緑黄色社会ツアーWOWOW生中継記念特集|5つの公演をもとに掘り下げる、リョクシャカライブの歴史

緑黄色社会が現在行っているアリーナツアー「リョクシャ化計画2023-2024」より、2024年1月7日の愛知・日本ガイシホール公演がWOWOWで生中継される。

「リョクシャ化計画2023-2024」は緑黄色社会にとって初のアリーナツアー。12月15日に神奈川・横浜アリーナにてスタートし、来年1月14日の大阪城ホール公演まで3都市にて計6公演が行われる。WOWOWでの生中継を記念して、音楽ナタリーでは緑黄色社会のライブにスポットを当てたインタビューを公開。これまでの活動の中で印象に残っているライブ5本を挙げてもらい、それをもとに4人のライブに懸ける思いやリョクシャカの活動の歴史を紐解いていく。

取材・文 / 森朋之撮影 / 本田龍介

緑黄色社会の原点「閃光ライオット」

──まず1つ目に挙げていただいたのは、2013年8月4日に東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)で行われた「閃光ライオット2013」のファイナルステージ。緑黄色社会は準グランプリでした。

長屋晴子(Vo, G) 私たちが出る2年前の大会に、同じ高校の軽音部の先輩が出演したんですよ。会場も同じく野音だったんですけど、私たちも応援しに行って。peppeはすごい前のほうで観てたよね?

peppe(Key) 最前列で観てました(笑)。

小林壱誓(G) うちわを振って応援したり(笑)。

長屋 そうそう(笑)。私たちも「閃光ライオット」に憧れていたし、日比谷野音のステージにも立ってみたいと思っていて。ありがたいことにファイナルに出られることになったんですけど、それが初めての東京でのライブだったんです。お客さんがあんなにたくさんいる景色を見たことがなかったし、うれしい気持ちでいっぱいでしたね。演奏したのは3曲だったので、あっという間に時間が過ぎちゃいました。

「閃光ライオット2013」の様子。

「閃光ライオット2013」の様子。

──「中距離列車」「丘と小さなパラダイム」「マイルストーンの種」ですね。

長屋 そのときにあったすべての曲です(笑)。

peppe 「閃光ライオット」に向けて作ったと言っても過言ではないですね。

穴見真吾(B) 特に「丘と小さなパラダイム」はそうだね。

長屋 ギリギリでできたからね。応募は1曲でよかったから、まずはそのために曲を作ったんです。その後、ライブ審査のための曲を作って。

──高校時代のリョクシャカががんばって新曲を作って、晴れ舞台に臨んだんですね。当時、長屋さんは18歳、小林さんとpeppeさんは17歳、そして穴見さんは15歳でした。

穴見 フィフティーンですね(笑)。出演したバンドの中で、たぶん僕が最年少だったんですよ。今年の夏に「SCHOOL OF LOCK!」(TOKYO FM)に出演させてもらったときに、当時のインタビュー音源を聴いたんですけど、まだ声変わりしていなくて(笑)。「俺、こんな頃からバンドやってたんだな」と。映像も観たんですけど、「けっこううまいじゃん」って思いました(笑)。

peppe うまかったよ(笑)。何かにつけて映像を出してもらえるし、「閃光ライオット」は本当に自分たちにとって原点のライブだったなって。衣装も自分たちで決めて、CDやグッズも自分たちで売ってたんですよ。

穴見 全部自分たちでやってたからね。

peppe お客さんと話して、感想を直接聞いたり。貴重な機会だったなと思います。

小林 当時は「閃光ライオット」を目指してがんばってましたからね。ファイナルステージが終わった瞬間に1回燃え尽きたというか、ここで一度目標が叶いました。

長屋 そのあとは「何をしていいかわからない」という感じもあったよね。しばらくは「閃光ライオット」の派生イベントみたいなものに呼んでもらって、東京でもブッキングしてもらってたけど……。

小林 最初は150人くらいお客さんが来てくれたけど、次はその半分、その次はさらに半分と減って。

長屋 このままじゃダメなんだなっていう気持ちになりましたね。

長屋晴子(Vo, G)

長屋晴子(Vo, G)

初ワンマンで切った新たなスタート

──続いては2017年4月7日、愛知・ell.FITSALLで開催された初めてのワンマンライブ「緑黄色社会ワンマンライブ ~Nice To Meet You??~」です。

長屋 初ワンマンも必死でしたね。見切り発車というか、とりあえず「ワンマンライブやるぞ」って決めたんですよ。ライブハウスの方も後押ししてくれたし、まずは会場と日程を押さえて。それ以前に自主企画ライブなどはやっていたんですけど、「自分たちだけで埋まるのかな?」という不安がすごくありました。

小林 知り合いをたくさん呼びました(笑)。

「緑黄色社会ワンマンライブ ~Nice To Meet You??~」の様子。

「緑黄色社会ワンマンライブ ~Nice To Meet You??~」の様子。

長屋 友達だったり、よく対バンしていたバンドマンだったり。もちろん応援してくれるファンの方もたくさん来てくれて、すごくうれしかったですね。ただ、曲がぜんぜん足りなかったんですよ。

peppe 初ワンマンのときも、ライブのために曲を作りました(笑)。

長屋 ワンマンなので15、6曲くらいは欲しいじゃないですか。ライブに向けてがんばって曲を作ったので、当日は新曲がかなり多かった。

穴見 そのときに作った曲で、だいぶあとになって音源にしたものもあるんですよ。「Actor」(2022年1月発表のアルバム)に入ってる「安心してね」とか。「あのころ見た光」(アルバム「SINGALONG」収録)もそうかな。

小林 「あのころ見た光」は、初ワンマンのときは「21」ってタイトルだったけどね。

長屋 歌詞もちょっと違ってたよね。

──力を合わせて初ワンマンを成功させたことは、自信につながったのでは?

