有観客ライブは2021年の目標をより果たせる場所だったと思います。

──どんどん武器を増やしていくのは、まるでRPGのようですね。

Ayase　そうですね。どんどん武器を増やしてレベルアップしている感じがあります。

Ayase

2022年はライブを主軸に置いて活動したい

──武道館公演はYOASOBIのこれからの歴史の中できっと記念碑的なライブになりますね。

Ayase　そうですね。めちゃくちゃ気が早いけど10年後とか、YOASOBIの結成10年のタイミングでもう1回同じセットで武道館ライブをやりたいねとか話しているんです。あれだけこだわりを持って作った演出たちがあの2日間でおしまいっていうのが衝撃的で。武道館でしかできないセットなので、またメモリアルなタイミングで復活できたらいいなと思っています。

──素敵ですね。最後に2022年の目標があれば教えてください。

Ayase　2021年の活動におけるゴールを武道館で迎えて、2022年は第2章の始まりの年になるんじゃないかなと思っています。第1章で培ってきたものたちを使って自発的に何をしていくかということがすごく大事になると思うので、ツアーをしたり、フェスに出たり、対バンイベントをやったり、ライブができる前提で活動したいですね。今回武道館で「はじめまして」できなかった人たちにも会いに行きたい。ライブを主軸に置いて活動したいです。

ikura　有観客ライブが始まりだとしたら、私たちは2年をかけてやっとスタート地点に立てたので、まだ会えていない人たちに会いに行きたいですし、ライブでも魅せていけるユニットになりたいです。ライブでも「YOASOBIって最高だな！」って思ってもらいたいし、ファンの人にもまた来たいなと思ってもらえるライブをしたい。まだまだ実力が足りないので、これからもたくさん練習をして経験値を積み上げていかないとなって思っています。

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