Novelbrightにとって“ライブ”とは?初の日本武道館公演を前に思いを語る

昨年7月に「大阪城公園で交わした約束『2年以内にあっちで会いましょう』を実現するワンマンat大阪城ホール」として大阪・大阪城ホールでの単独ライブ開催を叶え、ドラマ「真犯人フラグ」やアニメ「リーマンズクラブ」のテーマソングを担当するなど、飛躍し続けているNovelbright。そんな彼らがいよいよ6月23、24日に全国ホールツアー「Novelbright LIVE tour 2022 Hope Assort tour~『路上ライブから武道館へ』的なよくある目標を実現させちゃうツアー~」のファイナルとして東京・日本武道館公演を行う。

Novelbrightにとって日本武道館は目標の1つでもあるステージ。24日公演の模様はWOWOWで生中継される予定で、会場に足を運べずとも特別な日の彼らの勇姿を観ることができる。音楽ナタリーでは日本武道館公演の開催を記念して、Novelbrightにインタビュー。5月にリリースされた最新アルバム「Assort」の話やここまでのツアーの感触といった近況をはじめ、「ライブが好きでバンドをやっているようなもの」と語る彼らのライブに対する思いや日本武道館公演を前にした心境について話を聞いた。

取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / NORBERTO RUBEN

Novelbrightの可能性がさらに広がった

──まず、5月にリリースされたメジャー2ndアルバム「Assort」について聞かせてください。今回もメジャー1stフルアルバム「開幕宣言」と同じく、特にコンセプトを設けずに制作していったのでしょうか?

圭吾(B) はい。今回もコンセプトは決めていません。曲は日々作っているので、「さあ、アルバムを作るぞ」という感じでもなく、普段から作っている曲をパズルのようにうまくポジショニングしながら構成していきました。「開幕宣言」のとき、「めちゃくちゃ傑作ができた!」と思ったので、正直最初は「このアルバムを超えられるかな?」と思っていたんですよ。でもいざ作ってみたら、クオリティを下げることなく、「開幕宣言」とはまた違う攻め方の新しいアルバムができたなあと。今は「傑作ができた!」というより「またいいアルバムができました」くらいのテンションなので、自分たちの自信にもつながっています。

竹中雄大(Vo) 「愛とか恋とか」というNovelbrightが今まで出したことのなかったテイストの曲を先行配信したんですけど(取材日はアルバムリリース前)、リスナーのみんなの反応を見て、Novelbrightの可能性がさらに広がった感じがしました。だから僕はすでに次の作品が楽しみですね。3rdアルバムではよりいろいろなアプローチができるんじゃないかなと。

竹中雄大(Vo)

竹中雄大(Vo)

竹中雄大(Vo)

竹中雄大(Vo)

沖聡次郎(G) 僕も「次のアルバム、はよ作りたいな」という気持ちですね。今回は外部のアレンジャーの方をほとんど入れずに自分たちでやっているんですけど、いろいろなチャレンジをすることができたし、自分的にも満足のいくアレンジにできたし、扉が開けたような感覚があったんです。だから早く次の作品を録りたいなと思っています。

──形にできた手応えを特に感じている曲はどれですか?

竹中 僕は「愛とか恋とか」と「Too Late」です。特にこの2曲は今までになかった曲調で、実験的な感じがあったので。

ねぎ(Dr) ドラマー目線でも「愛とか恋とか」は一番トライした曲だと思います。この曲では生ドラムではなく、電子ドラムを用いたアプローチをしているんですけど、僕は生ドラムに対するこだわりが強かったので、作る前は葛藤もあったんです。だけどいざやってみたら、曲調に合ったアプローチだなと思うし、聴きやすいものになったなとも思う。全曲電子ドラムだったらさすがに抵抗がありますけど、新しいNovelbrightを見せられるんだったら「こういうこともできるんだぜ」という感じでたまにはやってみるのもいいかもしれないという考えに変わりました。あと、ライブでのお客さんの反応を見て「こういう曲が求められていたんだな」と感じましたね。

──8曲目の「Anima」はインスト曲ですが、インスト曲は今年2月にリリースしたメジャー2ndシングル「The Warrior」にも収録していましたよね。

山田海斗(G) 前のツアーからインスト曲をライブで演奏するようになったんですが、そのときは特に音源化する予定はなく、ライブの運びを考えたうえでの演出というような感じで。だけどやっぱり音源化したいなと思ったので、前のツアーでやっていたインスト曲「Phantom」をシングル「The Warrior」に入れて、今回っている全国ツアーでやっている別のインスト曲を「Anima」として今回収録しています。「この曲をツアーでやったぞ」という証を残していくような感覚ですね。

──「Anima」を聴いて思いましたが、Novelbrightはやはりメロディが強いバンドですね。ボーカルがない曲でもしっかりメロディが立っています。

山田 そうですね。インスト曲であっても自分たちが気持ちよくなるだけで終わる曲にはしたくないので、「聴く人が飽きないように」という意識で、リフをメロディアスにしたり、1人ひとりの見せ場を作ったりしました。

「ライブをするためにバンドがある」というのは大げさではない

──今のお話にも出たように、現在Novelbrightは全国ホールツアー「Novelbright LIVE tour 2022 Hope Assort tour~『路上ライブから武道館へ』的なよくある目標を実現させちゃうツアー~」の最中なんですよね。現時点での手応えはいかがですか?

