音楽ナタリー PowerPush - WORLD ORDER
世界秩序の先にある“よい1日”
“飲みの誘いを普通に断る”良好な関係
──今のWORLD ORDERは新しいサウンドとダンスを手に、街で起きる偶然という、この上なく曖昧なものとコラボレーションしようとしていて、実際に実現できています。でもこれってまったく新しい上に相当高度な表現ですよね。そういうものを目指すときメンバー間で意見の衝突なんかは……。
須藤 そこもメンバーの品のいいところだと思うんですけど、まったくギスギスしないんですよね。
──実際BD / DVDの特典映像のツアードキュメントを観てもすごく仲がよさそうですよね。突然フリースタイルラップをしてみたり、お互いがお互いを雪道で転ばせようとしてみたり、大の大人7人が「中学生か!」って言いたくなるようなことしか繰り広げてない。
須藤 ははははは(笑)。それでいて近からず遠からずというか、ちゃんとお互いの世界観を尊重できてるんですよね。
落合 みんな、飲みに誘ってもついてこないですし(笑)。
一同 ははははは(笑)。
須藤 今の日本においてこのジャンルのダンスで食っていこうって思ってる時点でメンバー全員ある種の“変態”ですから(笑)。それぞれ自分が変態性や世界観を抱えていることを認識しているから、ほかの人の変態性も思いやれる。自然とギスギスするような距離まで踏み込まないんでしょうね。
上西 確かに距離感を測ってるって思ったことはないですね。元気さんの言う通り、WORLD ORDERとしては同じ目標に向かっているんですけど、実は生まれ育った土壌はそれぞれ違いますから。ダンスのスタイルもライフスタイルや趣味も。自分にそういう大切なものがあるからこそ、他人の大切なものも尊重できるんでしょうね。
高橋 だから飲みの誘いも普通に断れますよね(笑)。
YES / NOの判断はだいたい一致する
──いいですね。なんの躊躇もなく誘いを断れるし、それを受け入れられる関係(笑)。
須藤 みんなプライベートでのエゴも、アーティストエゴも薄いんですよ。さっき「意見が衝突することも」って、衝突することを前提にお話なさっていたし、実際バンドやほかのダンスユニットの場合、創作上のエゴのぶつかり合いってあると思うんですけど、ウチにはそういうのがまったくなくて。
落合 物を作るときには必ず締め切りがありますから、アイデアをどこまでも揉み続けるわけにはいかない。だから締め切り前には、あえてピリッとした空気を作ろうと思いながら現場に臨むんですけど、それで生まれるのはいい緊張感だけ。「なんだお前!」とはならないんですよね。
森澤 こういう言い方をするとちょっと照れくさいんですけど、メンバーのことをリスペクトできているから「なんだお前!」とはならないんでしょうね。確かに僕のやりたいこととほかのメンバーのやりたいことにズレが生まれることはあるんですけど、「あっ、そういう意見もあるんだな」って受け入れられるんです。
上西 例えば(森澤)祐介さんが何か意見を出したら、みんな、とりあえず試してみようって思える関係なんですよね。あとこれも祐介さんが言っていたことですけど、そうやって誰かの意見を取り入れて試してみたダンスの映像は一旦みんな持ち帰っていて。改めて1人で映像で振り返りつつ、その意見やダンスに対するYES or NOを判断することになるんですけど、その判断がなぜかだいたい一致するんですよ。
4杯目のビールを美味しく振る舞うための闘い
須藤 しかもその判断っていうのがすごく前向きだから、僕にとっても刺激になりますし。WORLD ORDERって登場のときのインパクトが強すぎたから、本来なら時間が経つにつれ、だんだん飽きられてくるはずなんですよね。限界効用逓減の法則っていうんですけど、要はビールは1杯目が一番美味しいっていう話で。当然僕たちの中にも「WORLD ORDERはもうビールの4杯目」「スーツ姿の僕らが街の中でダンスをするのを初めて観たとき、みんなが感じた『なんだこれ!?』っていうインパクトを超えることは難しい」っていう共通した認識がありますし。でも今回のアルバムを制作するにあたって、メンバーは“WORLD ORDERらしくはあるんだけど、これまでとは明らかに違うダンス”を作り上げた。だから僕ももう思い込みは捨てようと思えたんです。
──思い込みを捨てる?
