“こなす”ライブをやったことは一度もない
──11月7日に行われるツアーファイナルのさいたまスーパーアリーナ公演は、WOWOWで生中継されます。さいたまスーパーアリーナという会場にはどんな思い出がありますか?
渋谷 「VIVA LA ROCK」に出させてもらったり、友達のライブや格闘技のイベントを観たり、何度も足を運んでますね。あと、さいたま新都心にライブハウスがあるんですよ。
柳沢 HEAVEN'S ROCKね。
渋谷 そうそう。HEAVEN'S ROCKからさいたまスーパーアリーナが見えるんですけど、昔HEAVEN'S ROCKでライブをやらせてもらったときに、「いつかたまアリでライブをやれるかな?」「ないない」みたいな話をしたことがあって(笑)。その場では冗談みたいな感じでしたけど、どこかで視野に入れていたところもあったと思うんです。あれから数年経って、2日間やれることになって。よくぞここまで来たなと思います。
──ライブハウスで戦っていた時期とアリーナツアーまで登ってきた現在で、ライブに対する意識に変化はありますか?
渋谷 ライブに挑む姿勢はまったく変わらないですね。少なくとも、“流す”ライブとか“こなす”ライブをやったことは一度もないです。
──素晴らしい。
渋谷 メンバー4人ともすごく真面目ですからね。規模が大きくなるにつれて、やれることも増えて。結成当初の下北沢CLUB251と今回のアリーナツアーでは、ライブの内容は確実に変わってるんですけど、ライブに臨むモチベーションや姿勢は変わらないと思います。今も緊張するし、もちろん楽しいし、「最高だった」というときもあるし、めっちゃ落ち込むこともあるので。
藤原 確かにずっと変わってないですね。緊張感と楽しさが両方あって、その量がどんどん増えているというか。やるたびに「こうすればもっとよくなるかも」と思うし、それを1つひとつクリアしてきて。個人としてもバンドとしても、やれることはまだまだあります。今はチームで動いているので、いいライブができたときの喜びもさらに大きくなってますね。
上杉 このバンドを始めて17年経ちましたけど、現時点でもステージに立つのが“ちゃんと怖い”んですよ。だからこそ本気で準備するし、「絶対にいいものにする」と決めてライブに臨んで。ちゃんと怖いのは、プレッシャーがあるからでしょうね。いいライブをして、しっかり自分たちを出せないと、バンドとして活動している意味がないと思ってしまうので。
──すごい覚悟ですね。
上杉 もちろん「いいライブがやれてよかった」とジワッと来ることもありますけどね(笑)。演奏技術は昔とは比べものにならないし、確かにやれることは増えてるけど、これだけの年数をやっていれば当たり前のことで。それよりも“怖い”という気持ちを持っていられるかどうかが大事だと思うんです。そこに技術が伴えば、本当の意味で一流になれるのかなと。
柳沢 個人的なことになってしまうけど、ライブをやることで救われたり、「俺はやっぱりバンドマンなんだな」と感じる瞬間が増えましたね。悩ましいことがあったり、イライラしていたり落ち込んだりしていても、ステージに立つと元気になるんですよ。自分たちが作った音楽にも助けられてきたし、バンドの音に奮い立たせてもらうこともあって。それが自分にとってのSUPER BEAVERの存在意義なのかなと。
──オーディエンスに与えてもらうこともある?
柳沢 それはめちゃくちゃありますね。
渋谷 うん。2020年、元気がなかった理由は完全にそれですから。日によって、「今日はもらえるものが多かった」というときもあれば、「与えることができた」ということもあって。もらえたと感じたときはまったくお腹が空かなくて、与えられたときはめちゃくちゃ食って、すぐ寝ちゃう(笑)。与えたりもらったりというバランスは、人間関係と同じですよね。
それぞれの場所で楽しんでほしい
──最後に、WOWOWで生中継されるさいたまスーパーアリーナ公演を楽しみにしている方にメッセージをいただけますか?
渋谷 はい。まず、この状況の中でオンステージできて、観に来てくれる人がいるということ自体がありがたいなと思ってます。チケットが取れなかった人、いろいろな事情で会場に来られない方もいると思うんですけど、WOWOWで観てもらえるのもうれしいですね。我々のことを最近知ったという人もいるだろうし、「こいつら、どんなもんかな?」という感じで観てくれてもまったく構わなくて。何かのきっかけや糧になるようなライブをやりたいし、皆さんにはフラットに楽しんでほしいです。
藤原 2020年は配信ライブを4本やって、画面の向こうの“あなた”を想像して、どうしたら届けられるかを考えて。そういう届け方も身に付いたとまでは言わないけど、今回の生中継でも「画面の向こうで観てくれてる人がいる」と意識してライブをやれると思います。
上杉 バンドの状態は今が一番いいと思うし、1人でも多くの人に今のSUPER BEAVERを観てもらいたいですね。絶対にいいライブにすることは約束するので、ぜひ楽しみにしていてください。
柳沢 会場に来てくれる方に楽しんでほしいのはもちろんですけど、好きなアーティストのライブが生中継されるって、すごくワクワクすると思うんですよ。自分も10代の頃、好きなバンドのライブが中継されるときは、「始まる前に風呂入っちゃおう」とか、いろいろ準備して。そこまでワクワクできることも少ないと思うし、自分たちがそういう存在でいられるのがすごくうれしいですね。観てくれる皆さんの期待を超えるライブをやるので、それぞれの場所で楽しんでほしいです。
- SUPER BEAVER(スーパービーバー)
- 渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“33才”広明(Dr)の4人によって2005年に東京で結成されたロックバンド。2009年6月にEPICレコードジャパンよりシングル「深呼吸」でメジャーデビューした。2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタートさせた。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと契約を結んだことを発表し、6月にメジャー再契約第1弾となるシングル「ハイライト / ひとりで生きていたならば」をリリース。2021年2月にアルバム「アイラヴユー」を発表し、7月に映画「東京リベンジャーズ」の主題歌を表題曲としたシングル「名前を呼ぶよ」をリリースした。7月よりライブハウスツアー「SUPER BEAVER 都会のラクダSP 行脚 ~ラクダフロムライブハウス~」の追加公演を実施し、10月よりバンド史上最大キャパシティとなるアリーナツアー「SUPER BEAVER 都会のラクダSP ~ 愛の大砲、二夜連続 ~」を行っている。