音楽ナタリー PowerPush - WORLD ORDER
世界秩序の先にある“よい1日”
WORLD ORDERの真髄は「引きの美学」
──富田さんが思うWORLD ORDERの世界って具体的に言葉にできたりします?
富田 うーん……。ダンスを観ればわかるよ、って言われてしまうかもしれないんですけど、みんな「どうだ!」みたいな顔はしない。音に合わせて踊るっていう意味ではほかのダンスユニットと同じなんですけど、そこにヘンな自己顕示欲や、いやらしさがないんですよ。
須藤 それは僕も思います。今回の楽曲のダンスみたいなレベルになるともう僕が振り付けについてどうこう口出しできるレベルじゃなくなってきていて(笑)。落合を中心にメンバーに完全にお任せにしているんですけど、振り付け自体もそうだし、振りを作っている現場の様子を見ていても品がいいんですよね。WORLD ORDERを始めるときのコンセプトの1つに「引きの美学」っていうのがあって。当然結成当初からそのコンセプトを伝えていたんですけど、今回メンバーはそれを本当に見事に体現していますから。
──引きの美学って具体的には?
須藤 違和感は残しつつも、ただの街の風景として存在するっていうことですね。街の中で踊ってはいるんだけど、何か街の人たちに絡んだりするわけではない。ただただ踊るだけ。そして踊っている僕たちと、その僕たちを観ている街の人たちのリアクションも含めたすべてが僕たちの表現であればいいと思っていて。「引きの映像で魅せる美学」と言い換えてもいいと思うんですけど。
──ダンスユニットでありながら、ダンスする皆さんの姿を寄りの映像で追いかけはしない、と。
須藤 そうやって街の人たちのリアクションを映像に残しておくと、それを観た人たちがあたかも自分もその街の中にいるような気分になってくれるんですよ。その臨場感こそが僕たちの映像の中毒性の秘密なんです。もし今僕らがやっているようなことをスタジオで撮ったり、道路を封鎖して撮ったり、寄りの映像で追っても何も面白くない。押し出しを強くすると逆に「がんばってるね」でおしまい。なんのインパクトも残せず終わってしまいますから。
真髄の源流は「8時だョ!全員集合」
──そして実際に「IMPERIALISM」のPVではアメリカの風景の一部になりきってみせ、映像のラストにあるように黒人のおばさんの爆笑までさらってみせた、と(笑)。
須藤 アメリカの街中で微動だにしない僕らと、「ちょっと近すぎるだろ」って距離感で僕らに近づいてくる外国人のおばさんの2ショットなんて、そうそうお目にかかれないし、かなり刺激的な映像体験だと思うんですよね。唯一WORLD ORDERに近いなと思っているのはドリフくらいかなあ……。
──「8時だョ!全員集合」?
須藤 そう。「全員集合」の面白さこそがWORLD ORDERの面白さ、踊り手の主観だけでなく、その周辺までも俯瞰、客観する面白さを読み解く鍵なんですよ(笑)。「志村うしろー!」っていうツッコミって、志村(けん)さんだけにフォーカスが当たっていたらできるものじゃないですよね。でも公開収録に行っているお客さんは志村さんだけじゃなくて舞台全体を眺めているし、テレビカメラも引きの画を押さえているから、視聴者である僕らも志村さんが気付いていない全体の状況を把握して笑うことができた。それは僕らの映像でも同じ。当の僕らですらまったく把握できていないことを観客だけが知っている。そういう事実って、その観客にとってものすごく面白いものなんです。
──あっ、街で踊っているときって皆さん周囲の状況は把握できていない?
高橋昭博 踊ることに集中しているから、何が起きているかはわかってないですね。
須藤 一応、16:9の画角にここらへんまで背景が収まるといいな、みたいなことは考えてるけど、うしろで誰が何をしているかはさすがにわからないよね。もしかしたら何か面白おかしいことが起きているかもしれないんだけど。そして、その状況を「うしろであんなことが起きてるのに、コイツら真顔で踊ってるよ」「WORLD ORDER、うしろ! うしろ!」って笑えるのは観客だけ。僕も含めて、みんな、その「全員集合」的な臨場感や笑いって大好きなはずなんですよ。
「面白いこと待ち」のPVシューティング
──映像に映り込んでいる街の人って仕込みじゃないですよね?
須藤 はい。
──となると、逆にロケ中、何も面白いことが起きないっていう事態も……。
落合 しょっちゅうありますよ(笑)。
須藤 だから誰かが絡んできてくれたときは「あっ、この映像使える」って思います(笑)。でもホントに人がいない時間帯のロケは意味がないし、僕たちの周りで面白いことをやってくれている人がいるにはいたんだけど、画角的に見切れちゃってた、みたいなことも多いですね。「この子供、もうちょっと右に寄ってくれてればよかったのに」みたいな(笑)。だからワンシーン撮るのにかける時間が長くなる。
落合 僕らの振りが完璧であっても周りのリアクションがなければ容赦なくボツですしね(笑)。だから僕らはどのテイクでも気が抜けないんですよ。周りでいつ何が起こるかわからないから。
須藤 で、せっかく面白いことが起きてくれたのに、そういうときに限って踊りを間違えるんだよね。特に僕が(笑)。
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- ニューアルバム「HAVE A NICE DAY」2014年12月17日発売 / ポニーキャニオン
- 初回限定盤 [2Blu-ray+CD] 8316円 / PCXP-50264 / Amazon.co.jp
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- 通常盤 [DVD+CD] 4104円 / PCBP-52309 / Amazon.co.jp
Blu-ray / DVD収録内容
- IMPERIALISM
- LAST DANCE
- WELCOME TO TOKYO
- THIS IS LIFE
- HAVE A NICE DAY
- INFORMAL EMPIRE
CD収録曲
- IMPERIALISM
- LAST DANCE
- THIS IS LIFE
- HAVE A NICE DAY
- INFORMAL EMPIRE
- WORLD ORDER ~Welcome to TOKYO Remix~
- MACHINE CIVILIZATION ~ Inner Child Remix~
- AQUARIUS ~3.8 Remix~
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容
- 2014年Zeppツアーのロードムービー「ON THE ROAD AROUND JAPAN 2014 Zepp Tour」
WORLD ORDER(ワールドオーダー)
元格闘家でタレントや作家としても活躍する須藤元気が、男性ダンサー6名(落合将人、高橋昭博、内山隼人、森澤祐介、上西隆史、富田竜太)とともに活動する7人組ダンスパフォーマンスユニット。スーツにきっちり整えた髪型という統一感のあるファッションと、須藤が歌うポップなダンスミュージック、ダンサーたちの高い身体能力を生かしたロボットダンスがアジアをはじめアメリカ、カナダ、ヨーロッパ圏で熱烈に支持されている。2012年6月にDVD / Blu-rayとCDからなる2枚組作品「2012」、同年11月に初のシングル「FIND THE LIGHT / PERMANENT REVOLUTION」を発表した。2013年8月には東京・日本武道館公演の模様を完全収録したBlu-ray / DVD「須藤元気 Presents WORLD ORDER in 武道館」をリリース。そして2014年12月、3枚目のアルバム「HAVE A NICE DAY」を発表した。