THE COLLECTORSが3月に東京・日本武道館で開催したワンマンライブ「THE COLLECTORS 35th Anniversary "This is Mods"」の模様が、WOWOWプラスで4月24日(日)に放送される。
「THE COLLECTORS 35th Anniversary "This is Mods"」は、THE COLLECTORSが2017年3月以来、5年ぶりに開催した自身2度目の武道館ワンマン。「今のTHE COLLECTORSが最強だ」ということをファンに証明すべくステージに上がったという4人は、2000年代以降に発表された楽曲を中心に全21曲をパフォーマンス。最新にして最強のTHE COLLECTORSを提示してみせた。
WOWOWプラスでの放送を前に、音楽ナタリーでは加藤ひさし(Vo)にインタビュー。武道館公演のパフォーマンスと演出に込めた思いや当日の感想を、じっくりと振り返ってもらった。
取材・文 / 秦野邦彦撮影 / 山崎玲士
半年ぶりに散歩に行った犬みたいな感じ。もう、土手中走り回って(笑)
──5年ぶり、2度目の日本武道館公演「THE COLLECTORS 35th Anniversary "This is Mods"」、素晴らしいライブでした。まずは終えられての感想を聞かせてもらえますか?(参照:おかえり、THE COLLECTORS!モッズ魂示した2度目の武道館ワンマン)
やっている最中はすごく楽しくなっちゃったね。ずっとマスクをしなきゃいけない生活が2年以上続いてるじゃないですか? ライブはマスクをしないで歌えるから、マスクせずに自由にのびのびできる2時間っていうのがとにかくうれしくて。武道館のステージは広いから、気にしないで声が出せるんですよ。ライブハウスだと「前の人に唾が飛ぶんじゃないか」とか、そういう心配があるじゃない? そういうことも心配せずにやれたんで、ホント、半年ぶりに散歩に行った犬みたいな感じ。もう、土手中走り回って(笑)。それが最初の印象だったね。「うわっ、めっちゃ気持ちいいなこれ」って。
──観客席からの印象ではメンバー4人とも落ち着いたもので、武道館を自分たちの庭のように扱っているように見えました。
武道館のサイズはたぶん俺たちに合ってるんだよね。周りがやらせてくれないだけでさ(笑)。THE COLLECTORSの曲もそうだし、THE COLLECTORSが演奏するスケール感っていうのかな。ステージの上には、たった4人しかいないわけですよ。サポートミュージシャンもいないし。もちろんライブハウスにはライブハウスの楽しさがあると思うんだけど、THE COLLECTORSはやっぱりあれぐらい大きい会場でやったほうが、演奏力や曲の持ってる本来の質みたいなものが一番伝わるんじゃないかなって思うよ。いつも大きい場所でやるたびにそう思ってるのね。だから矢沢永吉さんとかエリック・クラプトンみたいに、しょっちゅう武道館でやれるようなアーティストになりたいなとずっと思ってるんですけど。
──THE COLLECTORSといえば、これまでもCLUB QUATTROだったり日比谷野音だったり、ホームと言える場所がいろいろありますが、武道館もその1つに加わりそうな印象を受けました。
いや、本当に加えたいぐらいです。例えば、年に1度は武道館をやってその年を終えるみたいな企画を持ちたいぐらい、自分としてはやりやすいし、楽しいホールです。そして何より、例えばThe Whoとか自分が好きなバンドをロンドンで観たとき、演奏が始まる前に映し出される映像とかセットを観てものすごく興奮したんだけど、そんなライブを日本であんまり観たことがないんだよね。そういったものを持ち込めて、自分がいいと思ったものをみんなに教えてあげられるスペースとしては武道館ぐらい広くないと。そこが実は一番、武道館でやりたい理由かな。
すごく大事にしているパート
──今回のライブでは、モッズの象徴たる英国空軍のターゲットマーク型の巨大な照明が素晴らしく、メンバー紹介も兼ねたオープニング映像の「This is MODS」から、一気に持っていかれました。
