WOWOW「PassCode NIPPON BUDOKAN 2022」放送記念インタビュー|初の日本武道館公演を終えて

2月12日に開催されたPassCodeの東京・日本武道館公演「PassCode NIPPON BUDOKAN 2022」の模様が、3月27日(日)にWOWOWで独占放送・配信される。

PassCodeはコロナ禍以前の2020年1月、東京・新木場STUDIO COASTでのライブ中に日本武道館公演の開催を宣言。オーディエンスは大きな歓声を上げ、興奮気味にグループの明るい未来に思いを馳せた。その後、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、武道館公演の延期を余儀なくされるも、彼女たちは2022年2月にスケジュールされた武道館公演に向けてライブツアー「"STRIVE" for BUDOKAN Tour 2021」を開催。全国各地のライブハウスを巡っていた。そんな中、2021年8月にメンバーの今田夢菜が体調不良によりグループを“勇退”。PassCodeは同月に新メンバーとして有馬えみりを迎え、ツアーを継続することを選択した。

音楽ナタリーでは、紆余曲折を経て日本武道館のステージに立ったPassCodeにインタビュー。ライブを終えた率直な感想や、公演中に感じたこと、これまでの歩みを振り返りながら、未来に向かって進んでいく今の思いを語ってもらった。

取材・文 / 田中和宏 撮影 / 高橋佑樹

ライブハウス武道館

──まずは2月12日の日本武道館公演、お疲れ様でした。大舞台を終えた今の率直な感想を聞かせてください(参照:PassCode、日本武道館という大舞台で見せたいつもと変わらない姿)。

南菜生 純粋に楽しかったです。「早くまたライブをやりたいな」って。本番は広いライブハウスのステージに立っている感覚だったんですけど、それはきっとお客さんがPassCodeのことをちゃんと好いていてくれているからこその“ホーム感”だったんだと思います。派手な演出などほかのライブとは違うこともやりつつ、いい意味でいつも通りの自分たちのやり方で、ホーム感を持って武道館のステージに立てたことがうれしかったです。

「PassCode NIPPON BUDOKAN 2022」の様子。(Photo by Viola Kam[V'z Twinkle])

「PassCode NIPPON BUDOKAN 2022」の様子。(Photo by Viola Kam[V'z Twinkle])

高嶋楓 大変な時期なのにたくさんの人が集まってくれて、すごくうれしかったです。今まで積み重ねてきたものがあるし、いい意味でいつも通りのPassCodeを表現できたと思います。これからのPassCodeが自分たちでも楽しみになったし、早くまた全国のライブハウスを回りたいです。

大上陽奈子 武道館でライブをやると宣言したのが2年前の1月、新木場STUDIO COASTのステージでした。そのあとコロナ禍になって、今年に入ってからまた感染が広がっていたので心配していたんですけど、まずは無事に武道館公演を終えられて、ホッとしました。そして本番が終わった次の日にはもうライブが恋しくなりました(笑)。SNSを覗くと、今回のライブ後は特にお客さんが余韻に浸ってくれているというか、感想をたくさん書いてくれていて。そういうのを見たら「ああ、終わっちゃったんだ!」という実感と寂しさが湧きましたね。長い間、武道館に向けて活動してきたので、寂しさを打ち消すためにも、やっぱり早くライブがしたいと思っています(笑)。武道館のステージから見る光景は本番まで想像できなかったんですけど、いざ立ってみるとそれまでやってきたライブの続きのようで。「PassCode、もっともっといけるかも」とライブをしながら思えたので、これからがさらに楽しみになりました。

有馬えみり 私は加入してから半年で武道館のステージに立ちました。この半年の間にすごく練習して、ライブもこなしてきて、振り返ってみると大変だったなと。でも武道館でのライブは「もっとやりたい!」と感じるくらい、めちゃくちゃ楽しかったです。