須藤 確かに限界効用逓減の法則は存在しているけれども、そんなものは理論でしかないと思えるようになったというか。メンバーがダンサーとしてのプライドや気合いをもってそれを乗り越えようとしているんだから、僕も法則には縛られない。もっとシンプルによりよい言葉や音を追究しようと思えたんです。また音楽の話に戻っちゃうんですけど、それも今回のアルバムが“次の音”になった理由なんでしょうね。
──じゃあその“次の音”の“次の音”、要は2015年、WORLD ORDERは何をしましょう?
須藤 これまでのインタビューの繰り返しになってしまうんですけど、本格的に次のフェーズに移るつもりではいます。最初におっしゃっていた「新世界秩序」って陰謀論とも結びつきやすいじゃないですか。
──「いずれ統一国家による、世界レベルの管理型社会が完成するんじゃないか」みたいな話をする人もいますよね。
須藤 これまでのWORLD ORDERは、それこそ「IMPERIALISM」や「INFORMAL EMPIRE」という楽曲を歌いながらも「HAVE A NICE DAY」と言ってしまう。そうやってパロディ的、揶揄的に新世界秩序のことを表現してきたんですけど、これからは実在する世界のことじゃなくて、もっと内面世界のことを表現してみようかな、とは思ってます。シャーマニズムであったり、そういうスピリチュアル的なものを通じて、帝国主義的でもなければ、陰謀論的でもない“新しい新世界秩序”を表現できればいいなって。だからこのアルバム「HAVE A NICE DAY」をもって物質文明のことを歌うWORLD ORDERはひとまず完結っていう感じになるんじゃないのかなって思ってます。
- ニューアルバム「HAVE A NICE DAY」2014年12月17日発売 / ポニーキャニオン
- 初回限定盤 [2Blu-ray+CD] 8316円 / PCXP-50264 / Amazon.co.jp
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- 初回限定盤 [2DVD+CD] 7020円 / PCBP-52308 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [Blu-ray+CD] 5076円 / PCXP-50265 / Amazon.co.jp
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- 通常盤 [DVD+CD] 4104円 / PCBP-52309 / Amazon.co.jp
Blu-ray / DVD収録内容
- IMPERIALISM
- LAST DANCE
- WELCOME TO TOKYO
- THIS IS LIFE
- HAVE A NICE DAY
- INFORMAL EMPIRE
CD収録曲
- IMPERIALISM
- LAST DANCE
- THIS IS LIFE
- HAVE A NICE DAY
- INFORMAL EMPIRE
- WORLD ORDER ~Welcome to TOKYO Remix~
- MACHINE CIVILIZATION ~ Inner Child Remix~
- AQUARIUS ~3.8 Remix~
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容
- 2014年Zeppツアーのロードムービー「ON THE ROAD AROUND JAPAN 2014 Zepp Tour」
WORLD ORDER(ワールドオーダー)
元格闘家でタレントや作家としても活躍する須藤元気が、男性ダンサー6名(落合将人、高橋昭博、内山隼人、森澤祐介、上西隆史、富田竜太)とともに活動する7人組ダンスパフォーマンスユニット。スーツにきっちり整えた髪型という統一感のあるファッションと、須藤が歌うポップなダンスミュージック、ダンサーたちの高い身体能力を生かしたロボットダンスがアジアをはじめアメリカ、カナダ、ヨーロッパ圏で熱烈に支持されている。2012年6月にDVD / Blu-rayとCDからなる2枚組作品「2012」、同年11月に初のシングル「FIND THE LIGHT / PERMANENT REVOLUTION」を発表した。2013年8月には東京・日本武道館公演の模様を完全収録したBlu-ray / DVD「須藤元気 Presents WORLD ORDER in 武道館」をリリース。そして2014年12月、3枚目のアルバム「HAVE A NICE DAY」を発表した。