WOWOW「YOASOBI『NICE TO MEET YOU』」放送記念インタビュー|2人の思いが詰まった「はじめまして」の武道館公演を振り返る

YOASOBIが昨年12月に東京・日本武道館にて行った初の有観客公演「NICE TO MEET YOU」の模様が、1月22日(土)20:00よりWOWOWで放送・配信されることが決定した。第1弾楽曲「夜に駆ける」がスマッシュヒットを記録し、瞬く間に人気アーティストの仲間入りを果たしたYOASOBI。コロナ禍のデビューとあって、有観客公演は、結成から2年という月日を経て行われた。

初ライブが武道館2DAYSというだけでも驚きだが、1682枚の床面LEDディスプレイでできた駆動式の巨大なセンターステージをはじめ、ド派手な演出が盛り込まれた公演の内容も来場者を驚かせた。WOWOWでそのライブの模様が放送・配信されることを記念して、音楽ナタリーではYOASOBIの2人にインタビュー。こだわりが詰まったライブ演出や初の有観客ライブに込めた思いなどをたっぷり聞いた。

取材・文 / 清本千尋撮影 / YURIE PEPE

あの瞬間は忘れられない

──コロナ禍に結成されたYOASOBIにとって初の有観客ライブ「NICE TO MEET YOU」は、武道館という大きな会場で開催されました。ステージに登場してファンと対面したときの思いを聞かせてください。

Ayase 感無量でしたね。本当に感動しました。どれだけ頭でイメージしていても、お客さんに生の拍手で迎えてもらえたあの一瞬は、何にも代えがたい感覚になりました。武道館の形状もあり、拍手が降り注いでいる感じがあって、それを浴びたときは本当に目頭が熱くなりました。

ikura 黒い幕の外で待っているときも会場内の音は聞こえていて、いざその幕をくぐってステージに拍手に迎え入れられたときは、心拍数がバーッと上がりました。ファンの皆さんの実態を確認できたのが本当に感動的で、あの瞬間は忘れられないです。

──私は会場にお邪魔させていただきましたが、幅広いファン層に驚きました。

Ayase ライブというものに初めて来たお客さんも相当多かったんじゃないかな。お子さんがYOASOBIを好きでそこからご両親も好きになってくれて、一緒に遊びに来てくれた方も多かった。2世代にわたって楽しんでくれている姿も見られて、本当にうれしくなっちゃいましたね。

YOASOBI

YOASOBI

無邪気なアイデアを具現化した規格外のステージ

──Ayaseさんは今回のライブの下見で初めて武道館を訪れたんだとか。

Ayase はい。初めてでした。ライブを観に行くよりも先にライブをすることになるとは……しかも2DAYS。

Ayase

Ayase

ikura 下見に行ったときに客席からセンターステージを想像したらどの方向からでも近く見えて印象が違うなと思いました。ステージも大きく作っていただいたので、私がステージの端のほうを歩いているときは本当にお客さんと近くて、全員と目が合った感じがしました。

──センターステージと言っても1682枚の床面LEDでできた今まで見たことがないようなステージでした。ライブの構成やステージセットなどはどういうイメージで決めていったのでしょう?

Ayase まず、会場にいる全員がきちんと観られる360°のセンターステージにしようということは決めていました。でも一般的なセンターステージの作り方をしてしまうとどうしても機材の関係上、柱ができてしまう。その柱を取っ払うためにはどうしたらいいだろうと話し合いをしていく中で、ご時世的に当初はキャパの半分しか入れられないという話もあったので、それならばいっそのことアリーナをつぶして、機材を吊るすのではなくてステージの下に敷いてしまおうというアイデアが出たんですよね。スタッフさんと無邪気に「これやったら面白いんじゃない?」というアイデアをどんどん出してそれを実現したのがあのステージでした。

YOASOBI「NICE TO MEET YOU」の様子。(Photo by Kato Shumpei)

YOASOBI「NICE TO MEET YOU」の様子。(Photo by Kato Shumpei)

YOASOBI「NICE TO MEET YOU」の様子。(Photo by Kato Shumpei)

YOASOBI「NICE TO MEET YOU」の様子。(Photo by Kato Shumpei)

──武道館に入ってステージセットが見えたときは、率直に「すごくお金がかかってる!」と思いましたよ(笑)。あの規模ってドームクラスのセットですよね?