PassCode

PassCode

続けてきたから今がある

──武道館にライブハウスと同じ感覚で立てたとのことですが、これまで覚悟や信念を持って武道館公演とその先に向かって突き進んできたからこそ得られた感覚なのかなと。

 3、4年前はほかのアーティストが大きな会場でライブをやっているのを観ても、自分たちがそこに立つことを想像できなかったんですよ。「自分たちはそういう場所でやるアーティストではない」みたいな気持ちがどこかにあったんでしょうね。でも、私たちは2年前に新木場で「日本武道館でライブをする」とファンの方に約束しました。そのときに披露した「It's you」をみんなが合唱する光景を見て、「この曲をもっと広いところに連れていけるはずだ」と思ったんです。コロナ禍以降のライブでは「見られている」という意識がすごく強くなって。以前は「ファンの人たちと一緒に楽しむライブをしたい」と思っていましたが、コロナ禍を経て意識が変わり、これまでとは違うライブをファンの方と作り上げてきたおかげで、自分たちの新しい可能性を感じるようになりました。前まではスタッフさんと話していても「PassCodeは座って観てもらうアーティストじゃないから」と言われることが多くて、そう言われるのが悔しかったんです。確かにそこにこだわってやってきた部分もあるんですけど、「座って観たら私たちのライブは楽しめないってこと?」と思っちゃって。でも、コロナ禍の影響でお客さんが声を出せなくなり、フロアでできることが制限されたことで必然的にステージを観るだけで楽しめるライブを目指せましたし、この2年はメンバーと話し合うことも増えて、PassCodeというグループとしても、パフォーマンスの面でもいろいろと意識が変わった期間でした。

有馬えみり

有馬えみり

南菜生

南菜生

──有馬さんは、その変わりゆく最中のPassCodeにジョインしたということですね。

 以前の自分たちだったら、「えみりが持っているシャウトを武器として生かせればそれでいい」という考えになっていたかもしれません。でも、コロナ禍以降のPassCodeはダンスも自分たちの強みとして磨いているところだったので、シャウトはもちろん、ダンスについても求めることがすごく多くて大変だったと思います。

有馬 メンバーも振り付けの先生も、ダンスの面でいろいろ助けてくれました。それに応えなきゃという責任感を持つことがすごく気持ちよくて……。

高嶋大上 え?(笑)

有馬 プレッシャーで「うわーっ!」って感じではなく、気合いが入って、うれしい感じがしたんですよね。……気持ちよかったんですよ(笑)。

 あんな大変やったのに「気持ちいい」って表現できんねや(笑)。

有馬 つらいのが気持ちいいというわけじゃなくて、期待してくれることが気持ちよかったという話です(笑)。

──PassCodeは今でこそ武道館に立つアーティストになりましたが、初期の頃を知っている人からしたら「よくぞここまで」と思うほどの飛躍を見せていると思います。

高嶋 PassCodeに入った当初の私とえみりのモチベーションを比べたら、180度違いますね(笑)。改めて振り返ると、私が加入した8年前はメンバーみんなまだ子供やったし、PassCodeに対する熱がどうこう以前に、ただ楽しいことをやっているだけの集団でした。えみりは加入直後から一緒にパフォーマンスを磨き上げてくれたので、ありがとうという気持ちが強いです。

大上 確かに昔はみんな子供で、部活みたいな感覚やったな。

 PassCodeの活動を始めた頃、これが自分の仕事になるなんて思ってもみなかったですから。高校を卒業して、大学に行って就職するまでの間にやるものみたいな。音楽を仕事にできる人なんてひと握りしかいないし、自分たちがそういう存在になれるとは想像もしてなかったです。でも、好きなことを続けているうちにその活動を好いてくれる人がだんだん増えて。こうやって仕事にできている今ってすごく幸せだなって、ライブをするたびに思います。

大上陽奈子

大上陽奈子

高嶋楓

高嶋楓

大上 うん。私は加入したときまだ高校生で、歌を歌って生活していくのが夢だったんです。でもPassCodeでずっと活動するという想像はあまりできなくて、大学に通いながら続けようと思っていました。メジャーデビューが決まってからは意識が変わって、「これは本気でやらないとダメだ、置いていかれる」と思い始めて、今に至っています。

 活動を続ければ続けるほどわからなくなることもありますね。歌がうまければ売れるわけでもないし、ビジュアルがいいだけでもダメだし。自分たちがなんでたくさんの人たちに支持していただけて、やりたいことをやり続けられているのか……。運とかラッキーっていう話でもないと思うし、幸せなことだなって。もし1つ言えるとすれば、「続けてきたから今がある」ということでしょうね。何をしたからここにいるのか、答えがわからないままがむしゃらにやってきましたけど、それはこれからも同じだと思います。