長屋 そうですね。それまでライブハウスで培ってきたものもあったし、少しずつファンの方も増えてきて。今思い出したんですけど、当時はTwitterでファンの方とやりとりして、チケットの取り置きとかもやっていました(笑)。

穴見 ライブが終わって、お客さんにグッズのタオルを掲げてもらって写真を撮ったんですよ。そのときに「僕たちのファンって、こんなにいたんだ」と思って、ウルッときて。自分たちだけのライブだったし、幸福感みたいなものをめちゃくちゃ感じました。準備は大変だったし、始まる前は緊張していたけど、「これをやるためにいろいろがんばってきたんだな」と。

長屋 ワンマンライブにしかない空気感を初めて知った日でしたね。

peppe バンドの名前が入ったバックドロップも作って。

小林 その後しばらく使ってたよね。

──その頃に自分たちのライブのスタイルも見えてきた?

長屋 それはまだでしたね。楽曲をやり切ることに必死だったし、曲間のつなぎとかはしっかり考えていたけど、MCで何をしゃべったかも覚えてなくて。たぶん、お客さんに助けられたところが大きいんじゃないかな。ただ、ワンマンライブのよさを知ったことで、「もっとキャパを大きくしたい」「名古屋以外の場所でもやってみたい」という気持ちが出てきたんですよ。

小林 「ここから始まるぞ」という雰囲気になりましたね。初めてミュージックビデオ(「またね」)をYouTubeにアップしたりもして、ようやく「全国に緑黄色社会の名前を浸透させたい」と思うようになって。

長屋 そうだね。やっと走り出した……いや、まだ靴を履いたくらいかな(笑)。

配信ライブだからこそできること

──3つ目は2020年7月24日に行われた配信ライブ「SINGALONG tour 2020 -夏を生きる-」です。2020年は、アルバム「SINGALONG」を引っ提げた全国ツアーを行う予定でしたが、コロナ禍の影響で中止に。代わりにこの配信ライブが行われました。

長屋 コロナが流行り始めた頃は家を出られなくて、メンバーとも会えなかったんですよ。レコーディングもストップして、今何ができるのかをみんなで模索して。その前から「奏でた音の行方」というタイトルの配信ライブをやっていたんですけど、配信でちゃんとしたワンマンをやったのはこのときが初めてでしたね。

穴見 「奏でた音の行方」は30分くらいだったからね。

長屋 そうだね。「夏を生きる」は照明や演出などもしっかり考えて。間奏を伸ばしてもらって会場の2階席まで行って歌ったり、普段はお客さんがいるフロアでも歌ったり、観てくれてる人からのコメントを途中で読んだり。ツアーができてなくて寂しいという気持ちはもちろんありましたけど、頭の中をシフトチェンジして、配信ライブだからこそできることをやろうという考えになりました。

「SINGALONG tour 2020 -夏を生きる-」の様子。

「SINGALONG tour 2020 -夏を生きる-」の様子。

peppe あんなにカメラをお客さんだと思って演奏したのも初めてでしたね。

穴見 「SINGALONG」の曲を初披露する場でもあったから、そこはしっかり表現できたのかなと。

──得るものもあったと。

穴見 はい。ただ、「SINGALONG」のツアーが実現していたら、圧倒的に新しい僕らの一手を見せられたはずなんですよ。上京してから最初のツアーだったし、アルバムもさらに進化していて。タイアップも増えて、自分たちの音楽を聴いてくれる層が広がったタイミングでのツアーだったので、めちゃくちゃ気合いが入っていたんです。そこでいきなりコロナ禍になってしまって。

穴見真吾(B)

穴見真吾(B)

peppe 上京した直後だったし、バンドとしてのフェーズが変わった時期だったんですよね。すごく覚えてるのが、「SINGALONG」をリリースして、渋谷に大きい広告を出してもらったんです。

小林 渋谷ジャック的なやつだよね。

peppe そう。せっかくそんなイベントをやってもらったのに、渋谷の街に人がいなくて。

長屋 悔しかったよね。

peppe そういうことも含めて、くじかれた感があったというか。

小林 ついてないのかなって。

穴見 めっちゃ思った。でも、悔しいからこそ「ここから進んでいくぞ」という意思をどうにか表現したくて。SNSにライブ映像をアップしたり、いろいろやったんですよ。そんな最中の配信ライブだったので、リハの雰囲気もすごくよかった。何かを表現したいという欲が、みんなの中にすごく溜まっている感じ。あのときの熱量は今でも鮮明に覚えてますね。

peppe あと、あの時期と「Mela!」を作った時期がマッチしてなかったら、ああいう広がり方はしてなかったかも。

小林 そうだね。「Mela!」のMVはアニメーションなんですけど、1年前から準備していたんですよ。発表したのが2020年4月だったから、ファンの方には「メンバーが集まれないから、アニメでMVを作ったのかな」と思われていたかもしれないですね。配信ライブもそうですけど、先が見えない中、よくあれだけのことができたなって思います。