そう! 俺がファンだったら、もうオープニングで血が騒いで、手が挙がると思うんだよ。ロンドンでThe Whoを観たとき、自分はそうなってるから。そういう気持ちをみんなに味わってほしいし、それが表現できる場所として武道館は一番理想なんだよね。オープニングについては、最初の映像でショーが始まるワクワク感を感じてから3曲目くらいまでが、実はライブの中で一番楽しい瞬間なんだよね。だからもう、そこはすごく大事にしているパートですね。5年前にやった最初の武道館ライブのときも、映像がけっこういい感じで仕上がっていたんです。前回はメモリアルなライブだったから、デビューのときの写真からざーっと年代ごとに自分たちの活動を追っていって。それは資料がたくさんあったから作りやすかったんだけど、今回のオープニングを前回からの5年間で表現しようとすると、写真もみんな見覚えがあるようなものばっかりになっちゃうから、「だったらスタジオに入って撮影しよう」ってことになって。これがまた大変だったんですよ。3分ぐらいの飽きさせない映像といったら、ミュージックビデオを1本作るようなもんですからね。曲もオープニングのために作ったし。すごく大変でした。
──オリジナル曲を用意されたんですね。
ライブが始まったときに生演奏のほうが迫力あるように聞こえなきゃいけないから、打ち込み系がいいなと思って。それでちょっとボコーダーを使ってね。モッズっぽくはないんだけど、そっちのほうが演奏が始まったときにいいだろうなということで、プロデューサーの吉田仁さんに打ち込みをやってもらって。1980年代初頭のネオ・モッズが出てきた頃に流行っていたテクノなイメージで「This is MODS」と歌うのはカッコいいじゃないのって話になって。それでああいうサウンドになったんだけどね。
「今の4人は最高のコンディションだよ」ということを見せる武道館にしよう
──昨年11月から今年2月にかけて全国11カ所を巡ったツアー「It's Mod Mod World Tour」から日本武道館公演までの流れについては、皆さんの間で具体的にどんな計画があったんですか?
毎回毎回……と言っても2回しかやってないんですけど、最初の武道館のときは30年バンドをやってきて初めての武道館ワンマンだったので「30年のTHE COLLECTORSの歴史をみんなに知ってもらうための武道館にしよう」という思いがあったんです。だから、もう本当にバンドヒストリーを感じるような1stアルバムから最新作まで満遍なくやろうって感じだったんだけど、今回の武道館はこの5年の“最強のTHE COLLECTORS”を見せるための武道館というテーマにしたので、新曲をふんだんに入れてセットリストを考えたね。かと言って35年やってるバンドですから、古い曲をまったくやらないわけにいかない。まあそこはちょっと味付け程度に入れて、とにかく「今の4人は最高のコンディションだよ」ということを見せる武道館にしようと考えながら、ツアーをスタートさせたんです。ただ、本来ならばツアーの流れを受けて「この曲をちょっと変えていこう」とか「武道館では武道館に合ったスケールの大きい曲をもっと入れようか」とか、そういう話し合いもしていくと思うんだけど、今回はコロナが蔓延している状況の中で、とにかく健康でステージに立つことが第一だったんでね。リハーサルをやればやるほど、感染のリスクが高まるじゃないですか。もう何もできなかったね。ツアーでやったことをそのままドン!とやろうってこと以外、考えられなかったんだよね。
──とは言えツアーで練り上げられたセットリストですから、歌も演奏も完璧でした。
ツアーをやる中で体の中に曲が染み込んでいくから、やりやすかったというのはあるんだけどね。でもやっぱりツアーでライブを観て、わざわざ武道館に足を運んでくれた人に「あ、この曲、ツアーでは聴けなかったよね」みたいな曲が1曲でもいいからあってもよかったかなとは思います。
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「これが35年なんだ」って妙に納得しながら歌ってた