WOWOW「SUPER BEAVER 都会のラクダ SP ~ 愛の大砲、二夜連続 ~」 特集 バンド史上最大規模のアリーナツアーへの思いと、変わらない信念

SUPER BEAVERが現在開催中のアリーナツアー「SUPER BEAVER 都会のラクダ SP ~ 愛の大砲、二夜連続 ~」より、11月7日に埼玉・さいたまスーパーアリーナで行われるファイナル公演の模様がWOWOWライブにて生中継およびライブ配信される。

これまでずっとライブという場を大切にし、ライブパフォーマンスで多くの人々を惹きつけてきたSUPER BEAVER。2021年はライブハウスツアーからホールツアーまで、ほとんど間を空けることなく精力的にライブ活動に取り組み、10月9日より愛知・日本ガイシホール、大阪・大阪城ホール、埼玉・さいたまスーパーアリーナの3都市を舞台にしたアリーナツアーを行っている。

音楽ナタリーではアリーナツアー開催前にメンバーにインタビューを行い、昨年から今年にかけてのバンドの動きを振り返りつつ、最大キャパシティとなるツアーへの思いを聞いた。SUPER BEAVERのライブに満ちあふれる強いエネルギーはいったいどこから来ているのだろうか。取材をしていく中で彼らのライブに対する姿勢や信念が明らかになっていった。

取材・文 / 森朋之撮影 / 伊藤元気

現実的にできることが明確になってきた

──2月にアルバム「アイラヴユー」をリリースして、7月に映画「東京リベンジャーズ」の主題歌「名前を呼ぶよ」を発表、さらにライブも継続するなど2021年は充実した活動が続いてますね。

渋谷龍太(Vo) そうですね。ライブの本数からしても、去年とは比べ物にならないほど活動できているので。ツアーをやって、曲について考えて、制作して。こういう日々がどれだけ尊いか実感できているし、ありがたい日々を過ごさせてもらってます。

藤原“33才”広明(Dr) 夏には延期、中止になったイベントもありましたけど、状況を見ながら、ライブハウスも回れていて。バンドをやってる実感がありますね。

上杉研太(B) 2020年はほとんどライブをやれなかったんですけど、2021年1月からガッツリ動けるようにみんなで考えて、準備していました。その後もいろいろな状況の変化があって、そのたびに議論しましたけど、ルールに沿いながら「こういう活動をやっていこう」という強い意思を持って進んでこれたと思います。世の中的にはまだまだ大変ですけど、バンドとして現実的にできることは明確になってきたのかなと。

柳沢亮太(G) うん。去年の7月、8月あたりは、本当にポッカリ予定が空いてしまって、悪い意味で暇だったんです。今年はツアーとリリースをしっかりやれているし、去年の状況を経験したからこそ、毎日やれることがあるのがすごくうれしいですね。

SUPER BEAVER

しっかり“残る”ライブをやれている自信がある

──10月27日には、昨年行った4本の配信ライブとインタビューなどを収めた「LIVE VIDEO 4.5 Tokai No Rakuda Special in "2020"」がリリースされます。去年は本当に大変な1年だったと思いますが、その時期の活動をまとめて映像作品として発表することにも意味があるなと。

渋谷 2020年は本当にいろんな気持ちになったし、大きく感情が動いた1年だったんですよ。楽しくないことのほうが多かったですけど、その中で自分たちが音楽をやっている意味、聴いてくれる人たちがいることの意味を改めて見つめ直して、そこに希望も感じて。17年目を迎えて、自分たちが何を大事にしているかが伝わる作品になっていると思います。

──バンドを続ける意義みたいなものにも、向き合わざるを得なかった?

渋谷龍太(Vo)

渋谷 そうですね。要所要所で立ち止まったり、振り返ったりすることはやってきたんですけど、去年は強制的に活動が止まってしまって、根本的なところに立ち返るしかなかったので。苦しかったけど、うれしさや喜びを感じられる瞬間もあったし、普段は経験できないことばかりでした。

藤原 悩んで考えたことも、その中で得られた喜びも含めて、全部パッケージされてますね。カッコつけて、いいところだけを見せればいいという考え方もあるでしょうけど、こうやってすべてを見せることで、自分たちの活動が伝わればいいのかなと。今だったら恥ずかしくないというか、どんどん素の自分たちを見せられるようになってる気がします。

