WOWOW「milet special acoustic live 2021」特集|心まで触れた珠玉の一夜を再び 初のアコースティックライブを振り返る

2021年1月に初のアコースティックライブ「milet special acoustic live 2021」を行ったmilet。昨年は初のツアーが予定されていたものの、新型コロナウイルスの影響で中止になってしまったため、このライブが1年2カ月ぶりの有観客での単独公演となった。

音楽ナタリーでは、この公演の模様が4月10日(土)にWOWOWでオンエアされることを記念して、miletにリモートインタビューを実施。対面形式のライブがままならなかった2020年を経て実現したひさびさの有観客公演でmiletは何を感じ、何を伝えたのか。ライブのテーマや見どころ、そして1本1本のライブに懸ける思いを語ってもらった。

取材・文 / 廿楽玲子

最初はドッキリだと……

──初めに少しmiletさんの2020年を振り返らせてください。年末には「第71回NHK紅白歌合戦」に初出場するというビッグニュースがありました。

「milet special acoustic live 2021」の様子。

もうホントにまさかという感じで私も信じられなくて、最初に聞いたときはドッキリだと思いました(笑)。実際に(出場者発表の)会見会場に行って、ステージの幕が落ちて目の前の報道の方たちを見て、やっと「あれ、本当っぽいな」と少しずつ思えてきたくらいでした。

──家族にもすぐ伝えました?

はい、もちろん喜んでくれたんですけど、最初に「それ本当にNHKの紅白?」って言われて、私もちょっと不安になったりして(笑)。

──「本当にあの国民的行事の?」という確認が(笑)。

「町内の歌合戦じゃなくて?」みたいな(笑)。2020年はライブの経験をもっと積んで表現力を上げていく1年にするはずが、コロナでツアーもできず、手応えを感じられない日々を過ごしていたので、その年の終わりに紅白出場が決まったというのがなおさら信じられませんでした。プレッシャーもすごく感じましたけど、その前に初の配信ライブを開催したので、そこでの経験が大きな支えになりました。

──全公演中止となったツアーの代わりとして12月5日に行われた「milet ONLINE LIVE "eyes" 2020」ですね(参照:milet、オンラインライブでファンに約束「次は絶対生で会いましょう!」)。

そのライブで、「伝えられる人がそこにいる」という実感が得られたのが大きかったです。思い返せばこの1年、会えないからこそ感じられる心のコネクションがずっと私を支えてくれていたように思います。アルバム「eyes」(2020年6月発売。参照:milet「eyes」インタビュー)がたくさんの方々に聴いていただけたのも自信になり、そこから見えないはずの心のつながりが線としてくっきり見えてきました。紅白に出られたのもみんなのおかげだから、あのステージですべての思いを伝えたかった。その一心で歌った結果、私の中でベストアクトができたと思うので、それがまた1つ自信につながりました。

アコースティックは自分の原点

──その紅白を経てついに1月、今回WOWOWで放送される有観客のライブが実現しました。先行き不透明な状況で、1つひとつの公演にかける思いもひときわ強かったのではと思います。

スタッフみんな「よっしゃやるぞ!」って、意気込みや顔つきが全然違いました。そういうチームだからこそ私ももっとがんばりたい、1人ひとりの努力の結晶を私が代表して伝えたいという思いが今まで以上に強まりました。とにかくずっとライブがしたかったんです。ツアーが2度中止になって、デビューして2周年を迎えるのにまだ1度もツアーができていないので。自分の中で燃えたぎる炎に蓋をして、だけど火種は絶やさないように息を吹きかけている状態だったから、ずっと苦しかったです。

──今回、観客のいるライブができるという話になったときはどんな反応を?

「きたーーーーー!!」って(笑)。無観客ライブができたときも、ファンの方がいろんなコメントをリアルタイムで送ってくれて幸せだったんですけど、実際にみんなを目の前で見たときの感動と胸の高鳴りはやっぱりちょっと別格でした。客席がキラキラ輝いて見えて、本当に忘れられないです。安全対策としてマスクをつけて声も出さないというルールを守って観てくださったんですけど、それでも客席のほうから感情の波が押し寄せてくるのがわかりました。みんな手が痛いだろうなって思うくらい拍手してくれて、それを見ているだけで天国のようでした。

──アコースティックセットなのも新鮮でした。

“miletのおうち”が1つのテーマでした。コロナで外に出られなかったり、楽しみが減っちゃったりしても、このときだけは私の家に遊びに行くような気持ちで楽しんでもらえたらと思って。そもそも私がシンガーを目指したのも、おうちで友達にアコースティックギターの弾き語りを聴いてもらったのがきっかけになっていますし。

──アコースティックはmiletさんの原点でしたね。

そうです。そのときのように笑顔になれる明るいライブがしたいなと思っていました。私もステージで動き回りたくて、普段はドレッシーな衣装が多いけど、初めてパンツスタイルにしてみました。

──アレンジ作業はどのように進めたのでしょうか。

年末の配信ライブでアコースティックパートを作ったのがすごく楽しくて。「これいいなあ」と思ったんです。そのときのアレンジを引き継ぎつつ、バンドメンバーでもあるギターの野村陽一郎さんのスタジオに行っていろんなアイデアを出し合いながら考えました。全然違う印象になるアレンジもやりたいなと思って。

──miletさんが一緒に曲作りをしているメンバーがバンドにいるので、彼らの活躍をじっくり見られるのもポイントですよね。

そうなんです、ホントにみんな仲がよくて、信頼できる仲間たちです。ギターの陽一郎さんもそうですし、キーボードのTomoLowさんもデビュー前からずっと一緒に曲作りをやってくれています。最初のEP(「inside you」)に入ってる「I Gotta Go」は、私のデモをもとにTomoLowさんがアレンジしてくれた曲で、今回また新たにアコースティックバージョンでアレンジし直してくれて、ステージで一緒に演奏できたのは胸熱ですね。

「milet special acoustic live 2021」の様子。

──「Tell me」から「I Gotta Go」へつながる構成がまたドラマチックでした。

「まだ行かないで」と歌う「Tell me」に対して、「I Gotta Go」は「もう行かなくちゃ」と歌っていて、1つのアンサーソングのようになりました。作った時期はバラバラだけど、曲たちが響き合ってドラマを織りなすようなセットリストになっていると思います。

──中でもカントリー風のアレンジを加えた「Somebody」は意外性があって印象的でした。

「Somebody」は今回特にお気に入りで、リズムの取り方から変えてみました。そこからアレンジの幅がすごく広がって、「ボサノバ風にしてみようよ」とか「ちょっとジャズっぽくしたらどうかな?」と意見をどんどん出し合って、最初の想定とは全然違うアレンジになっていくのがすごく楽しくて。「us」もアコースティックバージョンを配信で発表したし、「THE HOME TAKE」でも披露してるんですけど、それとはまたちょっと違う明るめなアレンジにしてみました。