竹中 今11公演を終えたところなんですけど(5月中旬時点)、日々たくさんある反省を次のライブでしっかり修正していけているし、ツアーを経て成長できていることを自分たち自身でも感じられています。

 個々の演奏力ももちろん上がっていると思いますが、バンドとしてのグルーヴ感やテンションを5人でちゃんと共有できているので、人間的なライブができているというか。あと、今回Novelbrightのライブに初めて来るというお客さんも多いんですけど、ほんまに楽しみにしてくれてたんやってわかるくらいみんなの熱がすごいんですよね。だから僕らもシンプルに楽しくて。

沖聡次郎(G)

沖聡次郎(G)

沖聡次郎(G)

沖聡次郎(G)

竹中 ツアーでは毎回「Novelbrightのライブに初めて来た人?」とお客さんに聞くんですけど、今回は手を挙げてくれる人がめっちゃ多くて。愛媛なんて9割くらいが初めての人やったし、札幌は8割くらいやったかな。僕らのホームの大阪でも5割くらいはいましたし、全公演をトータルで見ると、たぶん7割くらいははじめましての人なんじゃないかという気がします。

ねぎ 僕ら自身プライベートでも行ったことのない都市も何カ所かありますからね。初めて行く都市の人たちがノリノリになってくれているのを見ると、「もっとたくさんの場所に行きたいな」とより一層思うし、今回は自分たち史上最大キャパシティのツアーなんですけど、「もっとやりたい」という気持ちです。ライブができるって本当に幸せやなあと身に染みて感じています。

──2020年春以降、ライブの中止・延期が続いたからこそ、ライブができる幸せをより強く感じているという側面もあるのでしょうか?

竹中 そうですね。ライブは本当に大事なものだと改めて思いました。もちろん僕らにとっても大事ですけど、ライブって日々感じている嫌なことを忘れられる最強の娯楽でもあるので、音楽好きのファンのみんなにとっても大事な場所ですよね。それに、僕らはライブが好きでバンドをやっているようなものなので、それが失われた2020年の春とかは……服がなくなったような感じ?(笑)

 困ってたよね(笑)。

竹中 困ってました(笑)。だから今やっと服を着れたところなんですけど、お客さんはまだ声を出せないし完全に状況が戻ったわけではないので、ずっとタンクトップだけ着ている感じというか……。僕はまだ100%心から「よかったね」とは言いたくない。だけどライブを開催できて、人が来てくれて、マスク越しでもみんなが一緒に楽しんでくれている今、「ああ、俺は生きているんだな」とやっと感じられています。

 そうだね。雄大が言った「ライブをするためにバンドがある」というのはあながち大げさではないんじゃないかなと僕も思います。

竹中 ライブをしなかったら自分たちを応援してくれる人たちの顔が見えないんですよ。テレビとかにも出られるようになって、僕らも何年か前に比べたら多少有名になっているかもしれないですけど、SNSのフォロワー数とか、数字だけを見ていても「ファンの人、ほんまにおる?」という感覚になるというか。

──ライブ会場でお客さんの顔を見ながら自分たちの音楽を届けることが、皆さんの安心や喜びにつながるんですね。

竹中 そうですね。ライブをして初めて「あ、(ファンが)おった!」みたいな感じになります。

──ちなみに「プライベートでも行ったことのない都市も何カ所かある」とのことでしたが、今回のツアーで初めてライブをしに行けたところは?

ねぎ 愛媛、金沢、岐阜……。

山田 大きな会場でワンマンをするのが初めてという場所も合わせるともっとありますね。ほとんどの会場はお客さんでいっぱいになっているんですけど、唯一愛媛公演では半分以上空席がある光景を見て。それでもたくさんの方が来てくれてはいたんですけど、「自分たちはまだすべての会場を満杯にすることができていないんだ」という現状を前に、がんばらないといけない部分を見つめ直すきっかけになりましたね。「まだまだ安心できないぞ」という環境に自分らの闘争心をもっと掻き立てられたというか。そういうツアーでもあるなと思います。

──ツアータイトルは「Hope Assort」で、アルバムタイトルにもある「Assort」という単語が使われています。「Hope Assort」は直訳すると“希望の詰め合わせ”になりますが、どのような思いを込めてこのタイトルを付けたんですか?

竹中 先の見えない時代の中で皆さん落ち込むことも暗い気持ちになっちゃうこともあるんじゃないかと思いますけど、そんな中でも希望や夢を失わずにいれば、自分の目の前に見える景色が少し明るくなっていくんじゃないかと思っていて。僕たちだけではなく、今回ツアーに来てくれるファンの人たちの希望や夢を全部詰め合わせられるようなツアーにしたいし、そうして詰め合わせたものを最後にはツアーファイナルの日本武道館に持って行けたら、という思いを込めました。

圭吾 今回のツアーでは、ホールツアーならではのことも組み込んだりしているんですよ。例えば、アコースティックで何曲か演奏したり。

圭吾(B)

圭吾(B)

圭吾(B)

圭吾(B)

──アコースティック編成もいいですね。武道館で聴けるのを楽しみにしています。

竹中 いや、武道館ではアコースティックをやらないかもしれないですよ?

圭吾 確かに。武道館ではまた違うことをやる可能性もありますね。

竹中 もしかしたら1曲目から期待を裏切るような……例えば「秋桜」から始まるかもしれない。

一同 いやいやいや(笑)。

竹中 かなり初期の曲やし、たぶん誰も知らんのちゃう?

圭吾 確かに俺がファンやったらある意味裏切られた気持ちになるな(笑)。