上杉 バンドの姿勢、根底の部分が出ているし、まさにドキュメンタリーですよね。2020年は空白だったかと言えば、決してそうではなくて。歩みを止めず、みんなで考えて、やってきたことが今の状態につながっていると思うんです。自分たちが説明しなくても、これを見てもらえれば「去年こういうことをやったから、今こうなってる」ということがわかってもらえるんじゃないかなと。

柳沢 単純にすごいボリュームだしね(笑)。今年は自分たちも「カッコいいライブができてる」と思えているし、観に来てくれたお客さんにしっかり“残る”ライブをやれているという自信もあって。去年やらせてもらった配信ライブだったり、その中で模索していたことも、今年につながっていると思うんですよ。もし去年何もやれなかったら、いざライブができるようになっても戸惑ったんじゃないかなと。自分たちはライブがすべて、ライブが主戦場だという認識のまま進めたからこそ、今年もいい状態でステージに立てているんだと思います。

渋谷 うん。「今のライブが一番カッコいい」って実感できてるのは、すごくいいですよね。

50人のライブハウスから1万人規模のライブまで

──10月9日からはアリーナツアーがスタートします(取材は10月頭に実施)。これまでで最大規模のツアーですね。

渋谷 「自分たち史上、一番デカい」というのは、やっぱり気持ちいいですよ。しかも3都市6公演でやらせてもらえて。この状況なのでフルキャパシティというわけにはいかなかったけど、ありがたいことにチケットも売り切れたんですよ。このツアーを企画したのは3、4年前なんですけど、当時は正直まったく想像できてなかったんです。あまりにも絵空事すぎるというか、「え、マジで? ホントにやれるの?」みたいな感じで(笑)。

柳沢 ははははは。でも、そうだよね。

渋谷 200人規模のライブハウスをいっぱいにできなかった時期も長かったし、「アリーナって、なんの話?」って(笑)。その感覚は今もあまり変わってないですね。自分たちの音楽がどれくらい聴かれていて、どれくらいの人に支持されているかはしっかり受け止めているし、それを認識しないのは失礼だと思うけど……。

──ライブハウスを埋めようと必死になっていた頃の記憶も残っている、と。

渋谷 はい。自分たちがナンボのものかは、客観視したり主観視したり、俯瞰もしていて。いろんな表情があって面白いですよ、SUPER BEAVERは(笑)。浮足立つのが似合わないバンドだし、着実に一歩ずつ進んできて。ライブに関しても、すべての景色を覚えてますからね。

藤原“33才”広明(Dr)

──ライブの規模が大きくなっても、やることは変わらない?

藤原 (ステージの大きさを)意識はしますけどね。「ライブハウスでもアリーナでもやることは変わらない」と自分に言い聞かせているところもあるし。ドラムは固定の位置だし、実際、やることは同じなんですよ。前の3人はステージの大きさによって変わるところもあるし、大変だと思いますけど。

上杉 代々木(国立代々木競技場第一体育館)もやったし、フェスやイベントに出させてもらって、アリーナがどういう雰囲気なのかはわかっていて。ここに来てようやく、ライブハウスでもホールでもアリーナでも、変わらない気持ちでステージに立てるようになったのかなと。どんな会場でも一生懸命やるし、熱量やカロリーは同じなんですよね。あとは「この会場で、一番いい音を出すために」とか「どうやったら一番カッコよく見せられるか」ということだけなので。

柳沢 アリーナツアーも全公演、「今日、めっちゃよかったね」って言えたらいいなと思います。さっきも言いましたけど、今年はずっといい感じでライブをやれているし、自分たちがやることは変わらないので。お客さんのことはいろいろと考えますけどね。ライブハウスには行けなくても、「アリーナだから、今年初めてライブに来た」という人もいらっしゃるだろうし、足を運んでくれた方に「特別な1日だった」と思ってほしいなと。「ついにSUPER BEAVERが大阪城ホール!」みたいなワクワクを爆発させてもらいたいですね。

──アリーナならではの醍醐味もあるだろうし。

渋谷 そうですよね。自分たちも、アリーナのライブだからこそ見せられるものを用意しているので。ライブハウスでしかやれないこと、ホールでしかやれないこともあるし、どの会場も観たいと思ってもらえたら最高だなって。考えてみたら今年、50人のライブハウスから1万人規模のライブまでやってるんですよ。そんなの僕らくらいかもしれない(笑)。あと、こんなにワンマンをやった年もないんじゃない?

柳沢 完全にそうでしょ。

渋谷 一昨年まではイベントやフェス、対バンのほうが多かったから、自分たちにとってワンマンって、今もすごいことで。今年は単独公演をたくさんやったし、アリーナツアーはその集大成みたいなところもありますね。