Ayase お金はめちゃめちゃかかっていると思います(笑)。ドームやスタジアムの公演では、2、30台くらいのトラックに機材を積み込んで搬入をするらしいんですけど、YOASOBIの武道館には約40台のトラックがやってきました。音にもこだわりたかったので、そのためにも機材が増えてしまって。テックチームの努力でなんとかあの形のライブができたのでありがたい限りでした。

──確かに音がすごく気持ちよかったですね。まったくこもっていなくて。

Ayase 僕も会場の隅々まで移動してサウンドチェックをして、当日リハーサルの時間をたっぷり使って試行錯誤しながら音作りをしたので、そう言っていただけると本当にうれしいです。

──ikuraさんがライブ中に「ここには愛しかない」という話をしていましたけど、そこまでこだわり抜いたAyaseさんこそ、来場者に対して愛しかないですよね。

Ayase (笑)。「はじめまして」は一度きりのことなので、最高にいいものにしたいという気持ちが強かったです。

──これが初ライブという観客の方も多かったと先ほどAyaseさんがおっしゃっていましたけど、これだけ演出を盛り込んだライブが初ライブだと、今後のライブがすべて物足りなくなってしまうのではと心配になります。

Ayase いろんな現場を普段見ているうちのスタッフたちも「YOASOBIのこのライブが初ライブの人はこれが基準になるからかわいそう」って言っていました(笑)。僕らとしてはとにかくまた来たいと思ってもらえるような空間を作ることを目標にしていたので、それは無事達成できたんじゃないかなと思います。

ikura(Photo by Kato Shumpei)

ikura(Photo by Kato Shumpei)

Ayase(Photo by Kato Shumpei)

Ayase(Photo by Kato Shumpei)

歌詞を一切間違えずに歌ったのは奇跡

──テーマはどういったものを考えていたんですか?

Ayase テーマパークっぽい感じにしたいなと思ったんですよ。お客さんをまるで夢の中のような非現実的な世界に連れて行きたかった。例えばディズニーランドなんかは、入った瞬間から「夢の世界だ」って思うじゃないですか。そういう世界観を武道館の中に作りたかったんですよね。

YOASOBI「NICE TO MEET YOU」の様子。(Photo by Kato Shumpei)

YOASOBI「NICE TO MEET YOU」の様子。(Photo by Kato Shumpei)

──ikuraさんは初の武道館ライブをどんなものにしたいと考えていましたか?

ikura 演出に関しては、ライブスタッフチームの皆さんから挙がってくるアイデアに感動して、「それやりましょう!」って感じだったんです。私が一番こだわったのはお客さんとの距離感ですね。「ハルカ」と「たぶん」という曲でステージの外周を歩いたときは、「あなたに向けて歌っていますよ」と伝えるために誰1人残さず目を合わせながら歌おうと心がけました。スタッフさんは私の思いを汲んで、外周を歩きながら歌うときはたっぷりと時間を取ってくれましたね。

ikura

ikura

──ステージは最大4.4mまで上昇して、激しく可動もしていました。あんなにステージが動く中で身振り手振りをしながら歌って移動しているikuraさんを見ていると「マルチタスクだ……」と思いましたが(笑)。

Ayase 本当にすごいんですよ。当たり前のキャパシティとして、あのステージで、導線を考えながら歌詞を一切間違えずに歌ったのは奇跡に近い。本当にできるのかどうか、大人たちでかなり協議しましたね。リハーサルでしっかりバミリを貼って導線も確認しながら歌って……本当にすごかったと思う。

ikura ステージング指導をしてくれたterupopさんやボイストレーナーの花れんさんと一緒にすべての曲のセクションを練習しました。基礎的なところは練習でしか補えないので、ただひたすらやるのみという感じで、どんな動きになってもぶれないように歌えるようにがんばりましたね。自分でできる最低限のことはやらないといけないと思って走ったりもしたし、武道館の前は1人で合宿をしている気分でした。